十刻の魔物使い

黒良シキ

十話 冒険者に憧れて


 あれから約1年が経った。
 その間は特に何も無く、いつも鍛練をしたり勉強をしたりしていた。
 ラルは……特に変わってない。
 しいて言うなら、少し体毛が伸びたかな。
 思ったら魔物とかってどうやって毛を剃るのだろうか?
 魔物が自分で毛を剃りはしないだろう。

「ラル〜」

(主人。なんですか?)

「ラル、いや魔物って毛とかどうやって剃ってるの?」

(毛ですか? 自分は精霊に剃ってもらってますが、他の魔物がどうしているのかは知りません。)

(いや、どんな優遇!)

(でも、具体的にどう剃ってもらってるの?)

(風の精霊に風魔法で剃ってもらってます。)

(そ、そうなんだ。)

 まぁラルは神狼だから待遇もそれなりか。
 僕は納得すると身支度をした。
 今日は父様の領地を観光するのだ。
 この近くは何回か回ったのだが、今回行く所は領地の端の方なので、まだ行った事がないので楽しみだ。

「レッ、レク、レイクしゃま!その、馬車の用がっ、用意が出来ました。」

「分かった。今行くよ。」

 僕は頼りないメイドのリーナが呼びに来たので、ラルと一緒に馬車に向かった。


「楽しみです! 父様。」

「そうか。それはよかった。でも、今日父さんは少し用事があるからリーナと一緒に観光してくれ。」

「そうですか。少し残念ですが、分かりました。」

「ごめんな。レイク。」

「いえ。」



 馬車に乗る事1時間………


 僕は商業が盛んな町、デーリンに着いた。
 ここは商業が盛んなだけあって、馬車が多い。
 後、商業が盛んなので、それを求めて人も多く集まっている。
 デーリンの冒険者ギルドは父様の領地のギルドの中で、1番大きいらしい。
 なので、冒険者も多い。
 冒険者ギルドは僕の今日の目的の1つだ。
 最近、僕は冒険者に興味を持っている。
 今日はこの町の冒険者ギルドを見てみたかったのだ。


 僕は父様と別れると、早速冒険者ギルドへ向かった。
 冒険者ギルドはとても大きかった。
 僕は冒険者ギルドに入ると、酒場の椅子に腰をかけた。
 今日はただ冒険者を観察するだけだ。
 その後は特にする事もないので、適当にぶらぶらしようと思う。


 今は昼間なので、冒険者ギルドはとても賑わっている。
 冒険者達はクエストを受注したり、パーティーを組んだりしている。
 僕の想像していた冒険者となんら変わりはない様だ。
 僕はもう特にやる事がないので、冒険者ギルドを後にしようと席を立った。

 すると、僕の方に1人のいかつい冒険者が近づいて来た。

「おい、そこの少しいい服着てるちび!そのメイド女を置いていけば見逃してやる。」

「あっ、」

 僕は話そうとしたリーナを手で制し、その冒険者に話しかける。

「すいません。誰ですか?」

「俺の事を知らないとはいい度胸だ。俺はCランク冒険者のミールクだ。」

「乳臭い名前のあなたに用はないのでどっか行ってください。」

 レイクはミールクを挑発する。
 レイクはこの手の人間がとても嫌いなのだ。
 自分しか考えない自己中な外道が。

「あんっ? テメェ今なんて言った?」

「乳臭いあなたは引っ込んでてくださいと言いました。」

「テメェ、ぶっ殺してやる!」

 男は腰に付けていた剣を抜いて切りかかって来た。

(主人、自分が!)

(ああ。)

 僕の前にラルが飛び出る。

 カキンッ

 しかし、ラルが受け止める前に剣は止まった。
 それもそうだろう。
 剣は僕の隣にいたリーナが短剣で受け止めていたのだ。
 それも片手で。

「えっ、リ、リーナ!?」

 僕は突然の事に驚きを隠せない。

「ちっ、女のくせに中々やるじゃないか。」

「でも次で終わりだ!」

「オラァー!」

 男が再び切りかかってくる。
 しかし、男は少しすると気絶した。





















「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く