夏の奇跡
Diary4 別れ (1)
海の家の奥にある穴場まで、大樹の後について、雫、弥生、一郎が歩いて行くと、そこはあまり人がいなく、先ほどまでの賑やかさが嘘のように静かな砂浜に着いた。
しかし周りには、ゴツゴツした岩があって、小さな子どもたちには危険な場所も見えた。
辺りを見渡しながら雫は言った。
「本当!すっごい穴場ね。大樹、ナイス!さっ!泳ぎましょ。」
「だろっ?マジでいい情報聞いた!弥生どうする?俺と雫は泳いでくるけど。」
大樹は荷物を降ろしながら海を見てそう言うと、弥生の方を向いた。
弥生は、一郎と一緒にレジャーシートを敷くと、微笑みながら
「私はここで待ってるよ。・・・あ!ううん、お昼買ってくる。だって、もうすぐお昼だもんね。みんな、何がいい?」
そう言うと、バッグからお財布を出した。
すかさず雫と大樹は同時に言った。
「「焼きそば!!」」
2人の様子を見て、弥生と一郎は顔を見合わせると笑った。
雫と大樹もお互いに顔を見ると、あははとから笑いをした。
弥生は、さてとと言って立つと
「じゃ、行ってくるね。」
とみんなの方を向いて微笑んだ。
笑顔だった一郎は、不意に真剣な顔つきになったが、すぐに笑顔に戻ると言った。
「弥生は荷物番してて。僕が買ってくるよ。」
弥生は首を横に振ると、
「ううん。私買ってくる。いつもみんなに心配かけさせちゃってるし、助けてもらってるから、そのお礼がしたいの。じゃ、行ってきます!」
そう言い、今来た道を戻る形で海の家へ向かって歩きだした。
弥生の後ろ姿を見送ると、雫は一郎の方へ言った。
「すみません、一郎さん。荷物番させちゃって。」
「いや、いいんだよ。ちょうど疲れてきたところだし。さっ、泳いでおいで。」
「ありがとうございます!じゃ、行こうぜ!雫!」
大樹はそう言うと、雫と一緒に砂浜を走って行った。
大樹と雫の後ろ姿を見ていた一郎は、憂いを帯びた瞳になると呟いた。
「・・・今日か・・・」
弥生は海の家を経営している明るいおばちゃんから、おまけとしてジュースを4本貰っていた。
「あ、ありがとうございます。」
「いいのよ。さっきの万引きを教えてくれたお礼。だから、気にしないで〜。」
おばちゃんはそう言うと、再び焼きそばを焼き始めた。
そう、弥生がちょうど海の家に着いた時、茶髪で髪の長い男がジュースを何本か万引きしていたのである。
運悪くおばちゃんは、後ろを向いて足りなくなった食材を出していた最中であった。
そこで弥生が大声で万引き!と叫び、男が逃げたところに、ちょうどパトロールしていた水難救助隊に捕まったのである。
しかし、優しいおばちゃんは万引きが初めてという男を許していた。
弥生は、おばちゃんからもらったジュースが入った袋を覗いて、思わぬ贈り物にニッコリして、焼きそばとジュースを持ち直すと、海の家を出て、穴場へ戻り始めた。
暫く歩いていると、ふと後ろから足音が聞こえてくる。
誰かにつけられているような、以前に似たような事を思い出した。そう、運命のあの日。
弥生は笑顔で振り向いた。
「一郎さん?」
しかし、そこには一郎ではなく、万引きした男がいた。隣には、仲間らしき男2人。
万引きした男は、口元を歪ませて笑うと言った。
「イチローさんじゃなくて、悪かったな。お前だろ?大声で万引きとか叫んだの。」
弥生は恐怖のあまり声が出なかった。
下を向いて、首を横に振った。
不意に、他の茶色のサングラスをシャツに掛けた男は弥生の腕を掴むと、睨みつけながら言った。
「嘘言うなよ。お前、あの海の家のババアから礼なんか貰ってたじゃねーかよ。」
弥生は、ずっと下を向いていた。
早く逃げなくちゃ。そう思っていると、あの万引き男が言った。
「その袋の中のもの全部よこせば帰してやる。どうだ?それで取り引きしようじゃないか。」
弥生は、ジッとしたまま下を向いていた。
一郎、雫、大樹は弥生の帰りが遅いのに気づき心配していた。
ひととおり荷物もまとめていた。
「よし!探しに行こうぜ!」
大樹はそう言うと、荷物を持って立ち上がった。
しかし、一郎に抑えられた。
「大樹君は、雫ちゃんとここで待っていてくれ。もしかしたら、弥生がここに戻ってくるかもしれない。だから・・・。」
一郎はそう言うと、寂しい笑みをした。
その一郎の様子に、雫が聞いた。
「一郎さんは・・・?」
「うん。弥生を探しに行ってくるよ。」
一郎はそう言うと、一度瞳を閉じ何かを考えると、瞳を開け雫と大樹を見て再び話し始めた。
「本当の事を言うと、僕はこの世に存在しないんだ。」
一郎の口から紡ぎ出された言葉に、雫と大樹は顔をこわばらせた。
しかし周りには、ゴツゴツした岩があって、小さな子どもたちには危険な場所も見えた。
辺りを見渡しながら雫は言った。
「本当!すっごい穴場ね。大樹、ナイス!さっ!泳ぎましょ。」
「だろっ?マジでいい情報聞いた!弥生どうする?俺と雫は泳いでくるけど。」
大樹は荷物を降ろしながら海を見てそう言うと、弥生の方を向いた。
弥生は、一郎と一緒にレジャーシートを敷くと、微笑みながら
「私はここで待ってるよ。・・・あ!ううん、お昼買ってくる。だって、もうすぐお昼だもんね。みんな、何がいい?」
そう言うと、バッグからお財布を出した。
すかさず雫と大樹は同時に言った。
「「焼きそば!!」」
2人の様子を見て、弥生と一郎は顔を見合わせると笑った。
雫と大樹もお互いに顔を見ると、あははとから笑いをした。
弥生は、さてとと言って立つと
「じゃ、行ってくるね。」
とみんなの方を向いて微笑んだ。
笑顔だった一郎は、不意に真剣な顔つきになったが、すぐに笑顔に戻ると言った。
「弥生は荷物番してて。僕が買ってくるよ。」
弥生は首を横に振ると、
「ううん。私買ってくる。いつもみんなに心配かけさせちゃってるし、助けてもらってるから、そのお礼がしたいの。じゃ、行ってきます!」
そう言い、今来た道を戻る形で海の家へ向かって歩きだした。
弥生の後ろ姿を見送ると、雫は一郎の方へ言った。
「すみません、一郎さん。荷物番させちゃって。」
「いや、いいんだよ。ちょうど疲れてきたところだし。さっ、泳いでおいで。」
「ありがとうございます!じゃ、行こうぜ!雫!」
大樹はそう言うと、雫と一緒に砂浜を走って行った。
大樹と雫の後ろ姿を見ていた一郎は、憂いを帯びた瞳になると呟いた。
「・・・今日か・・・」
弥生は海の家を経営している明るいおばちゃんから、おまけとしてジュースを4本貰っていた。
「あ、ありがとうございます。」
「いいのよ。さっきの万引きを教えてくれたお礼。だから、気にしないで〜。」
おばちゃんはそう言うと、再び焼きそばを焼き始めた。
そう、弥生がちょうど海の家に着いた時、茶髪で髪の長い男がジュースを何本か万引きしていたのである。
運悪くおばちゃんは、後ろを向いて足りなくなった食材を出していた最中であった。
そこで弥生が大声で万引き!と叫び、男が逃げたところに、ちょうどパトロールしていた水難救助隊に捕まったのである。
しかし、優しいおばちゃんは万引きが初めてという男を許していた。
弥生は、おばちゃんからもらったジュースが入った袋を覗いて、思わぬ贈り物にニッコリして、焼きそばとジュースを持ち直すと、海の家を出て、穴場へ戻り始めた。
暫く歩いていると、ふと後ろから足音が聞こえてくる。
誰かにつけられているような、以前に似たような事を思い出した。そう、運命のあの日。
弥生は笑顔で振り向いた。
「一郎さん?」
しかし、そこには一郎ではなく、万引きした男がいた。隣には、仲間らしき男2人。
万引きした男は、口元を歪ませて笑うと言った。
「イチローさんじゃなくて、悪かったな。お前だろ?大声で万引きとか叫んだの。」
弥生は恐怖のあまり声が出なかった。
下を向いて、首を横に振った。
不意に、他の茶色のサングラスをシャツに掛けた男は弥生の腕を掴むと、睨みつけながら言った。
「嘘言うなよ。お前、あの海の家のババアから礼なんか貰ってたじゃねーかよ。」
弥生は、ずっと下を向いていた。
早く逃げなくちゃ。そう思っていると、あの万引き男が言った。
「その袋の中のもの全部よこせば帰してやる。どうだ?それで取り引きしようじゃないか。」
弥生は、ジッとしたまま下を向いていた。
一郎、雫、大樹は弥生の帰りが遅いのに気づき心配していた。
ひととおり荷物もまとめていた。
「よし!探しに行こうぜ!」
大樹はそう言うと、荷物を持って立ち上がった。
しかし、一郎に抑えられた。
「大樹君は、雫ちゃんとここで待っていてくれ。もしかしたら、弥生がここに戻ってくるかもしれない。だから・・・。」
一郎はそう言うと、寂しい笑みをした。
その一郎の様子に、雫が聞いた。
「一郎さんは・・・?」
「うん。弥生を探しに行ってくるよ。」
一郎はそう言うと、一度瞳を閉じ何かを考えると、瞳を開け雫と大樹を見て再び話し始めた。
「本当の事を言うと、僕はこの世に存在しないんだ。」
一郎の口から紡ぎ出された言葉に、雫と大樹は顔をこわばらせた。
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