世界最強の男の娘
1話 転生したら
「遥人、長生きするんだぞ…」
父親の最後の言葉だった。隣には泣いている幼馴染み紅葉。俺の頬にもいつの間にか流れていた。
父親は43歳だった。働いていた会社では特別開発室の室長であり、つまりエリートである。男手一つで高校2年まで育ててくれた。そんな父親は癌を患って闘病生活3年で亡くなった。そんな父親に俺は親孝行なんてものは全くといっていいほどしていない。
俺の前では明るい父親だが、その裏で毎日忙しそうにしている様を知っている。だが、裏でも弱音をはいたことがなかった。
「父さん、安らかに…」
ふと外に出たくなった。紅葉と一緒に散歩することにした。空は日が沈みかかって、紅に染まっている。
路地裏で喧騒が聞こえる。目を向けると、女性が大柄の男達に囲まれている。刈り上げの男がポケットから何かを取り出した。拳銃だ。女性は悲鳴を上げて手に持っている鞄を振り、拳銃を持っている手を叩いた。その銃口の先にはーー
遠く紅葉の声が聞こえる。さらにどんどん遠くなっていく。女性が男の間から顔が見えた。
ーーー美しい
そう思った。
ーーー了解しました
紅葉?こんな声出せたか?父さんの言葉守れなかったな。
俺は意識を手放した。
「ここは何処だ?」
ついさっき死んだはずだ。俺は撃たれたんだ。鏡を見てみよう。ベッドから立ち上がると、近くにある鏡を覗き込む。そこには、美しい美男子が立っているではないか。
「転生、ってやつか」
以外と落ち着いている。自分でも吃驚するほど落ち着いている。
「取り敢えず、情報だな」
部屋にある分厚い本を手に取り、開いてみる。日本語ではない。しかし、父親は超一流会社でエリートコースだ。そんな父親の遺伝子を完璧に受け継いでいるのだ。
前世は物心ついた頃には母親はいなかったが、父親の話では母親も超一流会社でエリートだったらしい。そんな2人の遺伝子を受け継いだ。舐めてもらっちゃあ困る。
校内でも常に一位だ。全てにおいて一番である。そこ、学校生活でも一人だと?紅葉がいたもん。決して一人じゃ……ない。兎に角、言語一つ覚えるのはどうとしたことは無い。
どうやら本当に異世界の様だ。世界の名前はクロスレールと言うらしい。俺の住む国はルーンレリア王国。現在91代目エルドラ・フォン・シル・ルーンレリアが治めている。周りにはアーワルノ帝国、クロスレール神聖教国、デントホント王国、ネルロン共和国の四国に囲まれている。
種族は人族、獣人族、エルフ族、巨人族、魔族、鬼人族、龍人族、妖精族、ドワーフ族、また精霊、天使、悪魔がいる。
魔法もあるらしい。五歳で行われる授与の儀でステータスが与えられて使えるようになるようだ。俺は今年五歳。ステータスが貰える年だ。楽しみだな。
「レイ様!オルガン様とナリーニ様が……」
「父上と母上がどうかしたのか?」
「その…お亡くなりになられました」
辺りの光が失われていく感じがする。
どうやらこの世界でも俺は家族に恵まれないようだ。
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