宣告師

カズキ

佐藤さん②

「この3ヶ月間、何かされましたか?」
 佐藤さんの奥さんが余命宣告されてから、3ヶ月が経った。今はその奥さんの智恵子さんと話している所だ。少し前まで歩いていたのに、今は寝たきりになり、どんどん衰弱していっているのが分かる。
あれから、宣言師として仕事をしていたが、どうしてもこの夫婦の事がどうしても気になり、今日は上司に頼んで普通の病室のスタッフとして仕事をすることとなった。
「そうはねぇ、いろんなところ旅行して、いろんな美味しい物食べて・・・私の最後を旦那と楽しんだわ」
 微笑みながらそう答えた。
「そうなんですね。それじゃあ、血圧測るんで右腕出してください。」
「あっ、ごめんなさい。左腕でいいかしら。」
「はい、いいですけど」
田口は血圧を測定する機械を左手腕につけた。
「ごめんなさいね。いつも左腕で測っててるから、右腕だと思うと、いつもと違って心配で」
「あっ、別にどっちでもいいですから。」

「はいっ、これで終わりです。それじゃあ、これで失礼します。」
 田口はそう言いうと、奥さんは笑顔で返事をした。そのまま病室から出ようとした時。

 ガラガラ

 旦那さんだ。

「あっ、お、お久しぶりです。こ、こんにちは」
 どこか緊張した旦那さんが丁度、病室に入ってきた。
「こんにちは。僕はこれで失礼しますね。」
 田口は軽く会釈をし、病室を後にした。

「田口、お前やけに今回の患者さんに熱心だな。なんかあったか?」
 西村か、彼は俺と同期の医師で長い間仲良くしてる医師の友人だ。
「いやぁ、それがよ。佐藤さんっていう余命宣告されてるところがあるんだけど、そこがどうも、こう、腑に落ちないんだよ。どういう事かと言うと・・・」

 田口はありのままの事を話した。

「へぇ〜そうなんだ。」
「なんだお前。やけに俺の話しをちゃんと聞いてくれたな」
「いやいや、だって田口が生きてて不思議に思う事があるんだなって」
 感に触る奴だなぁ、俺だって何故お前より優秀な俺が宣告師やってるのか不思議に思ってるよ。
「それで、何かわかるか。なぜ余命宣告をした時、佐藤さんの旦那は笑ったのか」
「ふっ、ふっ、」
「おっ、お前何か分かったのか?」
 田口は身を乗り出して聞いた
「ふっ・・・何も分かるわけねぇだろ。」
「って、なんだよそれ。」
「ただ、」そう付け加え、西村は田口の目を見て言った。
「思い出してみろ。お前はきっと答えを見たはずだ。」
「・・・は?何言ってんだよ、全く。なんも見てな・・・ん?まてよ。」

俺は確かに見た。今の佐藤さん達との会話で。思い出せ。何か、何か、ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

     右腕を隠す智恵子さん
     慌てたそぶりの信彦さん

「・・・まっ、まさか」
 西村はやっぱりというような顔をしている。
「おい西村。全て分かったぞ」

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