【完結】私の赤点恋愛~スパダリ部長は恋愛ベタでした~
2-4.突然の同棲宣言
私のアパートの前で、佑司はこの世の終わりかってくらい絶望的な顔をしていた。
「オートロックは?」
「ないですよ」
「監視カメラは?」
「ないですよ」
会社から便がよく、しかも駅からさほど離れていないという好条件で安アパートとなれば、そんなもの期待するだけ、無駄。
「……いや、確かに昔は俺も、こんなアパートに住んでいたけど……」
なんだか少し、意外な気がした。
佑司のイメージからいって、はじめからあんなおしゃれな高級マンションに住んでいそうだから。
けれどよくよく考えたら、彼だって一般社員時代があったわけで、当たり前か。
「チー、ドアスコープは塞いでないのか」
「なんですか」
佑司は家の中をチェックして回っている。
それにかまわずにキレイめで落ち着いて見える服をさがす。
スキニージーンズに黒の半袖Tシャツ、それに白レースのロングカーディでいいか。
「莫迦か、お前は!
洗濯物、特に下着を外に干すなよ!」
「だって、乾かないじゃないですか」
着替えを済ませて洗面所を出ると、佑司が勝手にベランダから洗濯物を取り込んでいた。
「あのなー。
こんな、ここに女性がひとり暮らししています、ってアピールするようなことしてどうするの?
襲われたいの?」
はぁーっ、と佑司の口から重いため息が落ちる。
「襲われたくはないですけど……」
「チーは危機感なさ過ぎ。
めちゃくちゃ心配。
……そうだ」
さぞいいことを思いついたとでもいうように、佑司が顔を上げた。
「うちに住めばいい。
そうだ、そうしろ」
「……は?」
私はいいともなんともいっていないのに彼は勝手にクローゼットを開け、スーツケースを引っ張りだす。
「引き上げはまた後日にして、とりあえず当面いるものだけあればいい。
充電器と……着替えと……そうだ、デートは中止しているものを買いに行こう」
「……はい?」
佑司は独断で荷物を詰めていく。
その辺りでようやく、私も状況を把握した。
「ちょっと待ってください!
まだ私はそうするとはなにも」
「そうするもなにも、決定事項だから。
こんな危ないところにチーをひとりで住まわせておくわけにはいかない」
なおも断りなくクローゼットの衣装ケースを開けようとする。
……ってちょっと待って!
そこは……。
「色気のねー下着ばかりだな。
これは全部買い替え」
乱雑に引き出しを閉め、今度は掛かっている洋服をぽんぽんとスーツケースに放り込んでいく。
「チーはもう、化粧済んだみたいだな。
じゃあ行くか」
バタンと勢いよくスーツケースを閉め、軽々と持ち上げて玄関へと歩いていく。
が、数歩いったところでいまだに立ち尽くしている私を振り返った。
「あ、貴重品は忘れんなよ」
「えっ、あっ」
慌てて通帳や印鑑を掴み、その後を追う。
「私まだ、そうするとか言ってないないですし」
「だから、チーをこんな危ないところに置いておけないって。
まあ、俺が出す条件のところに引っ越すなら別だけど」
トランクにスーツケースを積み込み、佑司は車に乗り込んだ。
仕方ないので私も助手席に座る。
「条件、って?」
私がシートベルトを締めたことを確認し、佑司は車を出した。
「女性専用、オートロック、管理人常駐、監視カメラあり。
これが最低条件。
あとできれば駅から徒歩五分以内で築五年以内」
「うっ」
そんな好条件アパートというかマンション、いまより家賃が跳ね上がるに決まっている。
いくら優良企業とはいえ、入社二年目一般社員の私のお給料では無理。
「無理なら俺の家に住む。
それにいままで、怖いことだってあったんじゃないか」
「それは……」
一度だけ、夜中に酔っ払いのおじさんからピンポン連打されたことがある。
酔っているからかわけのわからないこと大声で喚いて、ドアノブをしつこくガチャガチャと回された。
怖くて怖くて、耳を塞いでいなくなるのをじっと待ったあの夜のことは、いまでも忘れられない。
「俺の家ならセキュリティ万全だから安心。
送り迎えも絶対するし。
だから、俺の家に住め?」
「は……」
いや、ちょっと待て。
その場合、家の外から脅威はやってこないが、家の中は狼と一緒ということでは?
「あのー、ですね?
……佑司が襲ったりしないですか?」
「んー?
……チーから同意がなきゃダメだって言われたしなー。
だから、無理強いはしたりしない」
少し開いた間は気になるが、気にしない方向で。
なら、大丈夫そう、かな。
「わかりました、佑司の家に住みます。
が、昨晩のようなことをしたら、速攻で出ていきますので」
「了解」
うきうきと彼がハンドルを切る。
もうこれから外のちょっとした音で怯えなくて済むんだし、これでよかったと思おう。
「オートロックは?」
「ないですよ」
「監視カメラは?」
「ないですよ」
会社から便がよく、しかも駅からさほど離れていないという好条件で安アパートとなれば、そんなもの期待するだけ、無駄。
「……いや、確かに昔は俺も、こんなアパートに住んでいたけど……」
なんだか少し、意外な気がした。
佑司のイメージからいって、はじめからあんなおしゃれな高級マンションに住んでいそうだから。
けれどよくよく考えたら、彼だって一般社員時代があったわけで、当たり前か。
「チー、ドアスコープは塞いでないのか」
「なんですか」
佑司は家の中をチェックして回っている。
それにかまわずにキレイめで落ち着いて見える服をさがす。
スキニージーンズに黒の半袖Tシャツ、それに白レースのロングカーディでいいか。
「莫迦か、お前は!
洗濯物、特に下着を外に干すなよ!」
「だって、乾かないじゃないですか」
着替えを済ませて洗面所を出ると、佑司が勝手にベランダから洗濯物を取り込んでいた。
「あのなー。
こんな、ここに女性がひとり暮らししています、ってアピールするようなことしてどうするの?
襲われたいの?」
はぁーっ、と佑司の口から重いため息が落ちる。
「襲われたくはないですけど……」
「チーは危機感なさ過ぎ。
めちゃくちゃ心配。
……そうだ」
さぞいいことを思いついたとでもいうように、佑司が顔を上げた。
「うちに住めばいい。
そうだ、そうしろ」
「……は?」
私はいいともなんともいっていないのに彼は勝手にクローゼットを開け、スーツケースを引っ張りだす。
「引き上げはまた後日にして、とりあえず当面いるものだけあればいい。
充電器と……着替えと……そうだ、デートは中止しているものを買いに行こう」
「……はい?」
佑司は独断で荷物を詰めていく。
その辺りでようやく、私も状況を把握した。
「ちょっと待ってください!
まだ私はそうするとはなにも」
「そうするもなにも、決定事項だから。
こんな危ないところにチーをひとりで住まわせておくわけにはいかない」
なおも断りなくクローゼットの衣装ケースを開けようとする。
……ってちょっと待って!
そこは……。
「色気のねー下着ばかりだな。
これは全部買い替え」
乱雑に引き出しを閉め、今度は掛かっている洋服をぽんぽんとスーツケースに放り込んでいく。
「チーはもう、化粧済んだみたいだな。
じゃあ行くか」
バタンと勢いよくスーツケースを閉め、軽々と持ち上げて玄関へと歩いていく。
が、数歩いったところでいまだに立ち尽くしている私を振り返った。
「あ、貴重品は忘れんなよ」
「えっ、あっ」
慌てて通帳や印鑑を掴み、その後を追う。
「私まだ、そうするとか言ってないないですし」
「だから、チーをこんな危ないところに置いておけないって。
まあ、俺が出す条件のところに引っ越すなら別だけど」
トランクにスーツケースを積み込み、佑司は車に乗り込んだ。
仕方ないので私も助手席に座る。
「条件、って?」
私がシートベルトを締めたことを確認し、佑司は車を出した。
「女性専用、オートロック、管理人常駐、監視カメラあり。
これが最低条件。
あとできれば駅から徒歩五分以内で築五年以内」
「うっ」
そんな好条件アパートというかマンション、いまより家賃が跳ね上がるに決まっている。
いくら優良企業とはいえ、入社二年目一般社員の私のお給料では無理。
「無理なら俺の家に住む。
それにいままで、怖いことだってあったんじゃないか」
「それは……」
一度だけ、夜中に酔っ払いのおじさんからピンポン連打されたことがある。
酔っているからかわけのわからないこと大声で喚いて、ドアノブをしつこくガチャガチャと回された。
怖くて怖くて、耳を塞いでいなくなるのをじっと待ったあの夜のことは、いまでも忘れられない。
「俺の家ならセキュリティ万全だから安心。
送り迎えも絶対するし。
だから、俺の家に住め?」
「は……」
いや、ちょっと待て。
その場合、家の外から脅威はやってこないが、家の中は狼と一緒ということでは?
「あのー、ですね?
……佑司が襲ったりしないですか?」
「んー?
……チーから同意がなきゃダメだって言われたしなー。
だから、無理強いはしたりしない」
少し開いた間は気になるが、気にしない方向で。
なら、大丈夫そう、かな。
「わかりました、佑司の家に住みます。
が、昨晩のようなことをしたら、速攻で出ていきますので」
「了解」
うきうきと彼がハンドルを切る。
もうこれから外のちょっとした音で怯えなくて済むんだし、これでよかったと思おう。
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