美少女クラスメイトに(誘われて→脅されて)、陰キャな俺が怪しい部活に(入った→入らされた)話
6 多分呪われたんだが
それは遠い記憶、とある夏の日の懐かしい匂いのする公園でのこと。
その日は聴覚が狂いそうになるほど蝉があらゆるところから同時に鳴く日差しが強い真夏日。
そんな公園の中央で一人の少女が僕に笑いかける。
「今日は何して遊ぼうか? 砂遊び? それともおままごと?」
「うん、そうだね。今日は砂遊びでもしようか」
少女が被っている少し大きめの麦わら帽子に手を置きゆっくりと頭を撫でる。
幼いながらも僕は自分と同じ歳くらいの少女をもう一人の妹のように思っていた。
だからだろうか?
僕は女子と遊んでいることを同じ学校の同級生にバカにされながらも彼女を放っておくことが出来なかった。
「よしじゃあ決まりだね。今日は負けないんだから!」
「望むところだ!」
それとも……もしかしたら僕は彼女の笑顔が見たかったから放っておけなかっただけなのかもしれない。
◆◆◆
五月も三週目に突入し、宿泊学習がいよいよ来週に迫った日の朝。
俺は珍しく早起きをしていた。
そして今一階にある冷蔵庫の前に立っている。
何故冷蔵庫の前に立っているか?
別に小腹が空いたからつまみ食いしようとかではない。
朝に冷蔵庫の前に立っている理由はあれしかない。
「よし、今日は俺が朝ごはんを作るか」
毎日結果的に妹に朝ごはんを用意させてしまってる。
たまには俺が一肌脱がなければ兄として情けない。
メニューはそうだな……。
「王道に目玉焼きと食パン、それとコーヒーで決定だな」
目玉焼きは焼くだけ、食パンも焼くだけ、コーヒーはインスタントがあったはずだ。
これなら普段料理をしない俺でも簡単に。
……と思っていたが俺は一体どこで間違ってしまったんだ。
目の前には炭と化した目玉焼きと食パン、それにコーヒーという黒一色のラインナップ。
自分で言うのもあれだがこれはなんだ? 食べ物なのか?
「おはよう、お兄ちゃん。今日はなんだか起きるの早いね」
おっと……どうやら妹が起きてきたようだ。
「ん……食べ物の匂いするけどお兄ちゃんなにか作ってたの?」
「ああ、ちょっとな」
「ふーん、何を作ってたの?」
目玉焼きと食パン、コーヒーと言いたいが……果たしてこれは作ったといって良いものだろうか。
「お兄ちゃん、どうしたの? そんな怖い顔して」
「あ、いや……作ったというか出来てしまったというか」
「なにそれ、もういいから見せてよ!」
夕夏梨は制止する俺を振り切り、俺が作ってしまった物がある台所へと向かう。
「ちょっと待ってくれ! それはもう食べ物じゃ……」
「なにこれ……」
夕夏梨は例の黒い物体を見て固まる。
それもそうだろう、これはもはや食べ物ではないのだから。
「これは一応目玉焼きと食パン、コーヒーの朝食セットのつもりだ」
俺の説明でさらに表情を怪訝なものにする我が妹、きっとどうしたらこんな風になるのだろうとでも思っているのだろう。
俺もそう思う。
「私が朝ごはん作るよ。今日はお兄ちゃんの分も作って上げる」
「ああ、ありがとう」
俺に対していつも若干当たりが強い妹がここまで優しいとは……。
なんか死にたくなった。
◆◆◆
その日の放課後の部室。
彼女は俺が見ていることに気づくと本をテーブルの上に置き俺を見る。
「私に何か用があるのかしら?」
「ああ、いつも何の本を読んでるのかと思ってな」
部活に入ってからというものいつも気になっていた。
彼女──椎名えりがどんな本を読んでいるのか。
彼女のイメージだとミステリー系の小説だろうか?
「唐突ね……そんなに知りたいの?」
「部活中モヤモヤする程度には気になるな」
「そう……」
俺の言葉に椎名えりはテーブルの上に置いてある本を手に取りカバーを丁寧に外す。
その後彼女は何故か顔を赤らめながらカバーを外した本を俺に差し出した。
見られてそんなに恥ずかしいものなのだろうかと差し出された本を受け取った俺は絶句する。
「マジか……」
差し出された本は『ドキドキ! これであなたもモテモテマイスター』なるどうにも胡散臭い恋愛必勝本だった。
再び椎名えりに視線を向けるが彼女は黙ったまま窓の外を見ている。
あの椎名えりが恋愛必勝本? 嘘だろ?
まったく予想できなかった。
ということはあれか? いつも部室でミステリーを解くような顔してこの胡散臭い本を読んでいたということか。
しかし、何か事情があるのかも知れない。
ここはあまり触れてやらないでやろう。
俺が黙って彼女の近くに本を置いた後、ふとあることに気づく。
「もしかして……今度の依頼のためか?」
それならば色々説明がつく。
椎名えりがこの本を読んでいるのはこの前依頼をするためこの部室にやって来た安藤ひゆりというクラスメイトに協力するためという見方だ。
「まぁ……そんなところかしら」
「なんだよ、それならそうと先に言ってくれ。俺はてっきり好き好んで読んでいるのかと思って正直気まずかった」
「それは悪いことをしたわね……」
やはりそうか、椎名えりがとても高校生が読むとは思えない中身の無さそうな本を好き好んで読むわけがないよな。
きっと間違えて買ってしまい読まないのも勿体無いので読んでいるとかそういう理由なのだろう。
「まったくだ。間違って買ってしまったものでも読まないと勿体無いって気持ちは分かるが、明らかに中身の無さそうなタイトルだし読んでも依頼に役立つ情報は見つけられないんじゃないか?」
俺がその言葉を口にした直後、椎名えりは突然ガタッと勢いよく椅子から立ち上がる。
その手にカバンを持っているところを見るに彼女はもう帰宅するようだ。
「早坂君、私今日はもう失礼するわ。最後に鍵をお願いね」
「ああ、了解した。それにしても今日は早いな。何か用事でもあるのか?」
「そうね、用事ならこれから藁人形を作るという大事な用事があるわ」
「一応聞くがそれは何のためだ?」
「実際に使うのよ。じゃあね、早坂君」
「それどっちの意味!?」
彼女は俺の言葉に一切反応することなく足早に部室を後にする。
その後、部室に一人残された俺は椎名えりに対して何か悪いことでもしたか? と自らを顧みながらもスマートフォンを取り出し検索エンジンを立ち上げた。
「とりあえず近くのお祓いが出来る神社でも探しておこう」
念のためである。
その日は聴覚が狂いそうになるほど蝉があらゆるところから同時に鳴く日差しが強い真夏日。
そんな公園の中央で一人の少女が僕に笑いかける。
「今日は何して遊ぼうか? 砂遊び? それともおままごと?」
「うん、そうだね。今日は砂遊びでもしようか」
少女が被っている少し大きめの麦わら帽子に手を置きゆっくりと頭を撫でる。
幼いながらも僕は自分と同じ歳くらいの少女をもう一人の妹のように思っていた。
だからだろうか?
僕は女子と遊んでいることを同じ学校の同級生にバカにされながらも彼女を放っておくことが出来なかった。
「よしじゃあ決まりだね。今日は負けないんだから!」
「望むところだ!」
それとも……もしかしたら僕は彼女の笑顔が見たかったから放っておけなかっただけなのかもしれない。
◆◆◆
五月も三週目に突入し、宿泊学習がいよいよ来週に迫った日の朝。
俺は珍しく早起きをしていた。
そして今一階にある冷蔵庫の前に立っている。
何故冷蔵庫の前に立っているか?
別に小腹が空いたからつまみ食いしようとかではない。
朝に冷蔵庫の前に立っている理由はあれしかない。
「よし、今日は俺が朝ごはんを作るか」
毎日結果的に妹に朝ごはんを用意させてしまってる。
たまには俺が一肌脱がなければ兄として情けない。
メニューはそうだな……。
「王道に目玉焼きと食パン、それとコーヒーで決定だな」
目玉焼きは焼くだけ、食パンも焼くだけ、コーヒーはインスタントがあったはずだ。
これなら普段料理をしない俺でも簡単に。
……と思っていたが俺は一体どこで間違ってしまったんだ。
目の前には炭と化した目玉焼きと食パン、それにコーヒーという黒一色のラインナップ。
自分で言うのもあれだがこれはなんだ? 食べ物なのか?
「おはよう、お兄ちゃん。今日はなんだか起きるの早いね」
おっと……どうやら妹が起きてきたようだ。
「ん……食べ物の匂いするけどお兄ちゃんなにか作ってたの?」
「ああ、ちょっとな」
「ふーん、何を作ってたの?」
目玉焼きと食パン、コーヒーと言いたいが……果たしてこれは作ったといって良いものだろうか。
「お兄ちゃん、どうしたの? そんな怖い顔して」
「あ、いや……作ったというか出来てしまったというか」
「なにそれ、もういいから見せてよ!」
夕夏梨は制止する俺を振り切り、俺が作ってしまった物がある台所へと向かう。
「ちょっと待ってくれ! それはもう食べ物じゃ……」
「なにこれ……」
夕夏梨は例の黒い物体を見て固まる。
それもそうだろう、これはもはや食べ物ではないのだから。
「これは一応目玉焼きと食パン、コーヒーの朝食セットのつもりだ」
俺の説明でさらに表情を怪訝なものにする我が妹、きっとどうしたらこんな風になるのだろうとでも思っているのだろう。
俺もそう思う。
「私が朝ごはん作るよ。今日はお兄ちゃんの分も作って上げる」
「ああ、ありがとう」
俺に対していつも若干当たりが強い妹がここまで優しいとは……。
なんか死にたくなった。
◆◆◆
その日の放課後の部室。
彼女は俺が見ていることに気づくと本をテーブルの上に置き俺を見る。
「私に何か用があるのかしら?」
「ああ、いつも何の本を読んでるのかと思ってな」
部活に入ってからというものいつも気になっていた。
彼女──椎名えりがどんな本を読んでいるのか。
彼女のイメージだとミステリー系の小説だろうか?
「唐突ね……そんなに知りたいの?」
「部活中モヤモヤする程度には気になるな」
「そう……」
俺の言葉に椎名えりはテーブルの上に置いてある本を手に取りカバーを丁寧に外す。
その後彼女は何故か顔を赤らめながらカバーを外した本を俺に差し出した。
見られてそんなに恥ずかしいものなのだろうかと差し出された本を受け取った俺は絶句する。
「マジか……」
差し出された本は『ドキドキ! これであなたもモテモテマイスター』なるどうにも胡散臭い恋愛必勝本だった。
再び椎名えりに視線を向けるが彼女は黙ったまま窓の外を見ている。
あの椎名えりが恋愛必勝本? 嘘だろ?
まったく予想できなかった。
ということはあれか? いつも部室でミステリーを解くような顔してこの胡散臭い本を読んでいたということか。
しかし、何か事情があるのかも知れない。
ここはあまり触れてやらないでやろう。
俺が黙って彼女の近くに本を置いた後、ふとあることに気づく。
「もしかして……今度の依頼のためか?」
それならば色々説明がつく。
椎名えりがこの本を読んでいるのはこの前依頼をするためこの部室にやって来た安藤ひゆりというクラスメイトに協力するためという見方だ。
「まぁ……そんなところかしら」
「なんだよ、それならそうと先に言ってくれ。俺はてっきり好き好んで読んでいるのかと思って正直気まずかった」
「それは悪いことをしたわね……」
やはりそうか、椎名えりがとても高校生が読むとは思えない中身の無さそうな本を好き好んで読むわけがないよな。
きっと間違えて買ってしまい読まないのも勿体無いので読んでいるとかそういう理由なのだろう。
「まったくだ。間違って買ってしまったものでも読まないと勿体無いって気持ちは分かるが、明らかに中身の無さそうなタイトルだし読んでも依頼に役立つ情報は見つけられないんじゃないか?」
俺がその言葉を口にした直後、椎名えりは突然ガタッと勢いよく椅子から立ち上がる。
その手にカバンを持っているところを見るに彼女はもう帰宅するようだ。
「早坂君、私今日はもう失礼するわ。最後に鍵をお願いね」
「ああ、了解した。それにしても今日は早いな。何か用事でもあるのか?」
「そうね、用事ならこれから藁人形を作るという大事な用事があるわ」
「一応聞くがそれは何のためだ?」
「実際に使うのよ。じゃあね、早坂君」
「それどっちの意味!?」
彼女は俺の言葉に一切反応することなく足早に部室を後にする。
その後、部室に一人残された俺は椎名えりに対して何か悪いことでもしたか? と自らを顧みながらもスマートフォンを取り出し検索エンジンを立ち上げた。
「とりあえず近くのお祓いが出来る神社でも探しておこう」
念のためである。
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