十刻の魔物使い

黒良シキ

十八話 セイレン領


 なんで、もう着いてるの?
 ラルはどれだけの速さ出してたの?
 僕死んでても本当におかしくないよ。
 だって歩きで1日と半日はかかる距離なのに数秒で着いたんだから。

(ラル? どんだけスピード出したの?)

(その、主人の役に立ちたくて思いっきり走ってしまいました。)

(僕の為にしてくれたのは嬉しいけど、力の加減を考えてね。)

(はいです。主人。)

 ラルも反省してる様だし、これくらいにしておこう。

 でも、不幸中の幸いというか、止まった場所が門から少し離れていてよかった。
 もし、もう少し近くまで行っていたら、門番に見られて大変な事になってただろう。
 まぁ、僕もリーナも無事だし、ここからは歩いていくか。

「リーナ、ここからは歩いて行こう。」

「はっ、はい。で、でも、レイクしゃまひとつ伺いたいのでしゅが、いいでしょうか?」

「うん。いいよ。」

「レ、レイクしゃまがとても真剣な顔をしていらっしゃったので、しゅこし待っていたのでしゅが、なぜもうセイレン領に着いてるのでしゅか。」

「ゲッ…」 

「レ、レイクしゃま、あからしゃまに嫌そうな顔をされると傷つくのでしゅが………」

「あっ、ごめん。別に嫌とかじゃないんだけど、少し問題があってね。」

「問題でしゅか?」

 どうしよう。
 もう、流石に隠すのは厳しいか。
 いずれはバレる事だから特に問題はないだろうけど、こんなに早くラルの事を明かす時が来るとは思いもしなかった。

「まぁ、この際だから話すよ。」
「ラルは神種の狼なんだよ。」


「し、し、し、しゅんしゅゥゥゥ?!」

 リーナは再び気絶した。




10分後



「おーい、リーナ!」

「はっ!わ、わたしは」

「リーナは驚いて気絶しちゃったんだよ。」

「気絶でしゅか。」

「た、確か私はラルが神種だと聞いて………ってラルが神種って本当でしゅか?」

「本当だよ。」

「そ、そんな、信じられましぇん。」

「リーナがそう思うのも無理は無いけど、本当のことなんだよ。」

「そうでしゅか。」

「まぁ正確な話は後にして、まずセイレン領に行こう。」

「はっ、はい。」


 僕達は再びセイレン領に向かい始めた。
といってももう目の前なのですぐに着いた。
 門では門番に冒険者カードを見せて、ラルは使い魔紋を見せて通った。
 ここはイラント町というらしい。
 この町も含めてセイレン領は漁業が盛んだ。
 なので、ここの海鮮料理は絶品らしい。
 まぁ、食旅ではないからメインは戦う事だけど、こういうご褒美があると思うだけでも気分が変わる。

 取り敢えず僕達は冒険者ギルドに向かった。
 冒険者ギルドはとても賑わっていた。
 僕達は依頼のある所へ向かうと、討伐依頼を選んでいた。
 ここは海沿いの町だから海の魔物の討伐依頼もあるみたいだ。
 選んでいる間なんだか視線を感じたけど、まぁいいか。
 せっかくなのでリザードマンの討伐依頼を受けた。
 これはDランクの依頼だけど、Fランクが2人いれば受けれるみたいだ。
まぁ、本当は1人Sランクなんですけど。

「お前さん達、見かけない顔だな。どこから来たんだ?」

 僕達が冒険者を出ようとしていると後ろから声をかけられた。

「僕達はアルカーナ領から来ました。まだ、この町には無知なのでいろいろ教えてくださると嬉しいです。」

「そうか。それなら遠慮なくバンバン頼ってくれ! 俺は名前はグランだ。」

「ありがとうございます。僕はレイクです。そして、横にいるのはリーナです。」

「そうか。2人ともよろしくな!」

「こちらこそよろしくお願いします。」

 グランさんはとてもいい感じの人だった。
 この人とはこれからも付き合っていけそうだ。

「グランさん、そのさっきからずっと視線を感じるんですけどどうしてですか?」

 僕もリーナも服は冒険用の服を着ているし、特に視線を集める理由はないと思うんだけど、なぜかさっきから視線を感じる。

「いや、それはその狼だと思うぞ。普通テイムした魔物を中には入れないからな。」

「そうなんですか?」

「ああ。」

 思えばギルドの横に小屋見たいのがあった。
 あそこに使い魔を入れとくのか。
 でも、別に一緒にいてダメな訳ではないからこのままでいいか。
 僕はグランに挨拶をすると冒険者ギルドを後にした。








































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