世界最強の男の娘
10話 王城でのパーティ〜前編〜
憂鬱だなぁ。ガイズに会わないと行けないのか。あいつ俺のことを未だに女だと思っているようだったから、集られるのだろうな。一応、ブーストン公爵と面識があるから大丈夫だろうが、騙したって思われるだろうな。
今年は出席する人は、王家から王子と王女の双子にブーストン公爵家の長男と次女、宰相の一人娘にあのべーボース公爵家の長男だ。国の上級貴族の子息が揃い踏みだ。
王子と王女以外では、俺より高い位の子どもはいない。子どもで当主というのは、特例でしか認められない。両親の人柄のお陰で認めて貰えたのだろう。偶に、王都から監察官が来て、街を見回っていることを知っている。
「レイ様。とても美しくございますよ」
「ミリース、ありがとう」
「レイ様、沢山の貴族の子息にお声を掛けられるでしょうが、お気お付け下さい」
「ロイド、大丈夫だよ。心配することはない……はず……」
「あぁそうだ。センスにべーボース公爵の悪事を集めさせろ。事・が起こるだろうさ」
「了解しました」
「ア・レ・の様子は?」
「順調でございます」
本・当・は・ランドリアが係なのだが、センスに任せよう。ヘマすることは無いだろうしな。
今日着る服は、今まで着たことの無い服である。王都の仕立て屋で仕立ててもらった豪華な服だ。昨日も謁見ということで、新しく仕立ててもらった。ことある事に態々仕立ててもらう必要ないだろうが、そういうところで見栄を張るのが貴族という生き物である。
「レイ様、参りましょう」
「あぁ、御者を頼んだぞ、ロイド」
ロイドは会釈してから御者席に座る。四分程度かかるので、頭の中を真っ白にして現実逃避する。夕食は食べてきたので、このまま寝てしまいたい。パーティでは軽食が出るので食べられるのだが、リストンでのパーティでも人に囲まれてそんなことする余裕は無い。
王城には既に下級貴族たちが話に花を咲かせている。ここまで人が集まるパーティは初めてなので、どうしても緊張してしまう。心を落ち着かせながら中に歩いていく。顔見知りの貴族はいないので、全員が入ってくるのを待つ。こちらに話しかけたいのか、様々な視線が向けられる。
メイドに飲み物をもらって、端で大人しくしている。もちろんアルコールは入っていないので、安心だ。公爵家の方々も入場してくる。アバリック辺境伯の三女が来るので、アバリック辺境伯とドンマナス侯爵、ブーストン公爵に、べーボース公爵は行かなくていいか。ドンマナス侯爵はワークス宰相の家名だ。
全員が揃って暫くすると、王家の方々が入場する。あれが王子と王女か。王子は紫色の髪で容姿はとても整っている。まさに王子といったところだ。王女は青髪で可愛らしい感じがする。ガイズの婚約者か。
王族への挨拶は上級の貴族からしていく。公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、準男爵や騎士爵の順番だ。四番目なので少し待たないといけない。
順番がきたので、列に並ぶ。
「君、親はどこにいるのだね?家名を言ってみなさい」
後ろから肩を叩かれて、声を掛けられる。
「私は、レイ・フォン・ブラック伯爵です。ええっとあなたは…」
「これは…ブラック伯爵でございましたか。私はセルロス・フォン・カンバース子爵で、こいつが息子のセシルスです。貴女があの傑物と噂の伯爵殿でしたか」
「傑物とは…いえ、そこまでではございませんが」
そのままカンバース子爵と雑談しつつ、順番を待つ。息子のセシルスが、期待の目を向けてくるが、無視しておく。
「それでは、これで」
「えぇ」
セシルスが残念そうな目が見える。順番なので仕方がないのだが、俺にとっては喜ばしいことだ。面倒事が減るからな。
「陛下、レイ・フォン・ブラック伯爵。参りました。オードス王子殿下、並びにアイリス王女殿下、御成達、お慶び申し上げます」
「おぉ、ブラック伯爵。お主も今年で七歳であろう。儂の息子たちと同い歳として、宜しく頼むぞ。あぁ、そうだ。儂らとブーストン公爵家、ドンマナス侯爵家も今度視察にリストンに参るからな」
「御意に」
「君がブラック伯爵ですか。婚約者はいるのか?」
「いえ、そういうことは……」
目線で陛下に助けを求める。
「オードス、後でだ」
「では、陛下。失礼致します」
良く考えると後で婚約の話に来るということかな。不味いな、色々。
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