汚濁

「S」

episode.『09月02日(日)』

誰かを好きになった時、人は皆、告白しろと言う。

けれど私は、何もできずに逃げ道を辿る。

勇気や覚悟の話じゃない。

ただその人に、迷惑が掛かること、傷つけてしまうことが嫌なのだ。

成功しても、幸せにできるとは限らない。

傷つくくらいなら、しない方がいい。

一人はもう、慣れっこだ――。





友達が欲しいと思ったことはない。

けれど気づけば、何もしていないのに周りには自然と人がいる。

望んだわけじゃない。見捨てることは容易い。

築かれたのは、上辺だけの関係。簡単に断ち切れる薄いもの。

それでも一緒にいるのは、悪くはないと思っているから。





ただの偽物の関係。

そこには寂しさしか存在しない。

あなたも私を理解してはくれないのだと、一人孤独を噛み締める。

そんな毎日が続けば、否が応でも自覚する。

私の心は満たされない。求めるものはどこにもない。

私はいつだって、一人なのだと――。





私は『心友』が欲しかった。

親しいのではなく、腹の底を割って話せる、そんな関係が。

周りに誰かがいたとしても、心の中はいつも一人。

固く閉ざした扉。開こうにも、鍵がどこにあるのかも忘れてしまった。

誰も入れない世界。叶わぬ願い。

ありもしないものに、手を伸ばし続ける私は愚か者だった。





無いものを求め、届かないのに手を伸ばし、過去に背を向け、理想ばかりを描いて、現実を見る度、涙が零れそうになる。

否定するわけじゃない。妥協するわけじゃない。

ただ一人、孤独な心に闇を抱え、癒しを求めて旅をする。

誰もいない世界を、彷徨っている。

私はいつも一人だ――。

          

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