美少女クラスメイトに(誘われて→脅されて)、陰キャな俺が怪しい部活に(入った→入らされた)話

サバサバス

14 イケメンが隣なんだが

学校の敷地内に並ぶ六台もの大型バス。
その一つ一つに『桜木高等学校御一行様』という歓迎プレートが貼り付けられていることからこれらが全て学校側の貸し切ったバスであるということが分かる。
このように六台もの大型バスを貸し切るのは何か行事がある時のみ。
そう、今日はその行事──宿泊学習の当日だった。

「おーい、全員揃ってるか?」

そう声を張るのは二年B組の担任教師。
教師は同時に点呼もとっていた。

「……三十七、三十八、よしこれで全員だな」

しばらくして点呼をとり終え、他のクラスの担任教師が集まる前方へと報告に向かう。
その間俺は……。

「今日から宜しくね、早坂君。それと依頼のことずっと投げっぱなしにしててごめん、部活で中々顔出せなくて」
「気にしなくてもいい。依頼だからな」
「そういえば椎名さんはどこにいるの?」
「アイツは今ちょっと用事があるらしくてな」
「そうなんだ、じゃあ挨拶は後でいいかな?」

今回俺が担当する依頼の依頼主──安藤ひゆりと挨拶を交わしていた。

「とりあえず……」
「あ、そうだね。じゃあまた後で」

安藤ひゆりはそれだけ言うとその場を後にする。
挨拶の流れとして不自然ではあるがこれは簡単に言えば過度の接触を避けるため。
必要以上に彼女と近づいて話していればよからぬ噂がたち告白に影響が出てしまうかもしれない。
これは彼女に対する俺の配慮である。

「よし、他のクラスも全員揃っているようだからこれからバスに乗り込むぞ! お前らのバスは左から二番目のやつな」

安藤ひゆりがこの場から去った直後に戻ってきた二年B組の担任教師の指示に従い二年B組の生徒は次々とバスに乗り込む。

「ホント楽しみだよな」
「それな、マジで楽しみだわ。優人も早く来いよ!」
「ああ、ちょっと先に行って待っていてくれ」

その中で早見優人だけが立ち止まり何かを探すように辺りを見渡していた。
一体何を探しているんだ? と思いながらもそのまま彼の横を通り過ぎる……。

「ああ、いたいた。早坂君、探していたよ」

……ことは出来なかった。
早見優人は俺の姿を見つけると小走りで駆け寄って来る。

「……」
「バスの席で隣に座ってもいいかな? せっかく同じグループになったんだからこの機会に良かったら」

俺に屈託のない笑顔を向ける早見優人、彼はバスの席を一緒しないかという多分クラスの女子からすれば失神レベルのお誘いを俺にしていた。
通常ならばここでイエス、マイロードと英国執事のように彼に忠誠を誓うところだろうが残念ながら俺がそうすることはない。
第一、二時間近くも隣で何を話せばいいんだ?
今日の天気か?
昨日の天気か?
それとも明日の天気か?
どちらにせよ天気の話しか出来る気がしない。
第二、単純にイケメンというのが好かない。
辺り構わず笑顔を振り撒くあれはなんだ?
あれのせいで人が夏場光に群がる蛾のように集まっていることに気づいていないのだろうか?

「いや俺は一人で前の席に……」

以上の理由から早見優人のお誘いを断ろうとしていると後方から俺に対する女子の厳しい視線、避難の声が殺到する。

「何? 早見君の隣が嫌だって言うの?」
「マジであり得ないわ」
「てゆうか、寧ろお願いする立場でしょ」
「あーそれ言えてる」

気づいたときには既に早見優人の隣に座らないと言えるような空気はなくなっていた。
基本的人権は、自由権は一体どこに行ったのだろうか?

「確かに良い機会だからな……」

最大限、顔の表情が明るくなるように笑顔を作る。
不本意だが俺には隣に座るという選択肢しか残されていない。

「それなら良かった。じゃあ行こうか」

これでいいだろ? と後方のいる女子の様子を窺う。
しかし、現実はそう簡単ではなかった。

「は? 何でアイツが早見君の隣に座るの?」
「あーホント最悪」

女子の皆さんは俺が早見優人の隣になったらなったで嫌らしい。
だったらどうすれば良かったんだ。

「おーい、お前らも早くバスに乗れ!」

考えていても仕方ないのでとりあえず担任教師の掛け声に従いバスに乗り込んだ。
乗り込んでからも俺と早見優人の会話を聞いていた女子からの視線が痛かったのは言うまでもない。

◆◆◆

バスが走り出してから早一時間。
バス内ではそれぞれが楽しく過ごしていた。
持ってきたお菓子をシェアする者、友達と談笑する者、スマートフォンのアプリでゲームをする者、色々だ。
中でも俺の隣の席は凄かった。
何が凄いって前、後ろ、横のシートの人から一度に話しかけられ、それに対してそれぞれ的確な返答をしていくところだ。
このバスは一人掛けのシートが四列並んだ設計なので前と後ろ、横のシートを合わせて六人もいる。
もはや彼は聖徳太子の生まれ変わりか何かである。

「ところで早坂君は普段何をしているんだい?」
「まぁ色々……」

そんな隣の席のやつ──早見優人は時々俺にも話しかけてくる。
彼は俺を気遣ってそうしているのだろうが本当に気遣うつもりがあるなら話しかけて来ないで欲しい。
何故なら話しかけられる度、今まで会話をしていた者から尋常じゃなく睨まれるのだ。
もうそれは親の敵でも見るかのような憎しみのこもった目を容赦なく向けてくる。
俺だって好きで話しかけられているわけではないのだ。
そこまでして彼と話したいのなら話を遮ってでも彼に直接話しかけにいって欲しい。

「そうか色々か。じゃあ休みの日は何をしているんだい?」
「テレビを見ているか、家事だな」
「家事をしてるなんて偉いな。俺なんて全くだよ」
「妹と二人暮らしだからな」
「そうか早坂君には妹がいるんだね」
「ああ、一つ下だ」
「俺も早坂君と同じく妹がいてね。これがまた手がかかる妹なんだよ。反抗期って言うのかな?」

だが彼と話したくなる気持ちも分かる。
一瞬で懐に入られる感覚は初めのうちはどうしても恐怖を覚えてしまうが一度受け入れてしまえばどうってことはない。
これが誰をも狂わせる早見優人の魅力。
恐るべしである。

「悪いが少し休む」
「ああ、分かったよ。付き合ってもらって悪かったね」

それでもずっと話していたいとは思わない。
せいぜい持って数分といったところだ。
それ以上は疲れてしまう。

それから俺はバスの窓に頭を預け外の景色を眺める。
流れていく景色を眺めているうちに段々と眠くなり俺は目を瞑った。

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