世界最強の男の娘

光井ヒロト

7話  王都観光〜前編〜




 王都に着いて一日が経った。今日は王都観光をしようと思う。パーティの前日は王城に呼ばれているので、観光できる日は三日しかない。

 取り敢えず、王都の大通りを歩いてみようと思う。平民と同じような平服を着て、王都の屋敷を出る。昼も屋台か店に入って食べられたらいいなと思っている。

 この時、既に俺は忘れていた。
 俺の見た目は女とも見れることをーー


「観光とは言いつつも、やっぱり領にどう生かせるのか考えてしまうな」

 まずは王都名物的なものを探していく。歩いていると、チェスやチョコレートが売られている。店主に勧められるが、全て俺発案なので苦笑いしかでない。しかも、そこの綺麗なお嬢ちゃんと、誰も男と思わないのだろうか。不思議なものだ。

「おーい!そこの綺麗なお嬢ちゃん、この蜜桃買わないかい?」

「いや、大丈夫です」

 こんな感じだ。

「お!そこのお嬢ちゃん、うちのパスタ食べてかないかい?」

「また今度、行きますね」

「待ってるよ」

 王都では、リストンの相場の二倍から三倍近くの相場なので、高くて迷ってしまう。二毛作など、うちの領でしか実践されていないものなので物価が高いのだ。貴族なのに金を余り使わないので、金銭感覚が地球のままだ。

 王都の壁は、白く綺麗という訳ではなく、少しひび割れているところがあるが、リストンより高く、見上げると壮観だ。

 街並みは、大きめのスラムがある。人気がなく、居る人たちは今にも死にそうな感じがする。リストンに来てくれればどうにか出来るが、現実的では無い。

 さらに、路地裏が多い。人が多すぎて警邏している衛兵たちの目が届かないのでチンピラたちは犯罪し放題だ。

「おぉ〜!嬢ちゃん、可愛い顔してるな。お兄さんたちと遊ばないか?」

「(俺かい…可愛い女の子いないのかよ)い、いや…遠慮しておきます」

「まぁそんなこと言わずに、こっち来なよぉ〜」

「衛兵!こっちだ!早く来い!!」

「ちっ!最悪だ。てめぇら!行くぞ!」

「君、こっちに!」

 見知らぬ少年に手を引かれて、路地裏から大通りに連れられていく。衛兵は来てない。なるほど、そういうことか、頭いいな。

「君、大丈夫だったかい?」

「はい、大丈夫です…」

「君は綺麗だからな…いっ、いや、口説いているわけでないのだよ?そっ、そうだ、私はガイズ・フォン・ブーストンだ。栄えあるブーストン公爵家の嫡男だ。君の名前を聞いてもいいかな?」

「わ、私は…レイ…です」

「レ、レイか…どうしてここに?」

「王都の観光に…」

「ではっ、ぼ、僕が王都を案内しよう!」

「そ、それは…ありがとうございます」

「では、行こうかっ」

 ちょ待てよ!何で手を繋ぐんだよ!

 まず先に服屋に連れていかれた。まさか服を買うんじゃ…パーティで会うことになるだろうから、何て言えばいいだろうか?

「あ、あの、こういう店は入ったことがなく…街を歩きませんか?」

「あぁ、そうか…すまない、気遣いが出来てなくてな。では、街を一緒に歩こうか」

 セーフ。返すのが面倒臭そうだからな。
 はぁ、憂鬱だなぁ


ーーガイズSideーー

 少し暇だな。外に出るか。

「あの子は…可愛い…っは!襲われているのか、相手は強そうだし…こうなったら一か八かだな…おい!衛兵!」

 やはり可愛いな。ミリア王女殿下に会うことが多いが、こう言ってはなんだが、王女殿下より可愛いかもしれん。

 これは誘うしかない。このガイズ・フォン・ブーストンの名にかけて、彼女とのデートを成功させよう。貴族の子どものようだが、名前は何と言うのだろうか?

「君の名前を聞いてもいいかな?」

「わ、私は…レイ…です」

 レイちゃんかぁ、可愛いな、じゃない、声が震えてしまうな。緊張していると知られては僕の沽券に関わる。ここは気丈に、最高のエスコートをしよう。姓を言わないということは、平民か。側室なら大丈夫だな。貴族だったら、色々調整しなきゃいけないからな

「あ、あの、こういう店に入ったことがなく…街を歩きませんか?」

 しまった。やってしまった。このままでは不味い。僕の沽券が…今度こそしっかりエスコートしよう。
 僕に出来ないことは無い。絶対に彼女が僕に惚れさせてみせる。今日しか会えないかもしれないからな。見ていろよ、レイちゃん!






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