美少女クラスメイトに(誘われて→脅されて)、陰キャな俺が怪しい部活に(入った→入らされた)話

サバサバス

5 初めての依頼が舞い込んだんだが

五月も中盤に差し掛かったとある晴れた日の午後の授業。
眠気と戦いながら授業を受けていた俺の耳に担任の教師からある情報がもたらされた。

「おい聞け、今年も例年通り学年全体の親睦を深めるために二泊三日のオリエンテーリングを行うことになった。各自黒板に貼ってあるプリントで詳細を確認してくれ」

それは学年全体の親睦を深めるため毎年やっていると言われている二泊三日のオリエンテーリング、簡単にいえば宿泊学習のことだ。
宿泊学習は同じ学校の同胞と生活を共にする行事であり、修学旅行の次に人気がある。
そのため今年もその宿泊学習をやるということを聞いた教室内のリア充達は一様にざわついていた。

だが一方の俺はその行事を喜ばしく思っていなかった。
寧ろとてつもなく憂鬱である。
何故、俺がその行事を憂鬱に思っているのか?
それは単純にグループ決めがあるからだ。
去年は一年生の五月最後ということもあり、まだ人間関係がはっきりとしておらずなんとか最後にグループへと誘われたが今は二年生の五月。
クラス替えをしたとはいえ人間関係はガチガチに固まっている。
一体どこに俺が入り込む隙間があろうか……。

「……そういうわけだから今日を含めて来週木曜日、帰りのホームルームまでにはオリエンテーリングのグループと部屋のグループの両方を決めておいてくれよ。それとオリエンテーリングのグループは必ず男女混合にするように。以上、次の授業の準備にかかれ!」

担任の教師の最後の言葉と共に授業の終了を知らせるチャイムが鳴る。
教室内のクラスメイト達が一斉に休み時間の雰囲気を醸し出す中、未だに俺は自分の席で一つのことを考えていた。
それは言わずもがな宿泊学習のこと、もっと詳しく言えばグループ決めのことだ。
この調子で何もせずに来週の木曜日を迎えてしまえば一人取り残されることは必須、そうなる前に対策を立てなければならないのだが……。

「……とりあえず次の授業の準備でもするか」

数分考えたところで名案が浮かぶはずもない。
ここは一旦考えるのは置いておいて次の授業の準備をしよう。

◆◆◆

部室棟四階の一室、スマートフォンをいじる手を止め目の前にいる美少女を見る。
彼女は読書に集中しており、俺の様子など気にもなっていないようだ。
彼女の読書を中断させるのは少しだけ気が引けるが、彼女には例の件で聞いておかなければならない。

「なぁちょっと聞いていいか?」

俺の質問に椎名えりは静かに本を閉じ、スッと視線を俺に向ける。
これは早く続きを話せってことだな。

「宿泊学習のグループ決めで当てとかあるか?」

椎名えりは窓からグラウンドを見て少し考える素振りを見せるが数秒で視線を戻し一言だけ呟く。

「……ないわ」

椎名えりなら外見でなんとかなるのかもしれないと思ったが、彼女の場合は逆に誘いにくいとかだろうか?
しかしこれで椎名えりのグループに入れてもらうという俺の希望も途絶えてしまった。

「そうか、なんかすまない」
「いえ、大丈夫よ。その様子だとあなたも同じ境遇のようね」
「気づいたか?」
「気づくもなにもあなたのその落ち着きがない様子を見ていれば誰でも分かるわよ」

確かに今日のあの時間からグループ決めで悩んではいたが俺ってそんな行動に出ていたのか?
それもあの椎名えりに気づかれるくらいなのだから、クラスでも不審な行動をしていたに違いない。

「そんなに気を落とさないで早坂君、グループなら私が……」

椎名えりが何かを言いかけた瞬間、部室の扉が突然ガラガラと音を立てて開く。

「あの! 助けてくださいっ!!」

突然扉を開けた黒髪ミディアムの少女はまっすぐに椎名えりを見ると部室棟四階全教室に響き渡る大きな声で叫んだ。

「あ、ごめんなさい……いきなり大きな声を出して」

それから続けて謝罪の言葉を口にする。
一体何事だ? と俺が身構える中、少女は部室の扉を閉めると部室内にある長テーブルへ歩を進めた。
少女の行動に特に驚いた様子も見せず椅子から立ち上がる椎名えり。
二人は知り合いなのだろうか?
真実を確かめるため椎名えりの近くまで歩み寄る。

「あんたの知り合いか?」
「初対面よ」

椎名えりの耳元に小声でそう問いかけるが返って来たのはその一言だけ。
では一体どういうことなんだと考え始めた直後、椅子に座った少女が口を開いた。

「実は相談……というか協力して欲しいことがあって」

そう話す少女は顔を俯けており表情が全く読めない。
そんな彼女に椎名えりはいつの間にか入れた三つのお茶のうち一つを差し出すと自らも椅子に座った。
続けて俺も椅子を誕生日席に移動させて腰を下ろす。

「五月の最後に宿泊学習があるよね……」
「あるわね」

言葉を溜めに溜める少女を湯飲みの中身を揺らし文字通りお茶を濁して待つ椎名えり。
いつもながら彼女は無表情であるが、俺にはお茶を濁している彼女が早く続きを話してくれと急かしているように見えた。
少女も同じことを思ったようであわあわしながらも慌てて続きを口にする。

「ご、ごめんなさい! 続きだよね……実は私そこで早見君に告白しようと思ってるの!」

少女は顔を真っ赤に染め、椎名えりの表情を伺うが肝心の彼女は未だに無表情のままお茶の中身を揺らしている。
そんな彼女に少女が再び声を掛けようとする直前、やっとのことで椎名えりは口を開いた。

「で、何をするためにここに来たのかしら?」
「そ、そうだよね。ごめんね」
「謝る必要はないわ。私はただ聞いているだけよ」

なんだろう……この悪い空気は。
椎名えりに悪気がないのは分かってはいるがもう少し友好的に出来ないものか。

「う、うん。それで椎名さんと早坂君にはその……告白を手伝って欲しいの。二人は人を助ける部活をしてるんだよね?」
「そうね……依頼だというのなら私達『愛と正義に溢れた楽しい部活』が引き受けましょう」
「ありがとう! 椎名さん! 早坂君!」

そうか、彼女がここに来たのはこの怪しい部活に依頼をするため。
部活に入ってからというものスマートフォンをいじるだけだったからこの部活が人助けをする部活だってことすっかり忘れていたな。
しかしどうして俺達のことを知っているのだろうか?
この部活はお世辞にも学校で知られているとは言えない。
それにも関わらず彼女は部室の場所まで知っていた。
一体彼女は何者なんだ?

「……ところでどうして私達のことを知っているのかしら?」

椎名えりも俺と同じことが気になっていたらしく少女にそう問いかける。
そんな彼女の質問に少女は信じられないとでもいうような顔で驚きの声をあげた。

「ひどい!? 私達クラスメイトだよ!」
「そうだったかしら」
「そうだよ! 早坂君なら私のことわかるよね?」

そこで俺に来るのか……。
クラス替えをしてまだ一ヶ月ちょっと、クラスメイト全員の顔と名前なんて覚えているわけがない。
だがここはYESと言っておいた方が正解な気がする。

「ああ、そうだなクラスメイトだ」
「じゃあ私の名前は?」
「それはだな。えーと……」

しばらく溜めるも結局名前は分からず、最終的には首を横に振る。
すると少女はまたもや信じられないものでも見るような顔をして俺と椎名えりを交互に見た。

「二人ともひどいよ! 私の名前は安藤ひゆり。ちゃんと覚えておいてよ!」
「ああ、善処する」

少女──安藤ひゆりはそれからふっと息を吐くとおもむろに時計を見る。

「……ってもうこんな時間!? 早く部活に行かないと! じゃあまたね!」

安藤ひゆりはそれだけ言うとガタッと椅子を後ろへ引いて立ち上がり足早に部室を去っていってしまった。
そんな彼女を見て椎名えりが少し疲れた様子で一言発する。

「元気が良かったわね」
「そうだな」

同感だった俺も彼女の言葉に肯定を返す。
すると突然彼女が変なことを聞いてきた。

「早坂君はああいうのが好みなのかしら?」

そんなことを聞いてどうしたのだろうと思いつつも特に答えない理由がないので思ったことをそのまま口にする。

「いや別にそうでもないな」
「そう……」

椎名えりは俺の返事に一言だけ返すとテーブルの上に置いてあった本を手に取り読み始めた。
何が聞きたかったのだろうという疑問も少しはあったがそこまで気にならなかった俺は制服のポケットからスマートフォンを取り出し電源ボタンを押した。

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