十刻の魔物使い
二話 レイクの決意
僕は朝起きて食事を済ますと、鍛練をする。
魔法に負けない体術を磨く為に、毎日欠かさず腹筋、腕立て、ランニングをした後、この家の護衛の騎士と立ち合いをしている。
僕はこれを6歳の時から今まで2年間行なっている。
もし、普通に魔法を使える子が体術を磨いていたら、親はこう言うだろう。
「体術などせずに、まず魔法を磨きなさい。」と、でも僕は魔法が使えないから体術を磨く。
でも、体術を磨いても磨いても、まだ魔法には敵わない。
これはこの世界では一般常識だ。
でも、僕は諦めない。
稀に役職を知る為に王都の教会へ行くと、今まで適性が1つだった者が3つの適性を本当は得ていた、という話を聞いたからだ。
だから僕はそれを信じて、今自分が出来る精一杯の事をしているのだ。
レイクは鍛練を終えると、少し休憩を取って今度は勉強をする。
貴族の勉強は領地の繁栄や民の信頼を得る方法などなど領主に関わるものだ。
しかし、次期領主は兄様なので、僕はもしもの為に勉強をしている。
僕は勉強を終えると、食事の時間まで魔法に関する本を読んでいる。
この努力が無駄にならなければいいのだが、人生そんな甘くはないか。
レイクは本を閉じると、兄様の部屋に向かった。
部屋に入る前にドアをノックすると「いいぞー」という声が聞こえて来たので、部屋に入った。
兄様は椅子に腰を下ろしてこちらを向いている。
机には様々な書物が置いてある所を見ると、自習していた様だ。
「兄様すいません。勉強中に」
「じゃまになると悪いから出ていきますね。」
「レイクいいからそこの椅子に座ってくれ。」
僕は言った通りに椅子に腰掛ける。
「で、どうした。なんかあったのか?」
「すみません。その、退屈で」
「そうか。なら兄さんが良いもの見せてあげよう。」
「その、兄様の言う良いものとは何ですか?」
「それはな、俺が最近練習してやっと出来る様になった魔法だ。」
「よし、じゃあやるぞ!」
「に、兄様! こんな室内で魔法は危ないですよ!」
「これは攻撃魔法じゃないから大丈夫だ。」
「そうですか。」
「よし、じゃあ気を取り直して」
「精霊達よ、我に集い、我に力を与えよ!」
兄様がそう唱えると、兄様の手からいろんな色の粒が出て来て、部屋中を埋め尽くす。
とても幻想的な空間だ。
今の魔法は精霊魔法、兄様の適性の1つだ。
兄様は適性が5つもある。
これは10年に1人現れるかというレベルだ。
特に兄様はその中でも優秀である。
兄様の使った精霊魔法はまず、適性者が少なく、適性があっても上手く扱える人が少ないのだという。
「どうだ綺麗だろう?」
「はい! とても綺麗です」
「それはよかった。」
「兄様のお陰で元気が出ました!」
「そうか。それはよかった。」
「俺もレイクの笑顔を見て元気が出て来たよ。」
「そんなので元気が出るのですか?」
「もちろん。」
「ではそろそろ失礼します。兄様」
僕はお辞儀をすると兄様の部屋を後にした。
レイクは自分の部屋に戻る途中、兄様の様にならなければと、強く思ったのだった。
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