敗北魔王のFランク冒険者育成計画 ~幼女(ロリ)な魔王がギルド最低ランクの少女を最強に育て上げます! ~

サバサバス

43 幼女魔王、育成はまだまだ続く

サウストリスタ、大陸の中で南に属するその町は商業都市として人々に知られ、近くにはサルトラ大森林という大陸最大の巨大な森林が広がっている。
そんな大森林の入口付近、そこでは現在三人の女性冒険者が何やら作業をしていた。
彼女達は満足げな顔で額の汗を拭うと一言呟く。

「よし、これくらいで良いだろう」
「うん、これだけあれば依頼は達成出来るよ」
「採取依頼というのもなかなか奥が深いですのね。勉強になりますの」

彼女達──サキ、レイラ、セレナの三人は現在薬草の採取依頼をしていた。
何故戦力的にある程度の魔物は討伐出来るようになった彼女達が薬草依頼をしているのか?
それは約一ヶ月前サルトラ大森林に突如現れた『ブラック・ドラゴン』によって大森林の魔物達が姿を見せなくなり討伐依頼の数が減ったためである。
討伐依頼がなくなってしまえば残るのは当然採取依頼ばかり。
現在のギルドは採取依頼で溢れかえっていた。

「そろそろ町に戻ろう。いくら魔物が少ないとはいえ夜の森は危険だからな」

サキは他の二人に町へ戻ろうと声をかける。
それから三人は町へと戻るため森の入口へと向かった。

◆◆◆

今は大陸東にある山々から冷たい風が吹き込む時期。
そのためサウストリスタの町、西門から続く大きな一本の大通りを通る人々は皆コートに防寒用の外套と暖かい格好をしていた。
その大通りを北門側に行った先にあるのは石造りの冒険者ギルド。
その二階で採取依頼から戻った三人は寛いでいた。

「サキちゃん、本当にで良かったのかな?」

レイラの質問にサキはため息を吐き、呆れたように返事する。

「何度も言っているだろう。俺は目立つことが嫌なんだ。もしそれで目をつけられたら面倒くさい。で良かったんだ」
「確かに勿体ないことですがわたくしで良かったと思いますの」

サキの言葉にセレナも同意を示す。

先程から彼女達が口にしているとは『ブラック・ドラゴン』討伐の扱いについて。
それは既に町の兵士達によって退けられたということで決着した話だが、そのときの結果に納得していない者が一人いた。
納得していない者──レイラはサキとセレナが言いたいことも、もちろん分かっているつもりだ。
だが頭では分かっていてもどうしても納得することが出来ずにいた。

「だけど手柄を横取りなんて許せないよ!」
「少しは落ち着け、レイラ。あの状態でもし俺達が名乗り上げていたらどうなっていたと思う?」

頭に血が上ったレイラを宥めるようにサキはゆっくりと問いかける。
その問いにレイラはすぐに答えを出した。

「それは私達がドラゴンを倒したことになって……」

だがレイラが発した言葉は途中で切れてしまう。
今の彼女には先程までの勢いはなく、どこか困った表情をしていた。
そんな突如生まれた静かな時間、それを破ったのはサキだった。

「倒したことで何かあるのか? あったとしてもせいぜい一目置かれるくらいだ。お前はそれが望みなのか?」

サキはまっすぐにレイラの目を見つめ、彼女に問いかける。
レイラはしばらく考えるも最終的に一つの答えにたどり着いたようでサキの目を見て答えた。

「私の望みはそんなことじゃない。私はサキちゃんみたいに強くなって……」

途中まで言葉に出すも、そこで急に顔を赤くして話すのを止める。
どうやらあまり話したくない内容のようだ。

「強くなってどうするんですの?」

気になったセレナは当然続きを促すが顔を赤くしたレイラには既に何も聞こえていない。
しかし、サキにはレイラの言いたかったことが分かっていた。
というのも以前──サキとレイラが出会ってまもなくの頃、レイラが借りていた宿で聞いたことがあるのだ。
そのときに言っていたのが『みんなを守れる冒険者になること』。
別に恥ずかしいことではないのだが本人が恥ずかしいのなら無理に言う必要もないだろうとサキは話題を変えることにする。

「まぁとにかくレイラの望みは少なくとも一目置かれるようになることではないのは分かったな。ならば手柄がなくても良いではないか。それに注目されると身動きが取りづらくなる」

サキの言葉にレイラは頷く。
ようやく彼女も納得したようであった。

「うん、そうだね。それとごめん、私なんか間違ってたよ」
「いや間違ってなどはいない。ただ今の俺達に必要なかっただけだ。だがそうだな……」

サキはそれから考える素振りを見せると一言呟く。

「褒美は与えねばならんか」

サキの言葉に驚く二人。
それから少し経ち驚きから復帰したレイラは慌ててサキの言葉を否定しようとする。

「そんなの悪いよ。私なんてサキちゃんに比べたらほとんど何もしてないに等しいから」
「心配するな! 任せておけ!」

しかし、既にサキは乗り気でレイラとセレナの二人にどんな褒美を与えようかを考え始めていた。
今の彼女に何を言っても無駄だろう、そう判断した二人は素直に褒美を受けとることにする。
その後、少しの間褒美のことについて考えたサキは一つ宣言した。

「そうだ、褒美に皿一杯の肉を食べようではないか!」

サキはこれこそ最高の褒美と考えているようだが、それはサキにとってのみで他の二人は渋い顔をしている。
というより二人はサキが食べたいだけなのでは、と思っていた。
そんな二人の様子を見てサキは褒美の選択を誤ったかと焦りの表情を見せる。
それから落ち込んだように顔を俯け、ぼそりと呟いた。

「そうか……ならば他に何が良いのか案を出してくれ。可能な限り努力しよう」

サキの心底残念そう、それでいて悔しそうな言葉。
レイラとセレナの二人がそれに耐えられるはずもない。
二人はすぐ何かを思い出したかのようにそれぞれ言葉を口にした。

「わぁやっぱり肉が食べたい気分かも」
わたくしも今はお肉の気分ですの」
「本当か!?」

二人の言葉で途端に表情を明るくするサキ。
やはりサキは肉が食べたかったようだと二人はホッと息を吐く。

「では肉の店へ向かうぞ! 今日は奮発ふんぱつするからな」

上機嫌に笑みを浮かべながらスキップをしそうな勢いで歩く彼女。
レイラとセレナの二人はそんな彼女の姿を微笑ましく思いながらサキのあとをついていった。

現在のサウストリスタは夕暮れの時間帯。
通りという通りは夕食を求める人々でごった返している。
そのせいか先程までギルドにいた彼女達の姿は通りに出て数秒後には人混みに紛れて見えなくなった。

彼女達が最強へと至るのは一体いつになるのかは神のみぞ知ることだが、少なくともそう遠くない未来であることは彼女達の成長具合から確実だ。
ともかく彼女達のパーティーにはそれだけの可能性があった。

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