夏の奇跡

Angel Naoko

    過ぎゆく日々 (2)

4月7日 月曜日

私ももう高校3年。
去年は色々とあったけど、今となってはすでにいい思い出なんだ。
そして今日。
一丸いちまるにとってもいい1日。







弥生は、白いふわふわの仔犬を1匹抱っこしながら言った。

「きゃ〜。可愛い〜。ねぇ、流哉りゅうや君。」

弥生が流哉の方を振り向くと、流哉はもう1匹の茶色のふわふわの仔犬を抱きあげながら言った。

「一丸に似てないな。やっぱり、嫁さん似だ。」

流哉の言葉に弥生は、椅子に座って一丸を抱っこしている涼子りょうこの方を見て言った。

「ちょっとひどすぎー。ねっ、お母さん。一丸にも似てて可愛いよね?」

涼子は頷きながら、一丸を自分の目線に持ち上げて笑いかけながら

「だって、うちの家族ですもの。ね〜?一丸。」

と言った。
一丸は、ワン!とひと吠えすると、尻尾を振りはじめた。
一丸は涼子から下に下ろしてもらうと、弥生の方を見て流哉を見た。
弥生は、一丸のその一連の動作を見ると、笑い出した。
流哉はその様子に、呆れ顔で一言呟いた。

「なんなの。この人達・・・。」







6月3日 火曜日


今日は、しずくとショッピング。
もちろん大樹ひろき君も。
雫に言わせれば、荷物持ちにもってこい!だって。
目的は、それぞれの洋服。
私はそこにプラスして一郎さんへの誕生日プレゼント。
大奮発して、腕時計。
変だと思われるけど、いいんだ。これで。

一郎さん、お誕生日おめでとう!

帰りは3人で、カラオケへ行ったり、夕飯食べたり、楽しい1日だった。
帰るのが遅くなって、お母さんに怒られたけど、珍しく流哉君が助け舟を出してくれた。


ありがとう、流哉君。


そうそう、お土産にゴールキーパー用のグローブ買ってきたよ。










7月20日 日曜日


今日は、ちょうどあの日から1年経った日。
去年の今日は、リビングで一郎さんを流哉君と錯覚した日。
あの日は、びっくりしたよ。
いつも通り家の事を済ませて、受験勉強している。
ちょっと、つまんない。
でも、そのつまんない日を癒してくれる一丸の子どもたち。
スクスクと育って、めちゃくちゃ可愛い!
あれから、クラスメイトが2人一丸の子どもが欲しいと飼い主になってくれた。
子どもたちも2匹になり、今では一丸とお嫁さんの二葉ふたばちゃんと子どもたち2匹、あっ、名前ははなちゃんとかおる君の計4匹。
それでも結構賑やかなんだ、散歩の時。
そして、夕方雫から嬉しいお誘いの電話があった。
今年の自衛隊のお祭りの花火が私の誕生日!


今からとっても楽しみ!








弥生は、受験勉強の合間に一丸の子どもの華ちゃんと薫君と遊び、流哉と一緒に4匹を連れて散歩に行っていた。

「ただいま〜。っと、やべぇ〜、涼しい〜。」

散歩から帰宅して流哉は、冷房が効いてるリビングに入るとすぐにソファーに座った。

「流哉君、一丸のリード外してよ。もう。」

「はいはい。来いっ、一丸。」

一丸は尻尾を振って、リードを引きずりながら流哉のところへ走った。
弥生は涼子と一緒に、二葉・華・薫のリードを外して、ソファーに座った。
一丸家族は、みんなで仲良く水を飲んでる。
その様子を見てる弥生のスマホに、LINEの着信音が鳴った。
弥生がLINEを開くと、雫からだった。


【ハロー!弥生、元気?受験勉強のし過ぎで、疲れてない?】

弥生は、クスッと笑うと雫に返事を送った。

【大丈夫。息抜きに、一丸家族の散歩に行ってきて、今帰ったところ。雫は元気?】

【私は至って元気!そうそう!息抜きと言えば、さっき大樹と話してたんだけど、今年も自衛隊のお祭り行こうかって!受験勉強の息抜きに。弥生も行こう!】

【うん。ありがとう。私も行くよ。思い出の場所だもん。・・・で、いつ?】

【うん。それがね、今年は8月2日と3日!
3日に行こ!花火の日だよ!!】

【えっ!本当?凄い!行く!絶対!】

【私も大樹も、びっくり!楽しみだね〜!じゃ、3日にね。おやすみ。】

【うん!3日にね。おやすみ。】

弥生は、雫とのLINEを終えると、スマホを抱きしめて喜んでいた。

(去年一郎さんと出会った日が、花火の日だなんて。去年の事だけど、嬉しい。)

弥生は2階の自室に行き、スケジュール帳の8月3日に丸を書いた。
そして、その下の欄に

自衛隊のお祭り 花火

と書いた。



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