話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

僕はそれでもキックをおろす

Restive Horse

キックから始まる冒険の始まり

「ガコッ」
もうウチに来て一ヶ月。
毎日のように乗って、だいぶ慣れてきた。
キック始動だってお手の物だ。

いつもは通勤と買い出しの足として近場を走り回ってた。
でも、今日は違う。
今日は思い切って100km先の大洗を目指す。
昨日のうちに、ガソリン、空気圧と確認に余念がない。
ただ、昨日から楽しみだったのもある。



暖機運転を終わらせて、少し吹かしてみる。
調子は良さそうだ。

いつも走る道から逸れて、走り出す。
冒険の始まりだ。
カブと一緒の初めての冒険。
一人じゃないのが心強い。



しばらく走って、国道213号線と合流。
このまま山間部を走っていく。
まだ朝だからか、国道の割には車が少なく走りやすい。
コーナーを右へ左へとクリアしていく。
力がなくたって、後ろがいなければ問題ない。
カブ確実に走ってくれている。



山間部を抜け、大洗までの看板を頼りに走り続ける。
カブはなにも変わらず調子よく走っている。
自宅から大洗まで約100km。
大洗までの看板を見ると近づいているのがよくわかる。
信号待ちでヘルメットのシールドを開ければ、潮の香りが次第に漂ってくる。
国道51号線から立体交差を右折すれば、そこに待ち受けてるのは海だった。



シールドを開けて潮風を浴びながら海岸線を走り抜ける。
ここまで4時間弱。
鳥居の下をくぐって、駐車場にカブを止める。
「カブ、海だよ。見たことある?」
なんて呟いてみる。
おそらく、カブは県を出たことがない。
海なんて見たことがないだろう。
こんな絶景をたくさんカブに見せてやりたい。
そして、自分もカブと一緒に景色を見たい。
そんな風に考えてしまった。



「グゥ〜」
腹が空腹と昼時を伝える。
そういえば、通り道に海鮮のお店があったのを思い出した。
カブのキックをおろして、きた道を少し戻る。
海鮮の看板と香りに連れられて、一軒のお店にたどり着いた。
メニュー表を見るとおいしそうな海鮮丼の写真と表記がある。
迷わず発券機のボタンを押して店員に渡す。
料理を待ってる時間がまた、たまらない。
どんな味なのだろうかなど妄想が止まらない。
目の前に運ばれた海鮮丼は輝いて見えた。
ひとくち、ふたくち、箸が止まらない。
あっという間にたいらげてしまった。



食後のコーヒーをいただきながら、外を見つめる。
こんなところまで、原付でこれてしまうことに今さら驚く。
いや、カブだからたどり着けたのかもしれない。
折り紙つきの耐久性に、意識しなくても70km/lを叩き出す高燃費。
カブは働くバイクであると同時に、冒険にも適した乗り物なのだ。



店を出て、またキックをおろす。
「また海見に来ような。」
なんて呟きながらきた道を引き返した。

「僕はそれでもキックをおろす」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「冒険」の人気作品

コメント

コメントを書く