ジャスティン・ウォーカー〜予言の書〜

けんじぃ

仕掛けられた罠

 イザベラが何やら持ってくるものがあるとかで少し待った。イザベラはリュックを背負っていた。
「救急セットといくつか役に立ちそうなものを入れてきたわ。」
「それはナイスだイザベラ。」パーシルは感心したように言った。
それからどうやってやってきたのか分からないくらい、あっという間に遺跡のある森までやってきた。
 リリーの能力は音は消せないから息をひそめてここまで来た。立入禁止の看板の前でリリーは能力を解いた。ひどく疲れた様子だった。
「大丈夫?」僕はリリーの背中をさすりながら言った。
「大丈夫よ。こんなに長く使うのは始めてで。けど少し休めば大丈夫そうよ。」
「じゃあここまでやってきたけどどうする?」イーサンがイザベラとパーシルの方を向いた。
「とりあえず砂漠の砂嵐はジャスティンに任せましょう。それより犯人がいないかが心配だわ。森の中の遺跡までは私の能力でも確認できない。」
「それなら僕が偵察にいこう。1人なら気づかれにくいし、能力的にも僕が適任だと思う。少し待っていてくれ。」
パーシルはそういうと森の中へと入っていった。
しばらくするとパーシルは急いでいる様子で戻ってきた。
「犯人はいなかった。いや砂漠にはというべきだろうな。砂漠に近づいても砂嵐は発生しなかった。犯人が先に突破したのかもしれない。」
「そんな。急がなきゃ。」僕はリリーを支えながら言った。
「そうね行きましょう。リリー行ける?」
「ええ。スピリットの使いすぎなだけだから能力をつかわなければいけるわ。それにすぐにスピリットも使えるようになると思う。」
「じゃあ行こう。イザベラ、君は戦闘で周りの様子をみてくれ。その後ろにイーサン。何か緊急の時の対処を。僕はリリーを守りながらみんなをフォローする。そしてジャスティンは一番後ろからの支援だ。」
僕達はパーシルのいう陣形を作ってゆっくりと森の中へ進んだ。
すぐに夜の森から目の前が砂漠へと変わった。月がほとんど消えかけて、うっすらと砂漠が見えるだけだった。
パーシルの言ったように、砂漠に近づいても砂嵐は発生しなかった。
「あの砂嵐を抑えるなんてすごい能力の持ち主だな。」
イーサンが何気なくいった一言で僕達に緊張が走った。この先いつ犯人と出会うか分からない。
かなり歩いてようやく、遺跡の入り口にたどり着いた。入り口まで何事もなく無事に着くことができた。
近くで見ると遺跡はとてつもない大きさだった。入り口と思われる四角いひらけたところもとても人のための入り口とは思えなかった。遺跡の壁はレンガのように四角い石がつまれている。これを作った能力者達はすごすぎると思った。能力者が作ったと分かっていてもすごいのに、旧世界では能力なしで作られたと考えられていたなんてバカげていると感じた。
入り口の向こう側はまったく何も見えなかった。
「念灯をもってきておいてよかったわ。」
そういうとイザベラはスピリットを込めて灯をつけた。
「みんないつでもスピリットを使えるようにしておくんだ。」
しばらく入り口からまっすぐ歩いた。このまま何もなければいいのにと思った。
「ストップ。何か見えるわ。」
僕達は止まって、ゴクリと息を飲んだ。
「この先に糸のようなもの無数に張られているのが見える。私でも少ししか見えないくらいよ。私の動きについて、指示する通りにいけば大丈夫だけど、絶対に触れない方がいい。糸は見えにくいけど中にすごい量のスピリットが込められてる。」
「右足をあげてすぐ上にもあるからまたいだらすぐに頭を下げて…」
僕達はかなり注意しながらゆっくりゆっくりと進んだ。
「最後よ慎重に」
なんとかこえられたかと思ったその時、リリーが少しよろけてしまった。
どうやら糸に触れてしまったようだ。でも何も起きなかった。
「私ごめんな…」
「待って動かないで!」
するとイザベラが叫んだ。
「後ろからすごい勢いでフェンスみたいな糸が来てるわ。来る!」
「ジャスティン僕達をいそいで前に向かって吹き飛ばすんだ。」
考える暇もないくらい僕は出来る限り強い風を想像してみんなを吹き飛ばした。僕達は宙に浮いて100メートルくらい飛ばされて地面に打ち付けられた。
「いってぇ。みんな無事なのか。」イーサンの声だ。念灯が離れたとこに落ち、暗くて見えなかったがみんなが無事だという声が聞こえた。
イーサンが念灯を拾うとみんなの姿が見えた。なんとかみんな立ち上がった。
周りを念灯で照らすと通路は終わりさらに広い場所に僕達が放りだされたのが分かった。


円形の広場の周りにそれぞれの通路が四つあった。どれが正しい道なのだろう。
少しこの入り口から風を感じた。目を閉じてもっと風を感じようとするとあの声が聞こえてきた。
「こっちよ。」
僕はすぐにみんなにこっちが正しい道だと思うと伝えた。
「こっちから風が来るのを感じるんだ。」
「どうせ正解の道なんて分からないんだし、ジャスティンを信じて進もう。」イーサンが言った。僕達は長く暗い道を再び光を頼りに歩き出した。道は坂になっていてだんだんと急になってくるようだった。
しばらくして、道は2つに分かれていた。
「どっちの道か分かる?ジャスティン」リリーが聞いてきた。
目を閉じたがどちらからも風を感じる。声は聞こえてこなかった。僕は首を横に振った。


「まてよ。何か音がこっちの道から聞こえてくる。」
たしかにイーサンのいう道から音が聞こえてくる。音はやがてはっきりきこえるくらいに大きくなってきた。
するとイザベラが叫んだ。
「岩よ。かなり大きい岩が転がってくるわ。」
イザベラが言う頃には音はすごい大きさになっていた。
「イーサン!」僕達みんなが叫んだ。
イーサンは言われるまでもなくはっきりはまだ見えない岩に向かって能力を使った。
少し岩が転げてくる音がゆっくりになった。
「ダメだ。こんなに大きい上に岩のスピードですごい力だ。スピードを下げるのが限界だ。このままじゃ入ってきた道を塞がれてしまう。」
しばらくしてイーサンが続けて言った。
「みんなは、先に言ってくれ俺はさっきの入り口まで岩と一緒に戻る。入り口は塞がれるけどみんなが帰れる道を作れるように助けを呼んでくる。」
「大丈夫なのか?イーサンこの岩をこのまま入り口まで運ぶなんて。」パーシルが心配そうに聞いた。
イーサンは頷いて答えた。
「もうすぐこの分かれ道に岩がくる。全員入り口まで押し戻される前に早く進むんだ。」
パーシルはイーサンの返事を聞いて覚悟したように言った。
「よし。岩のことはイーサンに任せて大丈夫だ。イーサンのためにも早く予言のもとにたどり着こう。」
「頼んだぞ。」
僕達は岩が来ていない方の道に入った。入ってすぐに岩はすぐそこまで来ていたことが分かった。岩と一緒にイーサンは入り口の方へと戻っていった。
「さぁ進もう。」パーシルが言った。
「待って。」イザベラが言った。
「イザベラ気持ちは分かるがイーサンのためにも先を急ごう。」
「違うの。あの岩がもし侵入者を予言に近づけないための罠なら、侵入者を閉じ込めるためだけではなく、間違えた道に進ませるためのものかも。あっちの岩が通った道が正しい可能性が高いわ。」
「そうかも。」僕とリリーは賛成した。
「確かにその通りだな。イザベラ君の頭のよさには感心するよ。こんな時でも冷静に対処できるのは君の才能だ。」
そう言われてイザベラは少し照れたようだが意を決したように言った。
「さぁ進みましょう。イーサンのためにも私達だけで犯人より早く予言を見つけるしかないわ。」



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