界外の契約者(コール)
15話 wicked@状況も味方も幼馴染もヤバい
「……えぇな。これでえぇんやなぁ!」
そう言って工場内に響くように叫ぶ。
叫び散らす。
「おいおいおいおい! ワテの手札が無くなったんやで!これは勝率も上がったも同然やで!」
突然のことにヨグも、出てきた2人も、虫けらのように転がってる霧島も驚く。
驚かなかったのは人形のような銀城の部下達だけだ。
「なに?頭イカれた?」
「いんや、むしろスッキリしたで。おおきにな!」
そう言って銀城は指を鳴らす。
すると、無表情で身動きせずにたっていた部下達が急に動き出し、みんな同じような仕草でポケットからあるものを取り出す。
それは一つの藁人形だ。
「さーて、お前らの感情は『絶望』一択やで!そんで全員でヨグと霧島以外を殺せぇ!」
そう言った途端に彼らが手にした藁人形が禍々しく、黒く鈍く光り始める。
「……あれ、 まさか私たちが標的になってる!?」
「う、嘘ですぅよねぇ? わたしたちは何も言ってませんよぉ!?」
反論する標的。
下田アリアと神宮寺孝作inこっくりさんに対して銀城はニタリと笑い説明する。
「せやな、でもウチらが欲しいんわオマケやのうてヨグの方や。よく見ると界外術師っぽいけんど、こんな小学生体型のメンバー欲しくないわ。せやから後生や、死んでくれ。な?」
そう説明する間にも部下達の持っている藁人形が変化する。
まず藁人形が人間と同じくらいの大きさになると、頭の部分からは黒い眼球のようなものが生え、両腕はかぎ爪や刃物に変わったり、ある藁人形はノコギリのような形状の腕になり。中には翼や足が数本新たに生えて蜘蛛のような人形もいる。
「これって……!?」
この気味の悪い変化を見ていたこっくりさんはあることに気付く。
「それって付喪神なんですぅか!?でも、こんな禍々しい付喪神はわたしも見たことありません……」
その驚きを隠しきれずに神宮寺の顔で驚くこっくりさん。
こっくりさんは急いで視線を移し、側にいた自分の界外術師であるアリアにどういことかを分析して貰おうとした。
しかし、アリアは顔を下に向けたまま黙っていた。
心なしか、肩が微妙に震えている。
「おいおいおい! ウチらの界外したモンに驚いてんのか嬢ちゃん!! 残念やけどこいつは普通の『付喪神』とはちゃう、喋れへんし知恵もない。しっかし、人間1人を行方不明扱い出来るくらいに証拠も痕跡も残さず殺すことができる。ウチらの歩兵や!!」
周りの藁人形の喪神達は一斉に攻撃態勢のような姿勢になる。
あるものは鎌を指でなぞり、あるものは奇声を上げてよだれを垂らす。
最早、さっきまで同一の藁人形の面影は一切なくなっており、辺りは奇妙な異形を遂げたナニカだ。
しかし、この状況下でも余裕を持ち、頂点にいたのはヨグだ。
「とりあえず、弱そうだし苦労しないで壊せるでしょこれ。ぶっ壊すけど」
ヨグはそう言って触手を無数のように袖口から覗かせて藁人形達に向かい合う。
しかし。
「おっと、動かんほうがええで」
銀城がヨグの動きを止めるように言う。
「なんか不思議に思わへんか? お前の界外術師が静かやって」
そう言って指をパチンと鳴らす。
すると、さっきまで床に転がっていたはずの霧島が立ち上がり、自ら縄を解く。
そしてポケットからあるものを取り出して自らの額に突き付ける。
拳銃だ。
「ちょっ! あんた何してんのよ!?」
ヨグが銃を取り上げようと空間にヒビを入れる。
「動くなっちゅってんやろが!!」
ヨグはピタリと止まり、銀城に向き合う。
「………あんたの神、確かにこの手で消したわよね。なら、これはどうやってるのかしら」
本来なら、界外した神がこの世界から消えた後、その神の効力は持続することなく共に消えるはずだ。ヨグはそう認識している。
「こいつはネタバレやけど。ワテは生まれつき特異な目を持っとるんよ」
そう語ると銀城は、自分のサングラスを外し、ヨグに見せつける。
「へー、面白いわね。何それ『邪眼』?」
「せや、世界中に点々と存在する呪術を持った目、ワテもその1人なん。」
銀城の目、両目は普通の人間のとは違った。そこにはあるはずの眼球が無く、二つの真っ黒い穴があるだけだ。だがその二つの穴の奥はさらに闇が広がっているようで、どこか別の世界につながっているようだ。
「最初こいつにあった時にちょいと呪術掛けといたんや。あん時の判断は正解やったね」
そう言うと再びサングラスを掛けてヨグに歩み寄る。
「面白いやろ? これでお前さんはこいつに近づけへんで。なんせ『ヨグが近づいたら撃て』って術掛けといたんやから」
そう言ってヨグの肩をぽんっと叩く。
本来ならこの行為自体が、副神であるヨグ=ソトースの怒りに触れるのだが、ヨグはあえて我慢をする。
この場でもし、この銀城という男を殺すことによって『邪眼』の効力が切れ、霧島が助かるなら躊躇なく殺すが。相手がそれを読んでいて近づいて来ている。
おそらく、自身が死ねば自害するように暗示を掛けていると思われる。
霧島が死ぬ。そうすると、せっかく界外した自分がこの世界から消えて、また何年も呼び出されるのを待つしか無くなる。
このチャンスはモノにしたい。
(今、この場に連れてきたあの子らには悪いけど、死んでくれないかな……)
そう胸中に思いヨグは歯をギリギリと鳴らして屈辱に耐える。
そんなヨグを見ていた銀城は「ええな」と言ってヨグから離れる。
そして、俯いている下田アリアと慌てふためくこっくりさんin神宮寺から約5メートルほど離れたところで銀城は止まる。
「最後に言いたいことがあるんやったら聞くで、ただし1分でな」
そう言って銀城は右手を高らかに掲げると直立する。
それに従って、他の男女、銀城に操られていると思われる者たちが界外した付喪神たちも、各々が戦闘を始めたくて疼き始める。
数はおよそ40体。
もはや絶体絶命の状況下だ。
「ヒャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!! どうかお命だけわァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
こっくりさんが泣き叫びながらアリアの服を掴んで寄りすがる。
そして、こっくりさんは聞いた。
ナニカ………を。
「小さい………小学生?……やっぱり幼児にみえるのか…………そっか………そっか………、孝作からのアダ名もガラパゴスだし………納得…………。……下の名前のアダ名考えろよ…………、なんで…………のかな………小さくて………小さくて……、私は………もっと出るとこ………ちゃんと牛乳………お母さんもでかいし………、それより………作の妹からも…………あの子………義妹にすんのに………今そんな話…………よし………あのグラサン………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ヤロ」
アリアはブツブツと何かを呟きながら顔をうつむかせていた。それを聞いたこっくりさんはまずいと思い、すぐに神宮寺との憑依を解く。
「緊急脱出ゥゥゥゥ!!!」
「……へ?」
一目散と、姿を空気に溶け込ませるように消えるこっくりさん。
そして取り残されるほけっている憐れな主人公、神宮寺孝作と少しヤバい幼馴染下田アリア。
その一連の行動を見て対する銀城は。
(この小僧、今確かに界外した神が体内に入ってたな。なんや………)
似ている。
あの少年が自分の持っている『邪眼』と同質の怪異や特異に似ていると。銀城はそう思った。
けれど。
「時間やで、最後の言葉は『へ?』でええんやな。ほなさいなら」
銀城が静かに右手を下ろす。
すると待ってましたとばかりに、『絶望』の意思で界外した恨みつらみが籠った付喪神達が一斉に神宮寺に襲いかかる。
そう言って工場内に響くように叫ぶ。
叫び散らす。
「おいおいおいおい! ワテの手札が無くなったんやで!これは勝率も上がったも同然やで!」
突然のことにヨグも、出てきた2人も、虫けらのように転がってる霧島も驚く。
驚かなかったのは人形のような銀城の部下達だけだ。
「なに?頭イカれた?」
「いんや、むしろスッキリしたで。おおきにな!」
そう言って銀城は指を鳴らす。
すると、無表情で身動きせずにたっていた部下達が急に動き出し、みんな同じような仕草でポケットからあるものを取り出す。
それは一つの藁人形だ。
「さーて、お前らの感情は『絶望』一択やで!そんで全員でヨグと霧島以外を殺せぇ!」
そう言った途端に彼らが手にした藁人形が禍々しく、黒く鈍く光り始める。
「……あれ、 まさか私たちが標的になってる!?」
「う、嘘ですぅよねぇ? わたしたちは何も言ってませんよぉ!?」
反論する標的。
下田アリアと神宮寺孝作inこっくりさんに対して銀城はニタリと笑い説明する。
「せやな、でもウチらが欲しいんわオマケやのうてヨグの方や。よく見ると界外術師っぽいけんど、こんな小学生体型のメンバー欲しくないわ。せやから後生や、死んでくれ。な?」
そう説明する間にも部下達の持っている藁人形が変化する。
まず藁人形が人間と同じくらいの大きさになると、頭の部分からは黒い眼球のようなものが生え、両腕はかぎ爪や刃物に変わったり、ある藁人形はノコギリのような形状の腕になり。中には翼や足が数本新たに生えて蜘蛛のような人形もいる。
「これって……!?」
この気味の悪い変化を見ていたこっくりさんはあることに気付く。
「それって付喪神なんですぅか!?でも、こんな禍々しい付喪神はわたしも見たことありません……」
その驚きを隠しきれずに神宮寺の顔で驚くこっくりさん。
こっくりさんは急いで視線を移し、側にいた自分の界外術師であるアリアにどういことかを分析して貰おうとした。
しかし、アリアは顔を下に向けたまま黙っていた。
心なしか、肩が微妙に震えている。
「おいおいおい! ウチらの界外したモンに驚いてんのか嬢ちゃん!! 残念やけどこいつは普通の『付喪神』とはちゃう、喋れへんし知恵もない。しっかし、人間1人を行方不明扱い出来るくらいに証拠も痕跡も残さず殺すことができる。ウチらの歩兵や!!」
周りの藁人形の喪神達は一斉に攻撃態勢のような姿勢になる。
あるものは鎌を指でなぞり、あるものは奇声を上げてよだれを垂らす。
最早、さっきまで同一の藁人形の面影は一切なくなっており、辺りは奇妙な異形を遂げたナニカだ。
しかし、この状況下でも余裕を持ち、頂点にいたのはヨグだ。
「とりあえず、弱そうだし苦労しないで壊せるでしょこれ。ぶっ壊すけど」
ヨグはそう言って触手を無数のように袖口から覗かせて藁人形達に向かい合う。
しかし。
「おっと、動かんほうがええで」
銀城がヨグの動きを止めるように言う。
「なんか不思議に思わへんか? お前の界外術師が静かやって」
そう言って指をパチンと鳴らす。
すると、さっきまで床に転がっていたはずの霧島が立ち上がり、自ら縄を解く。
そしてポケットからあるものを取り出して自らの額に突き付ける。
拳銃だ。
「ちょっ! あんた何してんのよ!?」
ヨグが銃を取り上げようと空間にヒビを入れる。
「動くなっちゅってんやろが!!」
ヨグはピタリと止まり、銀城に向き合う。
「………あんたの神、確かにこの手で消したわよね。なら、これはどうやってるのかしら」
本来なら、界外した神がこの世界から消えた後、その神の効力は持続することなく共に消えるはずだ。ヨグはそう認識している。
「こいつはネタバレやけど。ワテは生まれつき特異な目を持っとるんよ」
そう語ると銀城は、自分のサングラスを外し、ヨグに見せつける。
「へー、面白いわね。何それ『邪眼』?」
「せや、世界中に点々と存在する呪術を持った目、ワテもその1人なん。」
銀城の目、両目は普通の人間のとは違った。そこにはあるはずの眼球が無く、二つの真っ黒い穴があるだけだ。だがその二つの穴の奥はさらに闇が広がっているようで、どこか別の世界につながっているようだ。
「最初こいつにあった時にちょいと呪術掛けといたんや。あん時の判断は正解やったね」
そう言うと再びサングラスを掛けてヨグに歩み寄る。
「面白いやろ? これでお前さんはこいつに近づけへんで。なんせ『ヨグが近づいたら撃て』って術掛けといたんやから」
そう言ってヨグの肩をぽんっと叩く。
本来ならこの行為自体が、副神であるヨグ=ソトースの怒りに触れるのだが、ヨグはあえて我慢をする。
この場でもし、この銀城という男を殺すことによって『邪眼』の効力が切れ、霧島が助かるなら躊躇なく殺すが。相手がそれを読んでいて近づいて来ている。
おそらく、自身が死ねば自害するように暗示を掛けていると思われる。
霧島が死ぬ。そうすると、せっかく界外した自分がこの世界から消えて、また何年も呼び出されるのを待つしか無くなる。
このチャンスはモノにしたい。
(今、この場に連れてきたあの子らには悪いけど、死んでくれないかな……)
そう胸中に思いヨグは歯をギリギリと鳴らして屈辱に耐える。
そんなヨグを見ていた銀城は「ええな」と言ってヨグから離れる。
そして、俯いている下田アリアと慌てふためくこっくりさんin神宮寺から約5メートルほど離れたところで銀城は止まる。
「最後に言いたいことがあるんやったら聞くで、ただし1分でな」
そう言って銀城は右手を高らかに掲げると直立する。
それに従って、他の男女、銀城に操られていると思われる者たちが界外した付喪神たちも、各々が戦闘を始めたくて疼き始める。
数はおよそ40体。
もはや絶体絶命の状況下だ。
「ヒャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!! どうかお命だけわァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
こっくりさんが泣き叫びながらアリアの服を掴んで寄りすがる。
そして、こっくりさんは聞いた。
ナニカ………を。
「小さい………小学生?……やっぱり幼児にみえるのか…………そっか………そっか………、孝作からのアダ名もガラパゴスだし………納得…………。……下の名前のアダ名考えろよ…………、なんで…………のかな………小さくて………小さくて……、私は………もっと出るとこ………ちゃんと牛乳………お母さんもでかいし………、それより………作の妹からも…………あの子………義妹にすんのに………今そんな話…………よし………あのグラサン………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ヤロ」
アリアはブツブツと何かを呟きながら顔をうつむかせていた。それを聞いたこっくりさんはまずいと思い、すぐに神宮寺との憑依を解く。
「緊急脱出ゥゥゥゥ!!!」
「……へ?」
一目散と、姿を空気に溶け込ませるように消えるこっくりさん。
そして取り残されるほけっている憐れな主人公、神宮寺孝作と少しヤバい幼馴染下田アリア。
その一連の行動を見て対する銀城は。
(この小僧、今確かに界外した神が体内に入ってたな。なんや………)
似ている。
あの少年が自分の持っている『邪眼』と同質の怪異や特異に似ていると。銀城はそう思った。
けれど。
「時間やで、最後の言葉は『へ?』でええんやな。ほなさいなら」
銀城が静かに右手を下ろす。
すると待ってましたとばかりに、『絶望』の意思で界外した恨みつらみが籠った付喪神達が一斉に神宮寺に襲いかかる。
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