差金の蝶々〜奈落〜

えだまめすずめ

四段目






夜中の高速道路は神経を使う



3時間ほど走ってSAで休憩することにした。



まだまだ道のりは長い



ほんの少し仮眠を挟んで

トラックの間をしずしずと走り抜ける



AM6:58



急なナビへの着信に体を震わせる。



その相手は母親だった。



忙しく喋る母親に押されるのは日常である




あんたもう祥太ちゃんと一緒に着いてるから

早くこっち来ないと…




祥太。15歳になる息子。


離婚して8年になるが

時々俺が出てる公演を観にくるのだ



しかも母親曰く、何が重要な話があるそうだ。



妙に嬉しそうなのが薄気味悪い。





トンネルをいくつも抜け


気がつくともうダイレクトに陽が差す頃だった




AM9:26



光と影の街、京都に着いた



少しの荷物を持ってオートロックを解除し


無機質な鉄の箱で三階へ導かれる






彼女はまめ毱。本名は麻里だ。



こんなところで言うのもなんだが


その名の通り真絹でできた鞠のように美しい








しかし今は






他の人の手の内で

楽しそうに遊戯をしている最中のようだ









まだ流石に早すぎたか。






飛ばしすぎた車に荷物を置き

歩いて街を散策する




再来月にはまた来る劇場も

未だ招き看板も上がっていない



川の音が心地いい





毎年お世話になるカレー屋に寄る




あーら、うのちゃん



気さくなお母さんは

俺の人生のほとんどを知っている



突然の訪問に深い訳を感じたようだ




ほんまなー、うのちゃんは

人選びのセンスないなぁ!

もしまた彼女できたら

ちゃんと私の言うこと聞くんやで。




レジ前でケタケタと笑うお母さんは

まめ毱のことを良くは言わなかった。



人生経験豊富なお母さんには

分かる節があるのだろう




碁盤の目を通り抜け
先ほどのマンションに入る





あら、よう来はったなぁ





笑顔で迎える彼女の

その京言葉が重苦しく感じた













コメント

コメントを書く

「現代ドラマ」の人気作品

書籍化作品