汚濁

「S」

episode.『09月30日(日)』



あなたに出逢えてよかったと、言えたらどれだけ幸せでしょう。

愛してくれてありがとうと、伝えられたらどれだけ幸せでしょう。

そんな幸せを送れたら、私はどれだけ笑顔でいられただろう。

涙涙しかない人生。上辺だけを重ねてきた私には、言葉にできない苦しみでいっぱいです。

孤独な私は不幸者だ。





12年前の初恋を引きずっている。

11年、面影の似た彼女に片想いをしている。

素敵だと言う人もいれば、臆病者と言う者もいる。

伝えることは容易だ。でも会いたくても会えない。

その苦しみが私を縛り続ける。

だからもう恋はしないと豪語する。

叶う叶わないではなく、私はただ幸せでいてほしいのだ。





一途な恋を素敵だと言う人がいる。

けれど実際、そんな人を見かけると重い奴だと判断する。

その人の何を知っているわけでもなく、憶測や偏見でしか物事を語らない。

他人の愚痴。貶してばかりで視野が狭い。

ものの見方を変えずして、何が理解できるというのだろう。

皆、口ばかりだ――。





人と深く関わることが怖い。

だから上辺だけの関係が築かれる。

理解者が欲しいんじゃない。私はただ、肯定してほしいのだ。

否定され続けた私には、支えがない。

期待と裏切りの連続。些細なことで、嫌いになる。

相手を知らないと口を開くこともできない。

不安で、仕方がない。

だから人は選ぶよ。





上辺だけの関係を築き、心の中ではいつも一人。

孤独死寸前。寂しさにはもう慣れた。

現実に縛られ、自由などどこにもない。

唯一、夢を見る時だけが幸福で、この歳で後悔ばかりの人生を送って来た。

そんな過去を気休めでも理想で覆いつくしたくて、自分の一部を一つの世界として生み出している――。


自らの過去に理想を付け足し、なんとも激しい自己投影をして……。

それが何になるのかはわからない。

けれどそうすることでしか、この乾ききった心を癒すことができない。

時々、それすらも苦痛になることがある。

だからいっそ、死んだほうが楽なのではと思ってしまう――。


それでも、諦めきれない夢があるから。それで何かが変わるかもしれないから。

そんなちっぽけな願いだけが、今の自分を支えている。

今までどれだけの期待に裏切られたことか、自分がよく知っているはずなのに。期待なんて、するだけ無駄なのに……。


周りからすれば、愚かな行為なのだろう。

でも、もう決めたことだから。





私はあなたが好きでした。

けれどあなたには、好きな人がいるという噂があった。

噂はどこまで行っても噂。

それでも私は、あなたに告げることができなかった。

好きだからこそ、嫌われることを選んでしまった。

あなたのためにと、逃げるための言い訳を並べて――。

          

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