美少女クラスメイトに(誘われて→脅されて)、陰キャな俺が怪しい部活に(入った→入らされた)話
26 妹がおかしいんだが
俺が倒れた次の日。
正確に言うと七月一週目の日曜日昼過ぎ。
窓の外は今日も澄み渡った綺麗な青色をしているが特に外で何かをするということもなく、自分の部屋で俺はスマートフォンを操作して怠惰に過ごしていた。
それはもう暇潰しでインストールした無料のRPGをクリアするくらいには暇を持て余している。
「暑い」
流石は夏というべきか外に限らず室内もサウナのように気温と湿度が高い。
まぁこれでも窓を全開にして扇風機をつけているのだがそれだけではこの暑さからは逃れられなかった。
流石に扇風機だけでは死んでしまう。
そう思いエアコンが設置されている一階のリビングに移動しようとしたそのとき。
部屋の扉が何の前触れもなく突然開いた。
「お兄ちゃん……」
部屋の扉を開けた人物は当然夕夏梨。
そもそもこの家には父親があまり帰って来ないので家の人間で部屋に誰か来るとしたら夕夏梨しかいないのだ。
その夕夏梨だがいつもと様子が違っていた。
なんというか全体的にほんのり赤みを帯びていた。
……っていうかそれ。
「もしかして風邪引いたか?」
俺は慌ててベッドから立ち上がり夕夏梨のもとへと向かう。
それから手のひらで夕夏梨の額を触ると確かに熱かった。
「これは完全に熱だな」
妹の緊急事態に一先ず俺は部屋のカーテンを閉め部屋に日差しが差し込まないようにする。
その後夕夏梨を部屋のベッドに座らせ扇風機で適度に風を送るようにしてから一階へと薬を取りに行こうとしたところで夕夏梨に服の裾を捕まれた。
「お兄ちゃん……行かないで」
いつもの夕夏梨なら絶対に発しないであろう言葉を聞いて俺は思い出した。
「ずっと側にいて欲しいの……」
そういえば夕夏梨は弱ると途端に他人に甘え出す妹だったと。
◆◆◆
一階へと下りた俺はリビングにある棚から風邪薬を探していた。
「風邪薬、どこにやったかな」
俺が風邪薬を探している最中も当然と言って良いものなのか俺の背中には夕夏梨がひしっとしがみついていた。それも何故か俺の背中に顔を埋めている。
「お兄ちゃんの背中って良い匂いするね」
「なぁ夕夏梨、そろそろ横になって休んだ方がいいんじゃないか? 体も怠いだろ?」
ずっと立たせ続けるわけにはいかないと俺は夕夏梨に優しく声をかけるが当の本人は全く動く気配がない。
「お兄ちゃんは私のことが嫌いなの? 私は邪魔者なの?」
寧ろ夕夏梨を怒らせてしまっていた。
それにしても風邪薬が見つからない。
「そんなことはないぞ、夕夏梨」
「本当なの?」
夕夏梨の問いかけに俺は『おう』と返事をしつつも必死に風邪薬を探す。
しかしどんなに探しても風邪薬は見つからなかった。
となれば買いにいくしかないのだが妹一人家に残して出掛けるわけにもいかない。
それに俺が薬を買いに行くと言ったら今の夕夏梨はきっとついて来てしまうだろう。
だとすれば残された手段はアレしかない。
「出来れば使いたくなかった手だが仕方ないか」
俺は近くのテーブルに置いてある自分のスマートフォンを手に取り、ある電話番号へと電話をかける。
頼む、出てくれ。
プルルルという呼出音がしばらく鳴った後、ぶつっと電話の繋がった音がする。
それから俺がもしもしと言葉を口にすると電話の向こう側からも、もしもしという言葉が返ってきた。
「で、急に電話をかけて来たりなんかしてどうかしたのかしら?」
俺が電話をかけた相手、それは椎名えり。
昨日の今日で迷惑をかけるわけにはいかないと思ったため出来れば頼りたくなかったのだが状況が状況だ。
俺は今の状況を全て話し彼女に協力を要請する。
「……ってことで助けて欲しいんだ。頼めないか?」
「そういうことなら仕方ないわね。貸し一つで良いわよ」
「貸し!?」
「冗談よ。すぐ買いに行くからちょっと待ってて。ちゃんと寝かせておかないと駄目よ。分かったわね?」
「ああ、分かってる」
「じゃあ三時頃に行くわね」
彼女が来るまで後三十分程、今俺がしなければいけないのは夕夏梨を寝かせることだ。
電話が切れたのを確認した俺はスマートフォンをテーブルに置き背中にしがみついている夕夏梨へと向き直る。
「じゃあ夕夏梨、二階に行くぞ。ちゃんと寝ないとだろ?」
「一緒に寝る」
そう駄々をこねる夕夏梨はものすごい勢いで俺の服を引っ張る。
俺が本気で踏ん張ってやっと相殺できる力なのだから相当な力だ。
「分かった、一緒に寝てやるからそんなに服を引っ張らないでくれ」
「本当? 約束だよ?」
「ああ、約束だ」
正直夏に同じベッドで寝るのは暑くて嫌だが夕夏梨がこの状態ではこうする他ない。
夕夏梨が寝れば解放される。
それまでの辛抱だ。
俺は夕夏梨を連れて階段の近くまで向かった。
「じゃあちょっと先に行っててくれ。俺はタオルとか色々持って行くから」
「うん、分かった。絶対来てね」
こうして夕夏梨は多少ふらつきながらも二階へと上がっていった。
俺は夕夏梨の姿が見えなくなるまで階段の下で見守り、その後タオルを取りに洗面所へと向かった。
◆◆◆
洗面所からタオル、冷蔵庫から冷却ジェルシートを持ってベッドで寝ている夕夏梨の横についたところで家のインターホンが家の中で鳴り響いた。
丁度持ってきたタオルで夕夏梨の額を拭いていたところだったので一度タオルで拭くのを中断して玄関へと向かう。
「お兄ちゃん? どこ行くの?」
「ちょっと人が来てるんだ。すぐ戻るから寝て待ってるんだぞ」
「うん、分かった」
俺はそれから階段を下りて玄関の扉を開ける。
するとそこには白のブラウスにベージュのフレアスカートを合わせた椎名えりがビニール袋を片手に立っていた。
彼女は俺が扉を開けるや否や勢いよく家の中に入っていく。
「おい、ちょっと」
「上がらせてもらうわよ。どこに妹さんはいるのかしら?」
なんだろう、もしかして妹を心配してくれているのだろうか。
「ああ、夕夏梨なら今二階で寝てる」
「そう、なら急ぎましょうか」
椎名えりはその一言だけ残して二階へと上がっていった。
とりあえず俺はお茶とコップでも持っていくとしよう。
椎名えりに、もちろん夕夏梨にも水分補給は必要だ。
正確に言うと七月一週目の日曜日昼過ぎ。
窓の外は今日も澄み渡った綺麗な青色をしているが特に外で何かをするということもなく、自分の部屋で俺はスマートフォンを操作して怠惰に過ごしていた。
それはもう暇潰しでインストールした無料のRPGをクリアするくらいには暇を持て余している。
「暑い」
流石は夏というべきか外に限らず室内もサウナのように気温と湿度が高い。
まぁこれでも窓を全開にして扇風機をつけているのだがそれだけではこの暑さからは逃れられなかった。
流石に扇風機だけでは死んでしまう。
そう思いエアコンが設置されている一階のリビングに移動しようとしたそのとき。
部屋の扉が何の前触れもなく突然開いた。
「お兄ちゃん……」
部屋の扉を開けた人物は当然夕夏梨。
そもそもこの家には父親があまり帰って来ないので家の人間で部屋に誰か来るとしたら夕夏梨しかいないのだ。
その夕夏梨だがいつもと様子が違っていた。
なんというか全体的にほんのり赤みを帯びていた。
……っていうかそれ。
「もしかして風邪引いたか?」
俺は慌ててベッドから立ち上がり夕夏梨のもとへと向かう。
それから手のひらで夕夏梨の額を触ると確かに熱かった。
「これは完全に熱だな」
妹の緊急事態に一先ず俺は部屋のカーテンを閉め部屋に日差しが差し込まないようにする。
その後夕夏梨を部屋のベッドに座らせ扇風機で適度に風を送るようにしてから一階へと薬を取りに行こうとしたところで夕夏梨に服の裾を捕まれた。
「お兄ちゃん……行かないで」
いつもの夕夏梨なら絶対に発しないであろう言葉を聞いて俺は思い出した。
「ずっと側にいて欲しいの……」
そういえば夕夏梨は弱ると途端に他人に甘え出す妹だったと。
◆◆◆
一階へと下りた俺はリビングにある棚から風邪薬を探していた。
「風邪薬、どこにやったかな」
俺が風邪薬を探している最中も当然と言って良いものなのか俺の背中には夕夏梨がひしっとしがみついていた。それも何故か俺の背中に顔を埋めている。
「お兄ちゃんの背中って良い匂いするね」
「なぁ夕夏梨、そろそろ横になって休んだ方がいいんじゃないか? 体も怠いだろ?」
ずっと立たせ続けるわけにはいかないと俺は夕夏梨に優しく声をかけるが当の本人は全く動く気配がない。
「お兄ちゃんは私のことが嫌いなの? 私は邪魔者なの?」
寧ろ夕夏梨を怒らせてしまっていた。
それにしても風邪薬が見つからない。
「そんなことはないぞ、夕夏梨」
「本当なの?」
夕夏梨の問いかけに俺は『おう』と返事をしつつも必死に風邪薬を探す。
しかしどんなに探しても風邪薬は見つからなかった。
となれば買いにいくしかないのだが妹一人家に残して出掛けるわけにもいかない。
それに俺が薬を買いに行くと言ったら今の夕夏梨はきっとついて来てしまうだろう。
だとすれば残された手段はアレしかない。
「出来れば使いたくなかった手だが仕方ないか」
俺は近くのテーブルに置いてある自分のスマートフォンを手に取り、ある電話番号へと電話をかける。
頼む、出てくれ。
プルルルという呼出音がしばらく鳴った後、ぶつっと電話の繋がった音がする。
それから俺がもしもしと言葉を口にすると電話の向こう側からも、もしもしという言葉が返ってきた。
「で、急に電話をかけて来たりなんかしてどうかしたのかしら?」
俺が電話をかけた相手、それは椎名えり。
昨日の今日で迷惑をかけるわけにはいかないと思ったため出来れば頼りたくなかったのだが状況が状況だ。
俺は今の状況を全て話し彼女に協力を要請する。
「……ってことで助けて欲しいんだ。頼めないか?」
「そういうことなら仕方ないわね。貸し一つで良いわよ」
「貸し!?」
「冗談よ。すぐ買いに行くからちょっと待ってて。ちゃんと寝かせておかないと駄目よ。分かったわね?」
「ああ、分かってる」
「じゃあ三時頃に行くわね」
彼女が来るまで後三十分程、今俺がしなければいけないのは夕夏梨を寝かせることだ。
電話が切れたのを確認した俺はスマートフォンをテーブルに置き背中にしがみついている夕夏梨へと向き直る。
「じゃあ夕夏梨、二階に行くぞ。ちゃんと寝ないとだろ?」
「一緒に寝る」
そう駄々をこねる夕夏梨はものすごい勢いで俺の服を引っ張る。
俺が本気で踏ん張ってやっと相殺できる力なのだから相当な力だ。
「分かった、一緒に寝てやるからそんなに服を引っ張らないでくれ」
「本当? 約束だよ?」
「ああ、約束だ」
正直夏に同じベッドで寝るのは暑くて嫌だが夕夏梨がこの状態ではこうする他ない。
夕夏梨が寝れば解放される。
それまでの辛抱だ。
俺は夕夏梨を連れて階段の近くまで向かった。
「じゃあちょっと先に行っててくれ。俺はタオルとか色々持って行くから」
「うん、分かった。絶対来てね」
こうして夕夏梨は多少ふらつきながらも二階へと上がっていった。
俺は夕夏梨の姿が見えなくなるまで階段の下で見守り、その後タオルを取りに洗面所へと向かった。
◆◆◆
洗面所からタオル、冷蔵庫から冷却ジェルシートを持ってベッドで寝ている夕夏梨の横についたところで家のインターホンが家の中で鳴り響いた。
丁度持ってきたタオルで夕夏梨の額を拭いていたところだったので一度タオルで拭くのを中断して玄関へと向かう。
「お兄ちゃん? どこ行くの?」
「ちょっと人が来てるんだ。すぐ戻るから寝て待ってるんだぞ」
「うん、分かった」
俺はそれから階段を下りて玄関の扉を開ける。
するとそこには白のブラウスにベージュのフレアスカートを合わせた椎名えりがビニール袋を片手に立っていた。
彼女は俺が扉を開けるや否や勢いよく家の中に入っていく。
「おい、ちょっと」
「上がらせてもらうわよ。どこに妹さんはいるのかしら?」
なんだろう、もしかして妹を心配してくれているのだろうか。
「ああ、夕夏梨なら今二階で寝てる」
「そう、なら急ぎましょうか」
椎名えりはその一言だけ残して二階へと上がっていった。
とりあえず俺はお茶とコップでも持っていくとしよう。
椎名えりに、もちろん夕夏梨にも水分補給は必要だ。
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