私に彼氏ができないのは天使(妹)のせい!?

りゅう

私と天使(妹)のこれから




 「みゆ、大切な話があるからさ、出てきてくれないかな?」

 トイレに閉じこもっている天使(妹)に私は優しく声をかける。妹はしばらく無言だったが、私がお願い。と言うと扉を開けてくれた。

 「出てきてくれてありがとう。ここで話すのはあれだし…ちゃんと座ってお話しよう」
 「わかった」

 私と妹は部屋に戻って、ソファーに並んで座る。話を始める前に妹の涙を拭ってあげる。相当泣いてしまったみたいだ。妹のためを思ってのこととはいえ、酷いこと言ってしまったと反省をする。

 「あのね。宇佐美先輩とお母さんと話したんだけどさ、みゆ、県外受験するつもりはない?」
 「県外受験?」
 「そう。お姉ちゃんの大学の附属高校を受験しない?みゆの成績なら余裕で合格できると思うし、最近、人と少しずつ関われるようになったみゆなら普通に学校に通えると思うんだ。附属高校に通えばさ、みゆに何かあった時にお姉ちゃんが側にいて支えてあげられるし、お姉ちゃんが側にいないで他の高校に通わせるのもちょっと怖いしね…だから、県外受験してお姉ちゃんと下宿しよう。それなら、お姉ちゃんの側にいていいからさ。それに、附属高校に合格すれば、堂々とサークルに参加できるしさ、どうかな?」
 「みゆは…お姉ちゃんの側にいたい。お姉ちゃんと一緒にいたい。でも…やっぱり…高校生活に憧れとかもあったの…でも…1人になるのが怖かったの…お姉ちゃんが側にいてくれないのが嫌だったの…」
 
 私の提案を聞いて妹は泣いた。私に抱きつきながら泣いた。この子は真面目だから…変わらないといけない。このままではいけない。という自覚はあったのだろう。この子は賢い。だから、変わらないといけないと思っても勝手にブレーキをかけてしまっていたのだろう。私が、側にいない時に精神が不安定になったらどうしようもないから…だから、私の側にやって来たのだろう。いきなり、過ぎたよね。いきなり、1人になんてなれないよね。いや、人間1人では生きていけない。人は誰もが自分の支えとなる人を求めている。恋人や家族、形は様々だろうが…妹にとっての支えは…私なのだ。
 ごめんね。突き放そうとして…お姉ちゃんの側にいていいよ。お姉ちゃんを頼ってくれていいよ。お姉ちゃんはあなたの全てを受け入れる。

 お姉ちゃんの側で成長するといい。ゆっくりと、心の傷を癒して少しずつ、外へ向かえばいい。少しずつ、自立して、少しずつ、外へ旅立てばいい。傷ついたら、また、戻ってこればいい。お姉ちゃんはあなたをいつでも受け入れる。お姉ちゃんだから…あなたのことが大好きだから…

 「お姉ちゃん、みゆ、がんばる」
 「うん。応援するよ」

 妹はがんばる。と言った。これが、妹が外の世界へ歩み出す最初の一歩になることを願う。お姉ちゃんは精一杯、応援するよ。

 今日、妹に目標が出来た。外の世界に向かうための目標が、本来あったはずの妹の日常を取り戻すために妹は歩み始める。受験に関しては心配はしていない。心配なのは…入学してから…だから、それまでに、妹には多くの人と関わって欲しい。そのためにも、妹はこれからも私と吹奏楽をやって欲しい。







 

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