私の赤点恋愛~スパダリ部長は恋愛ベタでした~
5-4.ひとりの、夜
仕事もプライベートも、順調に進んでいく。
――ただ。
「……出張になった」
ソファーで隣に座る、佑司のあたまをいい子いい子してあげる。
「ニャーソンさん大詰めなのに、竹村サンの尻ぬぐいで北海道出張!?
しかも先方の都合で、土日で!?
ありえねー」
「お疲れ様です」
こればっかりは可哀想としかいいようがない。
竹村課長が確認をしないで適当に、乳業メーカーに生クリームの予定量を言ったりするから。
実際はその半分くらいだったから、準備をしていたメーカーさんも農家さんも激怒するのは当然だ。
おかげで佑司はお詫び行脚の出張へ行く羽目になった。
「それも土曜は朝から行動だから、前入りで金曜からってさ……。
やっとチーと愛し合えると思ったのにー」
「えーっと」
こそっと、内緒話をするように、佑司の耳元へ口を寄せる。
「……来週末。
思いっきりいい雰囲気になるように努力するので、期待していてください」
「ほんとに!?」
がばっと勢いよく起き上がった佑司が私の両手を握りしめ、キラキラした目で見つめてくる。
「はい」
「じゃあ頑張るー」
なんだか匂いをつけるみたいに身体を擦りつけられた。
いや、もしかしたら本当に、マーキングしているのかもしれない。
金曜日。
午後から出発する佑司と、ランチした。
「今日は帰り、タクシー使えよ?
晩メシはケータリング取れ。
あとは……」
朝、出勤するときにも言ったことを佑司は繰り返し、苦笑いしかできない。
「心配しなくても大丈夫ですよ。
タクシーで帰りますし、晩ごはんは適当に済ませます」
「ああもう、チーをひとりにするとか心配ー」
ちまちまとパンを指先ほどにちぎって佑司は食べている。
「大丈夫ですって。
それにマンションのセキュリティもしっかりしていますし」
「……チーは俺がいなくても平気なんだ」
ジト目で、眼鏡の上の隙間から佑司が見てくる。
「平気っていうか、心配しなくても大丈夫って話で」
「俺はチーと離れて二日半も過ごすとか、堪えられる自信ないのに」
「えーっと……」
佑司の手から小ぶりなパンはいつまでたってもなくならない。
いつもなら、三口ぐらいで食べちゃうのに。
「……私も、佑司がいないの淋しいですよ」
顔は見られなくて、お皿の中のトマトパスタを見つめたままぽそっと呟いた。
「そうか!」
落ちた視界の中で、ぱさぱさと幻の尻尾が揺れて動く。
そーっと顔を上げたら、ぱーっと花が咲くように佑司が笑っていた。
「……電話、します」
「俺もする」
「早く帰ってきてくださいね」
「わかった」
まるで永の別れのようだが……明後日には帰ってくるのだ。
なんでこんなことをしているのか、ちょっとおかしくなってきた。
お店を出ると、手を掴まれた。
「ちょ、ダメですよ!
会社の近くですよ!」
「俺が繋ぎたいから繋ぐ」
強引に指を絡め、離れなくしてしまう。
はぁっ、ため息をつきつつもおとなしく手を繋いで歩いた。
繋いだ手が楽しそうに上下に揺れる。
ややもすればこのままダンスすら踊りだしそうだ。
「いってらっしゃい」
一緒に、地下の駐車場に下りる。
こんなに早い時間に行く必要はないのだが、佑司は午後休を取っていた。
『だってこのスケジュールじゃ、チーにお土産買う時間がない。
だから金曜、早めに行くんだ』
昨日、荷造りしながらそんなことを言っていた。
それに土日仕事なんだから半日くらい休んだって罰は当たらないだろ、って。
それならいっそ、一日休んで朝から行ってゆっくりしてきたらって言ったんだけど。
『チーと離れる時間は少しでも減らしたいだろ』
だって。
「いってくる」
窓を開けた運転席から、佑司は私の手を掴んで離さない。
レンズの向こうから私を見つめる、少しだけ濡れて光る瞳。
周りに誰もいないことを確認して――ちゅっと軽く、唇を重ねた。
「チーがキスしてくれた!」
ぽぽぽん! と佑司の周りで花が咲く。
これで納得してくれたかな、と思ったんだけど。
「でも足りない」
私の手を掴んでいた手が首の後ろに回って引き寄せる。
重なった唇、入ってきた熱いそれ。
薄暗い地下駐車場に甘い吐息が密やかに響きだす。
唇が離れ、頬に触れた手の親指が、唇をなぞった。
「……チーも充電池にして持ち歩けたらいいのに」
「……なんですか、それ」
「だっていま満タン充電したけど、切れたら困るだろ。
帰るまで充電できないんだから」
佑司は眼鏡の下の眉を寄せ、真剣に困っている。
そういうのはおかしくて、くすりと笑いが漏れた。
「充電切れそうになったら電話してきてください。
それで少しは、補充できるでしょう?」
「声だけだと淋しくて、もっと電池減るかも」
「じゃあ、ビデオ通話!
ビデオ通話してください」
「触れないからもっと減るかも」
なんだこのだだっ子は?
私を困らせて楽しいか?
「そうだ、チーも一緒に出張、行けばいいんだ!
そうだよ、最初からそうしとけばよかったんだ。
どうせ、休みの土日なんだし」
「ゆーじー」
「ひぃっ」
手が勝手に、佑司の胸ぐらを掴む。
おかげで彼は小さく悲鳴を上げた。
「たった二泊三日なんです。
明後日には帰ってくるんです。
それに私はいまから、佑司から頼まれた仕事をしなきゃいけないんです。
つべこべ言わずにさっさと行けっちゃ」
「は、はいっ」
ぱっと私が掴んでいたシャツを離し、佑司はようやくエンジンをかけた。
……ちょっぴり涙目になっていたけど。
「気をつけて」
「いってきます」
笑って、彼を見送る。
車が見えなくなってはぁーっと大きなため息が出た。
やっぱり、佑司はTLヒーロー様だ。
やることが全く一緒。
でも最近はそれが、少し面白くもある。
「どーでもいいけど、今日は残業コース分仕事置いていったって覚えてないのかな」
午前中、あれもこれもと佑司は私に仕事を命じてくれた。
もしかして無意識に、残業させたかったのかもしれない。
そうすれば私が、誰かと食事に出かけるなんてできなくなるから。
「そんなに心配しなくても……って、心配させるようなこと、したんだけど」
これは自業自得でもあるので仕方ない。
明日は出かける予定にしているし、早く終わるように頑張ろう。
終業時間が過ぎ、予想通りに残業へ突入する。
「八木原、残業か?
今日は旦那がいないんだから、ほどほどで帰れよ」
ばしばしと私の肩を叩く、丸島係長をじろりと睨みつける。
「……まだ旦那じゃないです」
「まだってことはいずれそうなるんだろ。
じゃ、お先」
ひらひらと手を振りながら彼は帰っていった。
ほんと、煮ても焼いても食えないおやじだ。
「……まだ」
自分の言った言葉を反芻してみる。
なんで全面否定じゃなくて〝まだ〟なんて言ったんだろう。
たまたま?
それとも――私の、願望?
気分転換にコーヒーを淹れようと席を立つ。
戻ってきて携帯を確認したら佑司からいくつもNYAINと着信が入っていた。
慌てて携帯を掴み、部屋の外へ出る。
――プル、プッ。
『なんで俺からの電話に出ないんだ!』
ワンコールも鳴らないうちに出た佑司が、電話の向こうから怒鳴ってくる。
「だって携帯、バッグに入れっぱなしなので……」
これは怒られることなのか?
ちゃんと仕事中は公私を分けているのに。
『なにが欲しいかわからないから、適当に送ったぞ。
カニだろ、鮭だろ、ジャガイモにタマネギ、にんじん、アイスクリームとチーズケーキ、チョコレート、スープカレーの素に……』
「ちょっと待ってください!
どれだけ送ったんですか!?」
『さあ?
チーに食べさせたいと思ったの、全部送ったからな』
あたまが痛い。
私と佑司しかいないのに、そんなに食べきれるはずがない。
「もうちょっと、考えてですね……」
『チーとふたりで来れば、こんなに送らなかったんだ』
「はい?」
なにが言いたいのか、ちょっと理解できない。
『チーとこれも一緒に食べたかったな、きっとチーと一緒だったら美味しいのにって考えたら、全部送ってた』
「あー……。
ありがとう、ございます」
一緒に行けないのをあんなに淋しがっていたのだ。
それにきっと私を喜ばせたかったんだろうから、……諦めよう。
『帰ったら一緒に食おうな』
「はい、楽しみにしています」
帰ったら冷蔵庫の整理して、入れる場所空けなきゃだけど。
『ところでチー、まだ会社か』
「はい、そうですよ」
『なんで残業なんかしてるんだ?』
待て。
ちょっと待て。
これはあなたのせいですが?
「仕事が終わらないからですが」
『誰だ、チーにそんなに仕事させてるの』
お前だ、お前。
……とか突っ込まなかった私は、偉い。
「あのですね。
……早く終わらせて帰ります」
文句を言おうとしたけれど、やめた。
なんか派手に落ち込みそうなのが見えたから。
『早く帰れよ。
帰ったら電話して』
「はい」
電話を切ると本日何度目かのため息が出た。
無自覚だから仕方ないんだけど。
超特急で仕事を終わらせ、タクシーで家に帰る。
帰り着いたらちゃんと佑司に電話する。
また淋しいだのなんだのと言われたけど、適当に宥めておいた。
「寝よ……」
お土産の荷物は日曜日に着くと言っていたので、やはりお出かけは明日じゃなきゃいけない。
早々に寝ようとしたけれど、いつまでたっても眠れない。
「……そっか。
佑司がいないからだ」
いつも佑司に抱きしめられて眠っていた。
彼のぬくもりにいつの間にか慣れていた。
だから今日は――こんなに、寒い。
「もー、いーから早く寝よ」
寒くないように布団にぐるぐる巻きになる。
佑司、早く帰ってきて……。
――ただ。
「……出張になった」
ソファーで隣に座る、佑司のあたまをいい子いい子してあげる。
「ニャーソンさん大詰めなのに、竹村サンの尻ぬぐいで北海道出張!?
しかも先方の都合で、土日で!?
ありえねー」
「お疲れ様です」
こればっかりは可哀想としかいいようがない。
竹村課長が確認をしないで適当に、乳業メーカーに生クリームの予定量を言ったりするから。
実際はその半分くらいだったから、準備をしていたメーカーさんも農家さんも激怒するのは当然だ。
おかげで佑司はお詫び行脚の出張へ行く羽目になった。
「それも土曜は朝から行動だから、前入りで金曜からってさ……。
やっとチーと愛し合えると思ったのにー」
「えーっと」
こそっと、内緒話をするように、佑司の耳元へ口を寄せる。
「……来週末。
思いっきりいい雰囲気になるように努力するので、期待していてください」
「ほんとに!?」
がばっと勢いよく起き上がった佑司が私の両手を握りしめ、キラキラした目で見つめてくる。
「はい」
「じゃあ頑張るー」
なんだか匂いをつけるみたいに身体を擦りつけられた。
いや、もしかしたら本当に、マーキングしているのかもしれない。
金曜日。
午後から出発する佑司と、ランチした。
「今日は帰り、タクシー使えよ?
晩メシはケータリング取れ。
あとは……」
朝、出勤するときにも言ったことを佑司は繰り返し、苦笑いしかできない。
「心配しなくても大丈夫ですよ。
タクシーで帰りますし、晩ごはんは適当に済ませます」
「ああもう、チーをひとりにするとか心配ー」
ちまちまとパンを指先ほどにちぎって佑司は食べている。
「大丈夫ですって。
それにマンションのセキュリティもしっかりしていますし」
「……チーは俺がいなくても平気なんだ」
ジト目で、眼鏡の上の隙間から佑司が見てくる。
「平気っていうか、心配しなくても大丈夫って話で」
「俺はチーと離れて二日半も過ごすとか、堪えられる自信ないのに」
「えーっと……」
佑司の手から小ぶりなパンはいつまでたってもなくならない。
いつもなら、三口ぐらいで食べちゃうのに。
「……私も、佑司がいないの淋しいですよ」
顔は見られなくて、お皿の中のトマトパスタを見つめたままぽそっと呟いた。
「そうか!」
落ちた視界の中で、ぱさぱさと幻の尻尾が揺れて動く。
そーっと顔を上げたら、ぱーっと花が咲くように佑司が笑っていた。
「……電話、します」
「俺もする」
「早く帰ってきてくださいね」
「わかった」
まるで永の別れのようだが……明後日には帰ってくるのだ。
なんでこんなことをしているのか、ちょっとおかしくなってきた。
お店を出ると、手を掴まれた。
「ちょ、ダメですよ!
会社の近くですよ!」
「俺が繋ぎたいから繋ぐ」
強引に指を絡め、離れなくしてしまう。
はぁっ、ため息をつきつつもおとなしく手を繋いで歩いた。
繋いだ手が楽しそうに上下に揺れる。
ややもすればこのままダンスすら踊りだしそうだ。
「いってらっしゃい」
一緒に、地下の駐車場に下りる。
こんなに早い時間に行く必要はないのだが、佑司は午後休を取っていた。
『だってこのスケジュールじゃ、チーにお土産買う時間がない。
だから金曜、早めに行くんだ』
昨日、荷造りしながらそんなことを言っていた。
それに土日仕事なんだから半日くらい休んだって罰は当たらないだろ、って。
それならいっそ、一日休んで朝から行ってゆっくりしてきたらって言ったんだけど。
『チーと離れる時間は少しでも減らしたいだろ』
だって。
「いってくる」
窓を開けた運転席から、佑司は私の手を掴んで離さない。
レンズの向こうから私を見つめる、少しだけ濡れて光る瞳。
周りに誰もいないことを確認して――ちゅっと軽く、唇を重ねた。
「チーがキスしてくれた!」
ぽぽぽん! と佑司の周りで花が咲く。
これで納得してくれたかな、と思ったんだけど。
「でも足りない」
私の手を掴んでいた手が首の後ろに回って引き寄せる。
重なった唇、入ってきた熱いそれ。
薄暗い地下駐車場に甘い吐息が密やかに響きだす。
唇が離れ、頬に触れた手の親指が、唇をなぞった。
「……チーも充電池にして持ち歩けたらいいのに」
「……なんですか、それ」
「だっていま満タン充電したけど、切れたら困るだろ。
帰るまで充電できないんだから」
佑司は眼鏡の下の眉を寄せ、真剣に困っている。
そういうのはおかしくて、くすりと笑いが漏れた。
「充電切れそうになったら電話してきてください。
それで少しは、補充できるでしょう?」
「声だけだと淋しくて、もっと電池減るかも」
「じゃあ、ビデオ通話!
ビデオ通話してください」
「触れないからもっと減るかも」
なんだこのだだっ子は?
私を困らせて楽しいか?
「そうだ、チーも一緒に出張、行けばいいんだ!
そうだよ、最初からそうしとけばよかったんだ。
どうせ、休みの土日なんだし」
「ゆーじー」
「ひぃっ」
手が勝手に、佑司の胸ぐらを掴む。
おかげで彼は小さく悲鳴を上げた。
「たった二泊三日なんです。
明後日には帰ってくるんです。
それに私はいまから、佑司から頼まれた仕事をしなきゃいけないんです。
つべこべ言わずにさっさと行けっちゃ」
「は、はいっ」
ぱっと私が掴んでいたシャツを離し、佑司はようやくエンジンをかけた。
……ちょっぴり涙目になっていたけど。
「気をつけて」
「いってきます」
笑って、彼を見送る。
車が見えなくなってはぁーっと大きなため息が出た。
やっぱり、佑司はTLヒーロー様だ。
やることが全く一緒。
でも最近はそれが、少し面白くもある。
「どーでもいいけど、今日は残業コース分仕事置いていったって覚えてないのかな」
午前中、あれもこれもと佑司は私に仕事を命じてくれた。
もしかして無意識に、残業させたかったのかもしれない。
そうすれば私が、誰かと食事に出かけるなんてできなくなるから。
「そんなに心配しなくても……って、心配させるようなこと、したんだけど」
これは自業自得でもあるので仕方ない。
明日は出かける予定にしているし、早く終わるように頑張ろう。
終業時間が過ぎ、予想通りに残業へ突入する。
「八木原、残業か?
今日は旦那がいないんだから、ほどほどで帰れよ」
ばしばしと私の肩を叩く、丸島係長をじろりと睨みつける。
「……まだ旦那じゃないです」
「まだってことはいずれそうなるんだろ。
じゃ、お先」
ひらひらと手を振りながら彼は帰っていった。
ほんと、煮ても焼いても食えないおやじだ。
「……まだ」
自分の言った言葉を反芻してみる。
なんで全面否定じゃなくて〝まだ〟なんて言ったんだろう。
たまたま?
それとも――私の、願望?
気分転換にコーヒーを淹れようと席を立つ。
戻ってきて携帯を確認したら佑司からいくつもNYAINと着信が入っていた。
慌てて携帯を掴み、部屋の外へ出る。
――プル、プッ。
『なんで俺からの電話に出ないんだ!』
ワンコールも鳴らないうちに出た佑司が、電話の向こうから怒鳴ってくる。
「だって携帯、バッグに入れっぱなしなので……」
これは怒られることなのか?
ちゃんと仕事中は公私を分けているのに。
『なにが欲しいかわからないから、適当に送ったぞ。
カニだろ、鮭だろ、ジャガイモにタマネギ、にんじん、アイスクリームとチーズケーキ、チョコレート、スープカレーの素に……』
「ちょっと待ってください!
どれだけ送ったんですか!?」
『さあ?
チーに食べさせたいと思ったの、全部送ったからな』
あたまが痛い。
私と佑司しかいないのに、そんなに食べきれるはずがない。
「もうちょっと、考えてですね……」
『チーとふたりで来れば、こんなに送らなかったんだ』
「はい?」
なにが言いたいのか、ちょっと理解できない。
『チーとこれも一緒に食べたかったな、きっとチーと一緒だったら美味しいのにって考えたら、全部送ってた』
「あー……。
ありがとう、ございます」
一緒に行けないのをあんなに淋しがっていたのだ。
それにきっと私を喜ばせたかったんだろうから、……諦めよう。
『帰ったら一緒に食おうな』
「はい、楽しみにしています」
帰ったら冷蔵庫の整理して、入れる場所空けなきゃだけど。
『ところでチー、まだ会社か』
「はい、そうですよ」
『なんで残業なんかしてるんだ?』
待て。
ちょっと待て。
これはあなたのせいですが?
「仕事が終わらないからですが」
『誰だ、チーにそんなに仕事させてるの』
お前だ、お前。
……とか突っ込まなかった私は、偉い。
「あのですね。
……早く終わらせて帰ります」
文句を言おうとしたけれど、やめた。
なんか派手に落ち込みそうなのが見えたから。
『早く帰れよ。
帰ったら電話して』
「はい」
電話を切ると本日何度目かのため息が出た。
無自覚だから仕方ないんだけど。
超特急で仕事を終わらせ、タクシーで家に帰る。
帰り着いたらちゃんと佑司に電話する。
また淋しいだのなんだのと言われたけど、適当に宥めておいた。
「寝よ……」
お土産の荷物は日曜日に着くと言っていたので、やはりお出かけは明日じゃなきゃいけない。
早々に寝ようとしたけれど、いつまでたっても眠れない。
「……そっか。
佑司がいないからだ」
いつも佑司に抱きしめられて眠っていた。
彼のぬくもりにいつの間にか慣れていた。
だから今日は――こんなに、寒い。
「もー、いーから早く寝よ」
寒くないように布団にぐるぐる巻きになる。
佑司、早く帰ってきて……。
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