界外の契約者(コール)

鬼怒川 ますず

アイドルはステージにいます

明るいステージ。
歓喜で沸く観客たち。

私はそんな明るい表舞台を、まるで人類の祭典オリンピックの観戦をテレビで見ているようだ。

膝が笑う。足が今にも倒れそうで、頭もクラクラしてくる。

ステージ裏にいる他のダンサーや裏方の人たちも、始まる大舞台に緊張している。
だが、私とは違ってその緊張をバネにいそいそと動いている。

羨ましい。

ステージで輝くべき私がそんな人たちに逆に憧れるなんて。もはや末期かもしれない。

そう考えて私は、手のひらに人の字を書いて呑む。

今度は心臓の鼓動が早くなる。

ドクドクドクドク。

もうはち切れんばかりだ。


「こら絵理、あなたは何をボケっと立っているの」

そう馴染みのある人が私に声をかける。

あぁ、それは私のマネージャーだった。
そして保護者でもある。

「ご、ごめんなさい……緊張しちゃって頭が真っ白に……」

「大丈夫よ。あなたは可愛くて綺麗。私の力がなくたってもう注目を集めてしまうほどなのよ?」

「そ、そうだけど……」

「ほら、さっさと仕度して。歌や踊り付けは全部覚えてるの?」

「それはバッチリだよ」

「なら行った行った!」

私はマネージャーにそう言われて、自信を持つ。
…………よし、準備は万全。
私は強い意志を持った瞳をマネージャーに向ける。それに応えるようにマネージャーも頷いて微笑む。

さぁ、行こう。

私は暗い舞台裏を移動して、入場の場所にスタンバイする。

待機する場所は暗くて、周りのダンサーの子達の顔も見えない。
だから、私は自分に鞭打つようにその場にいる子達に向けて言った。


「絶対成功させるからね!! 頑張るゾッ!!」

その言葉に、周りも小さく頷くのが分かった。
鼓舞はここまで。
その瞬間、目の前に目が眩むほどの光が差し込んでくる。

私が、私のステージが始まる。

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