美少女クラスメイトに(誘われて→脅されて)、陰キャな俺が怪しい部活に(入った→入らされた)話

サバサバス

3 部活に加入したんだが

現在は使われていない学校の空き教室、そこで俺とクラスの美少女こと椎名えりが対峙していた。
彼女と空き教室に入ったときから周囲に立ち込める不思議な緊張感、そんな中で話を切り出したのは当然俺を呼び出した椎名えりである。

「早坂君、あなたにお願いがあるの」

お願い?
あの椎名えりがお願いなど今日は雪でも降るのだろうか?
もしかして……。

「お願いっていうのは昨日のことか?」

彼女が俺にお願いなど昨日のことしか思い付かない。
おおかた昨日のことは黙ってくれとか、そういうのだろう。

「そう昨日のこと、あのときのことは誰にも話さないでいて欲しいの」

記憶を消すのがダメだったら、次は正攻法か。

「安心してくれ。そもそも俺は他人とあまり話したりしない。それに例え俺が何かを言ったとしても誰も気にしないだろ」
「そうかもしれないけど……これ契約書」

契約書? まぁそれがなければ安心出来ないと言うならば書いてやらんでもないか。

「これでいいか?」
「あとここにも名前をお願い」

おっと、俺としたことが名前を書き忘れてしまうなんてな。
ここにも名前を書いて……ん?

自分の名前を書き終えた時点で俺は気づいてしまった。
自分の名前を書いた紙の下から浮かび上がる『入部申請書』の文字に。

「ありがとう。またね、早坂君」
「ちょっと待ってくれ。今その紙にうっすら『入部申請書』って文字が透けて見えたんだが」

もし間違っていたら椎名えりに悪いが気になってしまったのだから仕方ない。
知らないより知っている方がいい、昔の偉い人も多分そう言っていたことだろう。

「そうよ、これは入部申請書」
「なっ!? 話が違うだろ! それは今後昨日のことを誰にも話さないための契約書のはずだろ?」
「誰もそんなことは言ってない。私は契約書って言って紙を渡しただけ」

椎名えりは澄ました顔で淡々と俺に事実を告げる。
考えてみれば彼女は契約書と言って紙を渡しただけ、それに何も疑うことなく自分の名前を書いてしまったのは他の誰でもないこの俺だ。
どうやら俺は椎名えりの策略にまんまと嵌められてしまったようである。
だが今気づいて良かった、今ならまだキャンセルは出来る。
俗に言うクーリングオフだ。

「そうか分かった。だったら部活の申請は今この場でキャンセルする。出来るだろ?」
「そうね」
「なら申請書をこっちに渡してくれ」

俺の伸ばした右手を椎名えりはチラッと見る。
しかし、ここで訳も分からない部活に加入させられることはなくなったと安心してしまったのがいけなかったのだろう。
椎名えりは俺に入部申請書を渡すと思いきや、俺が油断しているのを良いことに豪快に俺の右手首を掴む。

「なっ!?」

それからはあっという間で彼女は自分の肩を覆うように俺の右手をぐるりと回すと、自身の柔らかい部位へ押し当てた。
今まで感じたことのない力を入れればどこまでも沈んでいきそうなこの柔らかい感触に俺が意識を捕らわれている最中、パシャっというシャッター音が静かな教室に響き渡る。

気づいたときには全てが色んな意味で終わっていた。
端から見れば俺は椎名えりの肩に手を回し胸を揉みしだいている変態、それもその姿は彼女のスマートフォンにバッチリ記録されている。
この状況で俺は無罪でいられるだろうか?
その答えは火を見るよりも明らかだろう。
だが急に訪れた己のピンチに冷や汗を流しながらも、俺は椎名えりの胸を離すことが出来なかった。
この状況であっても彼女の胸は吸引力の変わらない掃除機の如く俺を惹き付けるのだ。
そんな生物兵器に果たして抗えるだろうか?
断じて否、男がこの吸引力の変わらない生物兵器に手を埋めてしまえば、それはプロレスラーに締め技を決められたときと同義に抜け出すことなど出来ない。
だとすれば……。

「いつまで触ってるの? 早坂君」

声のする方へと顔を向けるとそこには無表情ながらも頬を少し赤く染めた椎名えりの姿。
彼女の姿に自分が今何をしているのかを理解した俺はすぐさま手を引っ込め、数メートル程距離をとる。

「うおっ!? すまん、あまりの気持ちよさについ……じゃねぇだろぉ!!」

それから自分で自分の頬を叩き、頭の中を切り替える。
危ない、あまりの気持ちよさに意識をハイジャックされていた。
今俺はこんなことをしている場合ではない。
早く入部申請書を取り返して教室で古典の授業を受けなければいけないのだ。

「早く入部申請書をこっちに渡してくれ!」

だが俺はこのときある大事なことを見落としていた。
それはもう大事なことだ。
よく考えてみて欲しい。
俺が先程彼女に何をされたのか……いや、何をしてしまったのかを。

「早坂君、そんなに入部したくないのかしら?」

椎名えりはスマートフォンの画面が俺に見えるように前へと突きだす。
そんな彼女が持つスマートフォンの画面には俺が彼女の胸をあれやこれやする光景が綺麗に写っていた。
それはもう最近の技術はここまで進歩しているのかと心の中で思う程には綺麗だった。
違う、そうじゃない。

「卑怯だぞ……」
「安心して頂戴、今後退部したいと言わない限りあなたには輝かしい未来が待っているわ」

椎名えりは無表情のままガッツポーズを決めるがちっとも安心出来ない。
それはそうだ、彼女のスマートフォンにこの写真が保存されている限り俺は彼女の言うことを聞くしかないわけだからな。
これで俺は正式に椎名えりの管理下に入ってしまったわけだ、やられた。

「分かった……入部する」
「歓迎するわ」
「納得は出来ないが仕方ない……ちなみに俺が入ったのはどんな部活だ?」

そう、例え半強制的に加入させられたとしてもこれだけは知っておかねばならない。
俺が一体どんな部活に入れられてしまったのかを。

「それは愛と正義に溢れた楽しい部活よ」
「だからそれどんな部活!?」

聞いてみたがよく分からなかった。
ちなみにそのまま愛と正義に溢れた楽しい部活というのが部活名らしい。
活動内容は実際にやってみる他、知る方法がなさそうだ。

まぁ今は一先ず教室に戻って古典の授業を受けてくるとしよう。
それと昨日パクられた教科書もあとで返してもらうとしよう。

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