ジャスティン・ウォーカー〜予言の書〜

けんじぃ

能力対抗戦

 それからしばらくして、掲示板に正式に僕達四人の名前が能力対抗の学年代表として名前にあがった。
  僕達は放課後、トレーニングルームで能力の訓練をし始めた。まずは、お互いの能力をよく知ることから始めた。イーサンは昔から物を動かすことが得意だったがこの一年で複数の物を同時に動かすまでに上達していた。イザベラとは組手をたくさんしたけれど勝てたのは2回だけだった。それも風の力をうまく上乗せできた時だけで、次の動きが分かっているかのように僕の力は受け流される感じだった。リリーはイーサンの動かしているものを透明にしたり、自分が透明になれる時間を増やしたりする訓練をしていた。
「まだ人を透明にするまでには時間がかかりそう。できてもほんの少しの時間だけ。」
「リリーの能力って俺の催眠と似てるんだったよな。俺が補助能力も鍛えて、リリーをサポートできればいいんだけどな。」
そう言って、イーサンはまた別の訓練を始めた。
それぞれの訓練以外にも僕達は過去の課題も参考にしながらみんなで特訓をはじめた。サッカーのようなスポーツ形式の試合や念具をみんなで交互に動かしていくような試合が過去にあったようだ。
どうやら能力者同士の試合は2年生以上のようで、過去の試合を見ると全員で何かするような試合のようだ。
1年生の課題は試合当日に明かされるまで分からないようだから僕達はいろんなことを想定して特訓した。


試合当日。朝食に行くと大広間は、歓迎ムードでいっぱいだった。
「いったいどんな課題…」
僕の声は僕達四人が大広間に入った瞬間シルフのみんなからの声援でかき消されてしまった。
「がんばれよ。」
「期待してるからな。」
「応援してるわ。」
知らない人からもたくさんの声援をもらった。イーサンは笑顔で答えている。イザベラは何事もないようにいつも通りだった。リリーは下を向いている。僕と同じでこういうのは苦手みたいだった。
先に着いて朝食を取り始めた。いつもと同じようにおいしそうなのに、食べ物が喉を通らない。
「では、選手以外は全員バトルフィールドの観客席にいくのじゃ。」校長先生がそういうと選手以外は大広間を出て、バトルフィールドに向かった。
周りを見回すと見たこともない人ばかりだった。1年生は能力訓練で全員顔は知っている。2年生以上の上級生はほとんどが知らない人だった。でも最上級生の四人は監督生だから知っていた。上級生は慣れているのかみんな笑顔でおしゃべりをしていた。するとパーシルが近づいてきた。
「どうだい?緊張しているかい?僕も代表は3回目だけど全然慣れないんだけどね。」
「全然そんなふうに見えないけど。」
「まぁね。今回僕達は1対1の純粋な能力バトルだからね。実力はほぼ同じだからオーダーを考えて後は能力の相性次第さ。さぁいこう。」
パーシルについてバトルフィールドに着いた。
ちょうど野球の試合会場みたいに円形のフィールドを囲むように観客席からみんなが応援している。僕達は観客席より下の選手達の控え席に座った。
「それでは諸君。」
観客席の上の方から校長の声が拡声されて聞こえてきた。観客席が急に静かになった。
「ただいまより能力学年対抗戦を行う。今年の対戦は、7年生、1年生、3年生、5年生、4年生、6年生の順で行う。」
 少し観客席がざわついた。
「いきなり最高学年の試合かよ。これはすごいものが見れるぜおい。」イーサンはかなり興奮している。
「7年生は個人による能力対決じゃ。まずはシルフ対サラマンデル。選手は舞台中央へ。」
「じゃあ行ってくるよ。」パーシルは笑顔で僕達に手を振って選手のみんなと舞台へと行った。
「がんばって!パーシル」みんなで声援を送った。
ちょうどシルフの選手がいる正面からサラマンデルの選手が入場してきた。
「ではルールを説明する。1対1で能力対決を行い、場外もしくは戦闘続行不能になるまで闘う。ただし、戦闘可能であれば、メンバー同士の戦闘の交代を一度のみ認める。その場合場外のメンバーとタッチするように。では1番目の選手以外はフィールド外へ。」
そうするとシルフで残ったのはパーシルだった。そして相手選手はなんと、サラマンデルの監督生だった。
「君と闘うのは初めてだねレイ」
「そうだな。パース。手加減するなよ。」そういうと二人は少し距離をとった。二人の様子は観客席のモニタに大きく映し出された。
フィールドの審判はハワード先生だった。
「では試合開始。」


開解カイカイ」 「解放リリース」2人同時にかなり大きなスピリットが二人をつつんだ。
「ヒートアクセル」
先手を取ったのはレイだった。レイのスピリットは赤く燃えるようなスピリットに変わった。
熱気泡サーマル」そういうとフィールド中に小さく赤い玉のようなものができた。
「あの球、中はとんでもない熱さだわ。」
イザベラが言った。
「これは触れるとやっかいだな。」次に動いたのはパーシルだった。
「超加速」スピリットが足に集まりブーツのような形になった。するとパーシルは見えなくなり、残像のようなものが動いて見えるだけになった。影は球をかわしレイへと近づいていく。
「散」レイが両手を広げクロスさせた瞬間小さい球はあらゆる方向に交差し、何かにあたったように爆発した。
「くっ。」爆発した煙の中からパーシルが地面に倒されているのが見えた。と思ったのもつかのま、パーシルの肩に手が触れ
発火イグニッション
パーシルは炎に包まれたかに見えたがすばやく回転して火は消された。
 すると、パーシルはその勢いで急速に回転を速めパンチを繰り出すような体勢で止まった。すると見えない空気が押し出されたかのようにレイに襲いかかった。そのままレイは場外へと吹き飛ばされてしまった。
 「勝者はパーシルじゃ。」その瞬間にフィールドは歓声に包まれた。
「すごい闘いだったなジャスティン。パーシルは単純な脚力強化なんだな。それでも熱を扱う監督生を圧倒してたな。」
「うん…」僕はぼんやりと答えた。7年生になった自分がパーシルに重なって見えた。いったんパーシルは交代した。その後の試合もすごかったが正直1戦目ほど興奮できはしなかった。結果3勝1敗でシルフが勝った。
続く、ウィンディーネとノームは2勝2敗で、先生達の審査により戦闘内容が評価され、ノームが勝った。
いよいよ僕たちの番が来た。
「次は1年生の番じゃ。では準備するかの」
そうすると様々な障害物のあるフィールドに変わった。そして選手控えの真ん前、フィールドの四隅に高台が出てきた。
「では1年生の代表は全員高台の上へ」
4つの寮の代表選手が全員出てきた。フィールドを全方向見渡せる。
「では、ルールを説明する。1年生の試合はコマ弾きじゃ。コマはスピリットを込めることで回転を始める。1人で回すもよし、4人で回すもよし。また、能力を使ってコマを動かすもよし。自分のチームのコマを使って、他のチームのコマを弾いて、最後まで残ったチームから順位がつけられる。ただし、相手チームのコマに能力を使ってはならぬ。よいか?では5分で用意されているコマの中から1つのコマを選び、作戦を練るのじゃ。では始め。」


こまは10種類あった。僕達はイザベラが選んだラグビーボールのような形のものにした。
「いい?まず私がコマを操作する。私の力は直接は役に立てないけど、目を使って操作していくわ。試合と同時にリリーがコマを透明にする。そしてジャスティンはフィールドをコントロール。余裕があればコマの周りに渦を作るイメージで回転を速くしてほしいの。イーサンはコマの回転を安定させるのと同時にリリーを補助してくれる?」
これだけの作戦をイザベラはすぐに立ててみせた。
「私が操作することはできるけれど、相手のコマを弾くその瞬間にパワーが必要なの。ジャスティンは移動の時にはコマの回転力をあげる程度の風で、私が指示したときに風の力を開放してほしいの。そして、一番大変なのはイーサンよ。コマを直接操作することで安定、そして突発的な動きに対応。それと同時にリリーの透明の補助。さらにジャスティンが力を開放した時にコマが吹き飛ばされないように制御するの。かなり大変だけどあなたにしかできないわ。」
しばらくして各代表の選手はフィールドにコマをセットした。
「では試合開始じゃ。」
そういった瞬間会場は一気に動いた。ノームはとんでもない量のスピリットがコマに込められて弾むようにバウンドしながら力強く動き出した。どうやら四人のスピリットを込めたいるようだ。サラマンドルはすごい速さでジグザグにコマを動かし始めた。
「リリーまだよ。」
ウィンディーネとシルフのコマは回転しながらもその場を動かない。
するとウィンディーネの代表選手からかなりのスピリットがフィールドに込められてなんと薄い霧がで始めた。
「これはこっちには都合がいいわ。リリー今よ。コマを透明に。イーサンサポートお願い。私にはしっかり見えてるわ。」
「しばらくは様子をみながら隙を見て攻撃しましょう。ウィンディーネのコマも岩陰に隠れてるわ。」
するとすごい音がした。ノームのコマが霧を突き破って高く飛んで回転しながら地面につっこんでフィールドを破壊していく。
「これは隠れている場合じゃないわね。」
僕たちのコマも細かく動きながら移動した。ウィンディーネも動き出したようだ。
「こうなると霧は邪魔だわ。敵を目で追うのにスピリットの無駄遣いをしたくないわ。ジャスティン、風で霧をはらって。」
僕は火事の時のように風の塊を爆発させて霧を吹き飛ばした。僕達のコマ以外はっきり見える。フィールドはノームのコマのせいで穴だらけだった。するとノームのコマがウィディーネのコマに向かって突撃した。それをウィディーネのコマは地面をすべるように滑らかに交わした。不思議なことにノームのコマの威力は地面に吸収されたようにして、地面は無事だった。威力は高いノームのコマだったが、地面がすべるようになり態勢を崩した。ノームのコマにチャンスとばかりにサラマンデルのコマがすごい速さでぶつかっていった。しかしノームのコマが弾ける際にかなりの衝撃でノームのコマが場外になった後サラマンデルのコマもはじき出されて場外となった。
残ったのは僕たちのコマとウィンディーネのコマだった。僕たちのコマは透明のままだった。
「さっき。ウィンディーネにノームが攻撃した時すべるように動いてたわ。何かの能力ね。気をつけないと。」
「でも俺らのコマは相手には見えてないから有利だぜ」イーサンが笑顔で言った。
するとそう言ったのもつかの間。僕たちのコマめがけてウィディーネのコマがすべるようにやってきた。
「どうして?」僕はみんなに聞いた。
「多分イザベラと同じように見える能力なんだわ」リリーが言った。
ウィディーネのコマが僕たちのコマを捉え囲むように動きながら何度もぶつかってきた。
「こうなったら、最初に言ったようにジャスティン私の言うタイミングで風の力を開放。イーサンはできるだけ安定するようにお願い。」
ウィディーネのコマがまたぶつかってきそうになった時
「今よ。」
僕達のコマは大きく回転しサラマンデルのコマを弾き返して、サラマンデルのコマは空中を飛び場外に出た。
「1年生の勝負はあったようじゃ。1位はシルフ、2位はウィディーネ、3位サラマンデル、4位ノーム。非常によい試合じゃった。」
僕達はみんなで抱き合った。
「やった!俺達が勝ったんだ!」
「では、フィールドを変えるので各寮はコマを片付けるように。」
「よし。じゃあ俺が操作して。」
「まってイーサン。僕が取りに行ってくるよ。僕達と一緒にがんばってくれたし。」
僕はそういうとフィールドまでコマを取りにいった。コマを拾い上げようとした時
「まってジャスティン!」高台を振り返るとイザベラが叫んでいた。
「コマを見て!」
コマを見ると試合が終わったというのに僕達のコマが回り始めた。すごい量のスピリットが込められている。しかも他の寮のコマも回り始めた。
「早く戻って!ジャスティン!」
フィールドには僕一人だけだった。コマはやがて僕に向かってすごい勢いで向かってきた。
「イーサン!コマを操作して!」リリーが叫んでいる。
「やっているけど、俺のスピリットが弾かれてしまう。」


コマはすごい勢いでつっこんでくる。
風で押し返しても無駄だった。ノームの人達が操作していたみたいに4つのコマが空中に浮いて僕に向かってきた。あの威力でぶつかったはただじゃすまないだろう。僕はどうしていいのか途方に感じた。
「風を感じて。私の言霊に従って。」
風障壁ウィンドウォール」僕と彼女の声が重なった瞬間。竜巻が僕の盾になって、コマを巻き込みながら吹き飛ばした。すぐに竜巻は消え、コマは壁にのめり込んでいた。


次の瞬間、僕の目の前は真っ暗になった。



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