世界最強の男の娘

光井ヒロト

5話  領地開発〜後編〜




 かれこれ二年が過ぎた。この二年で、領主として上手くやって来れたと思う。このブラック伯爵領も様変わりした。

 領の城壁は石灰岩製の白く綺麗な仕上がりになった。四等分にして、四日に分けて作っていく。毎日魔力切れで、初日と次の日はそのまま倒れてしまった。三日目、四日目は意識は保てたが、何も出来なかった。

「これはレイ様、立派な壁でございますな。王都の壁に勝るものでありますよ」

「ア、アドラード、ありがとう」

「王都でもこの領のことは頻繁に話題に上がりますよ。領主が美しいと」

「あ、あははははは……はぁ」

 彼はこの領で米を扱っている商人のアドラードだ。本当に持ち上げるのが美味いやつだな。


 こんなに立派な領都なのに領主館が少し貧相に見えると言われ、作り直すことになった。そんなことを言われないように、和風の城をつくった。終わってから思ったのだが、やり過ぎたな。みんなから凄いと褒められたので、まぁ良いや。回りは堀りがあり、水を張って橋を架けている。一応、侵入防止だ。素晴らしい出来だったので、全て良しとする。

「いつ見ても素晴らしいものですな、レイ様。」

「ザッノさん、余り言うな。」

「そうですか、ところで奴隷を買いませんか」

「残念、要らんな。会う度に奴隷を勧めるのはやめとけ」

「ご安心ください、するのはレイ様だけですので」

「おい……」


衛兵と自警団の二つに分けた。東西南北に門を設置したので、衛兵の数が心もとなかったため自警団を組織して、衛兵は領主館と門兵の二つだけの仕事させ、自警団は領都内の警備を任せている。お陰で犯罪件数が二年前より激減している。目標は、夜も鍵をかけないでも良いようにしたい。

「レイ様、月末の報告に参りました」

「よう伯爵様、自警団の報告に来たぜ」

「おいバート!レイ様と呼べ!不敬だぞ!!」

「そんなカリカリすんなっての、ガートォ。なぁ伯爵様!」

「まぁそうだな。俺のことはなんて呼んでもいいぞ」

「だとよ」

「レイ様がそう言うなら…」


 この二人は、衛兵隊長のガートと自警団団長のバートだ。二人は双子でこの領の守りを担ってくれている。喧嘩がないことはいいことだ。

 ガートは真面目で領都内に入ろうとする賊を許したことは無いし、賄賂も受け取らないため、他領の者が犯罪を起こすことは少ない。また、犯罪を起こしたとしても、バート率いる自警団がすぐに取り押さえる。この完璧なコンビで平穏が保たれている。


 この領というか、この世界自体に娯楽というものが少ない。子どもは、外に出て玉遊びくらいだ。大人は、裕福な者はオークションに参加するが、そうでない者は遊ぶということがない。ほとんど仕事の毎日である。

 闘技場で初夏がすぎた頃に、武闘大会と魔法大会を開催している。優勝者には、俺からの褒め言葉と武闘大会では魔法剣を、魔法大会では杖を渡している。一番の褒美は俺からの褒め言葉らしい。なにが良いんだか。

 競馬場をつくり、賭け事も開催している。最初は有志による参加だったが、最近ではプロもでてきて、競馬で、飯を食っている人もいる。

「レイ様、お久しぶりですね。今日も競馬で儲けさせて貰いましたよ」

「はぁ、デルトさん。ギルドマスターとあるという者が、副マスターのラーシャさんに怒られますよ」

「そんな時は、レイ様の元に逃げてきますよ」

「俺は助けませんからね」

「なっ……」


 魔法を使ったボール競技で、子どもたちが沢山運動できるスポーツを開発した。大会も開いて欲しいと言われ、こちらの優勝者には褒め言葉と賞状を渡す。大人も子どもも大人気なスポーツだ。

 貴族や豪商には、チェスが広まっている。豪華に飾った盤と駒を使う。紳士淑女の嗜みとして、遊ばれている。まぁ、スーパーエリートのこの俺に勝てる奴などいないわけだがな。王族もチェスをしているという話だ。考案した俺からしたら鼻が高い。あ、実質俺ね。

「ロイド殿、もう一度頼む」

「紳士は、負けを認めませんと」

「そ、そんな…」

「グラッツさん、大口の客が来ると言っていたのに、奥さんに叱られますよ」

「おぉ、レイ様。女房には話しておりますよ」

「そうか、やり過ぎるなよ」

 この世界では、情報は命だ。情報を集めるために二つの組織をつくった。十戒と十纏だ。十戒では八人、十纏は全員俺に拾われている。テリオーに扱き、じゃなくて、教育させて情報を集めさせている。

十戒のメンバーは

唯神のセンス
 黒い服ばかりを好んで着ている。レイを神だとおもっている。

偶像のバメリ
 本が好きで、常に本を持っている。拳聖であり、素手の格闘で勝てる者は数人しかいない。

神唱のギルット
 綺麗な石を集めるという特殊な趣味の持ち主。城壁を物欲しそうに毎日眺めている。

安息のミノロン
 休憩は必要が口癖で、仕事をいち速く、正確にこなす。競馬場で偶に見かける。

親敬のメナス
 レイを親の様に慕い、頼んだ仕事にプラスでしてくる。偶に甘えん坊になる。

不殺のヤロイ
 虫も殺さない心優しい者。暗殺の依頼だけは死んでも受けようとしない。

姦淫のテーロ
 女遊びが大好きで、任務先で娼館に行っている。絶対に止めようとせず、娼館でしか集められない情報があるらしい。

強奪のアーバリア
 三度窃盗罪で捕まっていて、死にかけていたところを拾われた。それ以来、盗むは辞めた。

偽証のランドリア
 偽証を冠しているが、嘘は付かない。嘘か真実か見分けるという特殊な特技を持つ。

貪財のエリオ
 質素な倹約家で、お金は滅多に使わない。賭け事をしたことはない。

十纏のメンバーは

無慚のキリ
 無口で、声を聞いた人はいない。私生活は謎に包まれている。

無愧のリンド
 常に胸を張っている。話す時もハキハキと喋る。

嫉のアンガス
 レイを理想の人物像として、レイの木像を毎日拝んでいる。

慳のモノス
 物を大切にしている。大切にし過ぎて、断捨離が出来ない。

悔のクイス
 よく失敗をするが、その後には必ず成長している。

眠のネンド
 どんな状況でもマイペースで、ペースを崩されることを何より嫌う。

掉挙のアンド
 辛気臭い場や緊張している場でも陽気で場を和ますのが得意。

昏沈のアマズ
 幸せを常に夢見て生きている。

忿のコンドマス
 普段は我慢強い性格をしているが、解放すると手をつけられない。

覆のファルス
 純粋な心の持ち主で、疑うことを心配になるくらい知らない。

 十戒には国内、十纏には国外を見てもらっている。だから、十纏にはほとんど会わない。


 王都から手紙が届いた。この国では、王族が七歳と十歳で同じ歳の者が親同伴で集う。これはその招待状である。
 王都に行かなくてはな。







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