ジャスティン・ウォーカー〜予言の書〜

けんじぃ

予言の書

 通路を進んで行くとまた扉があった。開けてみると広い部屋に着いた。きっとこの部屋が最後だ。これまでと違って出口はなく、中央にはあの石版があった。どうやら予言を狙っているあの人はまだこの場所にたどり着いていないようだった。僕はほっとした。


僕は罠がないかおそるおそる石版に近づいた。何事もなく石版の前にたどり着くことができた。
石版にはいくつかの絵や模様が描かれていた。文字も見えるが全く分からない。イザベラが言っていた後継者に継ぐという言葉もあるのだろうか。
石版の中央にあのもようがあった三角形の中にさらに横線が一本、中央より下あたりに刻まれている。石版のある台にたってから気づいたが、同じマークが石版の周りを囲むようにして大きく地面に掘られていた。そして先生がみせてくれた石版の中央のくぼみがあった場所には緑色に輝く石がはめ込まれていた。
「この石は一体?」
「その石を手にとって。」
またあの女性の声が聞こえた。
僕をいつも助けてくれるあの声。僕は声の主を信じて石を手に取った。何も起きなかった。しかし次の瞬間。
「やっと私の声が届くようになったわ。」
後ろを振り返ると僕は信じられないものを見た。小さな女の子がヒラヒラ羽を羽ばたかせ飛び回っている。ぴったりな言葉は妖精だった。
「私は、風の精霊シルフよ。いつもあなたのそばにいたけれど、あなたの力はまだまだだから一生懸命話しかけても聞こえてなかったみたいだけれど。石の力が私とあなたをつないでくれているの。」
「いつも僕を助けてくれたのは君だったのか。君は一体なんなの?妖精さんなの?」
「私は風そのものよ。人が私を風の化身。風に意思が宿った存在。精霊とも言えるし、妖精とも言えるわ。」
「そうなのか。どうしていつも僕を助けてくれるの?」
「風の神に選ばれし者は1つの時代に1人。私はその選ばれし者を助け導く役割を担っているの。今この場所は風の神とつながることのできる世界でただ1つの場所よ。」
「僕、予言に関わるものを探しているんだ。知ってる?」
「もちろんこの遺跡の中で分からないことはないわ。ここでは風の精霊は風の神とつながって同等の力を発揮できる。予言に関わるものはもともとここにはなかったものだけれど、人間がこの場所に隠したのを感じる。こっちよ。」
シルフについていくと案内されたのは、壁のある場所だった。他の壁と何が違うのかまったくわからない。
「この場所を押してみて」
言われた通り押してみると壁はへこみ、壁の中から引き出しのようなものが出てきた。
そしてその中には何か入っていた。
「これは本?」
青い表紙に分厚い本があった。かなり昔からあったかのように本はぼろぼろだった。
「これは予言者達の予言が記された本ね。中から予言者の記を感じる。」
「これが予言」
この中にエピメデスという人の予言も書かれているのだろうか。僕に関わることも書かれているのか。
「予言者も運命の神の代弁者として選ばれるのは四聖と同じく1人。この書は人間たちにとって、とても貴重なものね。」
「四聖って?」
「風、火、水、土の神に選ばれし者達よ。四大精霊の私達をそれぞれ従え、試練を乗り越え神の意思を継ぐ者。あなたはこの時代ただ一人の風の神に選ばれし者になりえる存在。また詳しくは話すわ。それより予言が欲しかったんじゃないの?」
「そうだった。」
僕は予言の書を開こうとした。すると僕がこの部屋に入ってきた扉の開く音がした。
予言の書を狙っている人がついにきてしまったのかもしれない。
僕は予言の書を背中に隠して身構えた。


扉の向こうから現れたのは、あの人でもなかった。ハワード先生でもなかった。

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