界外の契約者(コール)
20話 界外術師の戦闘 part2
「おーいアリア! これって全員倒せるんじゃねーか?」
鉄パイプで『呪神』を出した界外術師の1人を気絶させた神宮寺は口軽くそう告げる。
「無理に決まってるでしょ。周り見ろ!!」
アリア神宮寺の右前を指差し、大きな声で告げる!
「?」
不思議に思い、アリアが指差す方を見る。
見ると、いつの間にか3人の男がロウソクやドクロを地面に置いてぶつくさと何かを唱えていた。
「なんだあれ?」
「祭壇儀式。昔からカルト教団が使う、ほんの複数でも界外術師1人でやる界外よりも出力が出る特異術よ! 」
「なら呼ばれる前にさっさと止めなきゃな」
「もうおそい! 孝作、あんた早くその場から離れて!!」
アリアの必死の指摘に神宮寺は神格者の力を使って大きく跳躍しその場から離れる。もちろん気絶した界外術師達も抱えて。
離れてから数秒後、さっきまで神宮寺がいた床がなくなり大きな三角形の穴が空いた。
「な!? なんだよありゃ!!」
離れた場所に着地し、自分や脇に抱えている界外術師達がいた場所に大きな穴が空いたことに驚く神宮寺。
「おーい! あいつらは何呼んだんだよこれ!!」
「おそらく姿形もない邪神系。妖怪とか怪談の逸話に物理攻撃を与えたものだと思う」
「それじゃ俺何もできなくねーか!? 姿がないんじゃなんもできないしよ……」
「あんたさ………」
その時、口裂け女と呼ばれる『都市伝説』に命が宿ったものが動く。
その直後、赤く短いスカートを履いたおかっぱの女の子。トイレの花子さんと呼ばれ、『学校の怪談』と言う子供達の好奇心と恐怖が生んだ特異な伝説から派生し、浮遊霊が部分的に神へと昇華した者が消える。
「私の恥ずかしい異名知ってて言ってるんだよね?」
口裂け女は例の界外術師達とは逆の、一直線に何もない場所に走り、鎌を精一杯振りかざし、勢いをつけて振り下ろす。
すると、鎌が虚空を切ったところが熱気のようにボヤけ、ウネウネと動くのが神宮寺の目にも分かった。
ドタンバタン。
硬いもので殴ったような鈍い音が聞こえ、神宮寺は首を振ってそっちに目を移す。
音は3人の界外術師が儀式を行っていた場所。消えたはずのおかっぱの少女がその3人のうち1人を打ち倒し、床に崩していた。
「私さっき気づいたけど、どうやら界外に使った感情は『不思議』かしらね。三角形で姿のない神聖化したもの、さしずめ『魔の海域』の伝説を引用かな? 思想によっては『理解できないもの』も悪魔や邪神と例えられるからね」
アリアは遠くから得意げな顔で、しかし若干の息切れのようなものを起こしながらも冷静に語る。
「3人で1つの界外。確かに数を合わせることで因果の堅さや強さには大事だけど、弱点がある」
パリン!!
突然、界外術師達が儀式に使っていたドクロが音を立てて木っ端微塵に砕け散るなる。
同時に口裂け女が斬った熱気のようなものがクネクネから変わり、激しくジタバタ動いたかと思うと急に止まり、スッと空気に解けるように消え去っていった。
「儀式の界外は複数の内1人でも欠けたら神は消える。3本の柱で三角の屋根を作って一つとったら使い物にもならないようにさ」
アリアがそう言い切る前に、花子さんにやられた1人を除いた二人の界外術師達はすぐにその場から離れ、他の仲間のもとに駆ける。
これで14対2。
出ている神や神宮寺に憑いているのも足せば、27対6になる。
神宮寺とアリアが思考を働かせて出した考えは、非常にまずい。それだけだった。
アリアは界外の天才と言われ神を何体も出せるが、それにも上限があったりする。
まして、休む暇がないので体力の減りも早い。
神格者の神宮寺も同じだ。
とある経緯で手に入れたその力、神が持つ100%の力を引き出すものであっても、本人が動き、神のスペックを出すので体を酷使する。息も上がって当然だった。
「……んで、どうするよ? 逃走経路は掴めたのか」
「……ばか? そうさせないのが向こうの意図でしょ?」
「だろうな。まだ戦闘態勢だし」
疲労で一杯の彼らの前にはまだ14人。動いていない奴はまだ10人。
しかも逃さないように警戒している。さすがにこれでは逃げられない。
焦る二人。
状況は逆転していた。
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