初恋と純愛のそばで(落ちた愛)

hana_imiss

短編、完結




15歳の春。運命の出会いをした。

同じ部活にいるあなたは
背も小さくて、みんなのいじられキャラ。
ガヤを飛ばすのが得意で
黙っていることを知らない。              

いつものように
「俺、お前より身長大きいから」
と自慢げに話しかけてきた。

その頃には私はもうあなたに恋をしていて
そんなことないよ、と背比べをするために
隣に立つのがドキドキしてたまらなかった。       

部の連絡係のあなたと
マネージャーをしている私。
連絡を取っているうちに
他愛もない会話で連絡を取り続けるようになった。    

初めて2人で会った日には
朝から日が沈むまで語り合った。
ただ隣でスポーツバッグを枕にして
寝転がっているあなたと
少し緊張しながら背筋を伸ばしている私。        

あなたの隣にいると
胸がムズムズするけど
その違和感がなんだか居心地がよかった。

それから付き合うことになって
夏、秋を超えて冬が来た。               

両親が家にいないから、って
夜2人で会う約束をした。

以前から少しエッチな話をしていて
やっとタイミングが合った日。

誰がコンドームを買いに行くか
じゃんけんして決めたよね。
お互い恥ずかしくて
でも、着けないとっていう義務感には囚われていて。

負けた私に本当に買いに行かせたのは
今でも笑っちゃう。                  

見つめ合ってキスをして
ぎこちなく服を脱ぎ合って
初めて肌が触れ合って
あなたの温もりを感じた。               

すごく嬉しくて、でも恥ずかしくって。
そんななんともいえない感情に
2人で笑い合って。

優しく胸を触って
「大丈夫?」と確認しながら
ゆっくりと下に手が降りていった。                    

初めては痛いって聞いていたけど
本当に怒ってしまいそうなくらいに痛くて
気持よさはあまり感じられなかった。

でも心だけはなんか幸せでほっこりしていて。      

時間が経つにつれて
身体を重ねることへの特別感が減っていった。
当たり前、のような。

気持よさも覚えたし、
あなたの手も私の感じる場所を分かっていて。
ただ、最初と違うのは
あなたが少し意地悪になって
私が欲しい、というまで
挿入れてくれない。                  

焦らされながら
肝心なところには触れてくれず
潤んだ目で見つめても
「ん?」と言葉を求められる。

支配されるのが好きな私は
それがちょうどいい。
あなたの手のひらで転がされているような
俺だけを感じろよ、と言いたげな仕草が
たまらない。                     

ただ時間が経つごとに
身体を重ね合わせても
心がすれ違うことが増えて
私たちは5年の月日に終止符を打った。         

それから連絡も取ることもなく
1年が経った。
久しぶりに連絡を取り、会うことになって
あなたは手を広げて私を迎えに来た。
素直に飛び込んでいけなかった私。           

あの時飛び込めなかったからかな、
2人はもう戻ることはなくて
でも半年に一度の頻度で
身体を重ね合わせるようになった。

あの5年を忘れられなくて
求められればすぐに身体を許してしまう
私が悔しかった。                   

別れてから4年半。
そんな関係を続けていた2人。
もう何度も終わりにしようって決心しては
すぐに崩されてしまっていた。

就職のタイミングで上京し
顔を合わせる頻度が減って
私はあなたの連絡先を消し、
そのまま忘れていくはずだった。            

でも、その半年後
なぜかあなたも上京してきて

その日私は好きなバンドの
インスタライブを見ていた。
急に画面が変わって
見慣れた名前が現れた。            

あなたからの電話を出るか迷っている頭とは裏腹に
私の指はすぐに通話ボタンを押していた。
時刻は22:34。                    

久しぶりに聞く声で
「今新宿で飲んでるからさ
地元の友達もいるし顔出せよ」と告げた。
こんな時間から行けば終電で
帰るのなんてありえない。
でもあなたに会いたくなった私は
一生懸命自分に言い訳をしながら
電車に乗り込んでいた。                

東南口の改札前であなたは1人で
私を待っていて
会った瞬間にあなたは腰に手を回してきて
「まだ俺のことすき?」と聞く。

こうやって会いに来てる時点で
答えなんてばれているはずなのに、
そんなわけないじゃん、と返す私。
本当に可愛げがないなぁ。               

友達はもうすでに帰っていたみたいで
2人で居酒屋へ向かう。

その日はお酒をたくさん飲んだ。
もうあなたの知っている私じゃないんだよ、
こんなにお酒が飲めるようになったんだよ、
と子どもみたいにアピールをした。           

2時間くらい飲んだ後、
「帰ろうか」と言い店を出ると
そこにはもうタクシーが待っていて
あなたの家へ向かう。

飲んでいる間にタクシーを手配できるようになっているなんて、
昔では考えられない。                    

アパートの前でタクシーを降り
部屋へ向かう。
そのままベットへ腰かけあなたは私の服を脱がした。

私はワンピースを着けていて
ノースリーブなど着けておらず、
すぐに下着が露わになった。              

「俺に抱かれたかったの?
すぐ脱げる準備してきてるじゃん」
と笑うあなた。

そんなつもりはなかったけれど、
あなたの言葉に反応して身体が火照り始めた。      

キスをして、髪を撫でる。
胸を触り、少し焦らしながら
乳首まで手を伸ばす。
そしてすぐに下を愛撫し始める。

あなたは前戯に時間をかけないから
すぐに挿入ってきた。

あぁ、と声が漏れてしまう私。             

気持よさを堪能していたところで
あなたが「あやこ」と呟いた。
私の名前は、はな、だ。

あなたはすぐに謝り
「なんて呼ばれたい?」と聞いてきた。

なんだか笑えてきて
今更それはないでしょ、と思いながら
なんでもいいよ、と答える私。             

あなたの腰の動きが止まるのが面白くなくて
腰をグイっと引き寄せた。
その合図に激しく動き出す。

対して気持ちよくもないけれど
とりあえず声を出してみる。

あぁ、んっ

彼がイき、無事行為が終わった。            

なんだもう身体ですらも
相性合ってないじゃん、
と冷めた考えが浮かんでいた。             

朝起きて服を着る。
駅まで送ってくれるあなた。
隣に並ぶ私。

改札口で「またね」と手を振るあなたに
またね、と返す。                   

もう全部が終わってしまった。
あの運命の出会いは
ただの通過点だったのかもしれない。

最後に「あやこ」になりたかったな、と
思いながらお家に帰って1人で泣いた。          

あなたが気持ちよくしてくれないから
私は私を気持ちよくさせて
眠りについた。 

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