界外の契約者(コール)
55話 くつろぐ都市伝説
「うぅ、なんで私たちはこんな事に巻き込まれるんですぅか?」
「仕方ないってこーちゃん。ウチらのご主人様の運命がこんなんだって思えば楽だよ?」
「…………わ、わたしはいつも危ない前線ですよ。それよりも、安全地帯で美味しいお菓子を食べているこーちゃんが羨ましいです……」
「わたしはお魚が食べたいんですぅ!」
7階のフロア。
会場内が爆破し、無人となったはずのパーティー会場でヒソヒソと話し声が聞こえる。
大きな食事を置くパーティーテーブル。
焼け焦げた料理が置かれているその下に彼女達はいた。
1人はキツネのようなフワッとした獣耳を頭につけ、子供用のドレスに身を包むこっくりさん。
そして、獣耳を生やすこっくりさんと同じく他の二人もまた違う意味で異質である。
短い黒い髪をわざわざ後ろで編み、可愛いさを醸し出し、パッチリとした瞳でこっくりさんと同じサイズの子供用のドレスを着ている少女。
もう1人は、黒い長髪の女性で目元はとろんと優しげで、薄青いドレスを着て身体のところどころが出ているところは出ている。いたって普通の大人の女性。その容姿からのほほんとした雰囲気を出しているのだが、口元から耳元までを覆うようにマスクをかけており、左手には鎌を持っている。
子供の方が『花子さん』と呼ばれ。
大人の女性が『口裂け女』と呼ばれている。
3人は『都市伝説』という神話から界外された神。
下田アリアが護衛の為にと招待客に紛れさせ、有事には即戦闘ができるように準備させていた。
そして爆発後、最も最低な敵前逃亡然り、ひっそりとテーブル下に隠れて、なんとか持ち出した料理を頬張りながら女子トークをしていた。
つまり、この3人の神様は絶賛職務放棄中である。
「あははは、やっぱりこーちゃんはお魚が好きだね! でもさ、ウチなんて界外する際はいっつもアメ玉一個なんだよ。それに比べたらパン一個、しかも神宮寺くんのパンで呼び出されているこーちゃんって結構ポイント高いよー」
「あんなパンで呼び出されても嬉しくないですぅ。モグモグ…………このかるぱっちょってやつ美味いですぅ!」
「もーー、なーんか合わないなー」
料理、主に魚料理を頬張るこっくりさんに呆れて花子さんは退屈そうに床に寝っころがる。
そんな中、マスクの下から器用に口に運んでいた口裂け女が花子さんに聞いてみた。
「……はなちゃんって、もしかして神宮寺さんが好きなの?」
「………………は?」
口裂け女の発言に花子さんはむくりと起き上がる。
「……ちょいちょい、何言ってんのさっちゃん。ウチが神宮寺くんの事が好き? そいつは嫌な冗談だね」
「…………そうかな。ただいっつも神宮寺さんに視線がいっていたからさ」
「もー! そーゆうのやめてよさっちゃん」
「……いやでも」
「はいはい! この話はここで終わり! はい次の話題、こーちゃんどうぞ!」
「魚料理について!」
「こーちゃんのその魚に対する執念がウザいんだけど!? もうなんで魚に関するワードしか口にしないのこーちゃんは!?」
「……日頃から食べたかったんですね。いいでしょう、私のでよければもっと食べてください」
うんざりとした目でこっくりさんを見る花子さんとは違い、口裂け女は自分のお皿にあった魚の刺身や料理を分け与える。
「い、いいんですぅか!?」
「……えぇ、たくさん食べてねこーちゃん」
「さっちゃん……さっちゃんは女神さまですぅ。それでは、この気持ちはいただきますぅ!」
感謝の言葉を述べてこっくりさんは料理にフォークを刺してあんぐりと口を開けていただいていく。
その様を口裂け女はにっこりと微笑みながら眺め、反対に花子さんはむくれた顔で口裂け女を見ていた。
「……さっちゃんはこーちゃんに甘々だよ」
「……可愛いは正義ですよ」
「おーおー、昔自然に界外しては子供を追い回していたヒトがよく言いますよー」
「……子供は可愛い。追いかけてたけどノータッチだった」
「あんたは近年のロリコンか!!!」
ワイワイとまるで修学旅行のテンションでおしゃべりを続ける3人。
でもーーー。
「……さっちゃん」
「…………」
「ふぇ どおしたんですぅかあ?」
いきなり神妙な顔つきになる口裂け女と花子さん。
それに疑問符を浮かべながら料理を頬張るこっくりさん。
「……こーちゃん、あんたって今力使ってないんだよね?」
「そーでふが? 」
「なら、使ってみるといいわ」
「?」
花子さんが青白い顔で言うのを不思議に思いながらも、セーブしていたこっくりさんの「知る」能力を発動してみる。
今のこっくりさんは出力70%なので、半径10キロ圏内までなら全ての事象を知ることができる。
そして、ケモミミ少女は見た。
怒りながら自分を見ている自分のご主人様の少女に。
『こっくり、あんたこっち見ているわよね?』
そしてばれた。
恐ろしくも息を呑むこっくりさんは、急いで能力を解いて自分たちの主人の元に戻らなければと焦ったが。
『……まぁいいわ。そのままで聞きなさいよ』
そう言われてこっくりさんはキョトンと動きを止めて他の二人にも静止を促した。
『いま護衛対象の少女と政治家と逸れていて場所が分からないの。だからこっくり、あんたの力でなんとか探しといて保護してくれないかしら』
それはアリアのお願いだった。
界外術師が神にお願いする。至って正常の行いだったのだが……。
「うっわ、なんかアリアさんが私たちに護衛のお願いを依頼していますぅ……」
「何それ若干ホラーじゃね?」
「…………いつもは馬車馬のように扱うのに」
「だよねー! あの鬼みたいな悪魔みたいな怖い人が珍しいね」
とまぁ、日頃からあまり良いように扱われていなかった神様3人はお互いに顔を合わしてひどいことを言っているのだが。
なぜかこちらの会話が聞こえていないはずのアリアが語気を強める。
『悪口言ってないでさっさとやれよ』
地獄に響くようなその一言を告げ、ブツリッとこっくりさんの力を一方的に切断させた。
聞いていたこっくりさんとしてはゾッとするほどのホラーだった。
「…………は、はやくぅ探しに行って保護しましょう!! じゃなければ私たちの命が危ない!」
こっくりさんの鬼気迫るその物言いに、他の二人もご主人様が最後に言った内容が把握できた。
そっから先は急ピッチで事が進んだ。
こっくりさんの能力で大鷲と東條の2人の居場所を探し出すと、3人は二手に分かれて行動を開始した。
花子さんとこっくりさんは東條絵里のいる2階に。
口裂け女は大鷲氏がいる6階に向かう。
分かれる途中、こっくりさんと花子さんがいる階下には直に下田アリアがいる事に状況をみて察した口裂け女は、下に降りる2人にこっそりと幸運を祈るように親指を立てた。
「仕方ないってこーちゃん。ウチらのご主人様の運命がこんなんだって思えば楽だよ?」
「…………わ、わたしはいつも危ない前線ですよ。それよりも、安全地帯で美味しいお菓子を食べているこーちゃんが羨ましいです……」
「わたしはお魚が食べたいんですぅ!」
7階のフロア。
会場内が爆破し、無人となったはずのパーティー会場でヒソヒソと話し声が聞こえる。
大きな食事を置くパーティーテーブル。
焼け焦げた料理が置かれているその下に彼女達はいた。
1人はキツネのようなフワッとした獣耳を頭につけ、子供用のドレスに身を包むこっくりさん。
そして、獣耳を生やすこっくりさんと同じく他の二人もまた違う意味で異質である。
短い黒い髪をわざわざ後ろで編み、可愛いさを醸し出し、パッチリとした瞳でこっくりさんと同じサイズの子供用のドレスを着ている少女。
もう1人は、黒い長髪の女性で目元はとろんと優しげで、薄青いドレスを着て身体のところどころが出ているところは出ている。いたって普通の大人の女性。その容姿からのほほんとした雰囲気を出しているのだが、口元から耳元までを覆うようにマスクをかけており、左手には鎌を持っている。
子供の方が『花子さん』と呼ばれ。
大人の女性が『口裂け女』と呼ばれている。
3人は『都市伝説』という神話から界外された神。
下田アリアが護衛の為にと招待客に紛れさせ、有事には即戦闘ができるように準備させていた。
そして爆発後、最も最低な敵前逃亡然り、ひっそりとテーブル下に隠れて、なんとか持ち出した料理を頬張りながら女子トークをしていた。
つまり、この3人の神様は絶賛職務放棄中である。
「あははは、やっぱりこーちゃんはお魚が好きだね! でもさ、ウチなんて界外する際はいっつもアメ玉一個なんだよ。それに比べたらパン一個、しかも神宮寺くんのパンで呼び出されているこーちゃんって結構ポイント高いよー」
「あんなパンで呼び出されても嬉しくないですぅ。モグモグ…………このかるぱっちょってやつ美味いですぅ!」
「もーー、なーんか合わないなー」
料理、主に魚料理を頬張るこっくりさんに呆れて花子さんは退屈そうに床に寝っころがる。
そんな中、マスクの下から器用に口に運んでいた口裂け女が花子さんに聞いてみた。
「……はなちゃんって、もしかして神宮寺さんが好きなの?」
「………………は?」
口裂け女の発言に花子さんはむくりと起き上がる。
「……ちょいちょい、何言ってんのさっちゃん。ウチが神宮寺くんの事が好き? そいつは嫌な冗談だね」
「…………そうかな。ただいっつも神宮寺さんに視線がいっていたからさ」
「もー! そーゆうのやめてよさっちゃん」
「……いやでも」
「はいはい! この話はここで終わり! はい次の話題、こーちゃんどうぞ!」
「魚料理について!」
「こーちゃんのその魚に対する執念がウザいんだけど!? もうなんで魚に関するワードしか口にしないのこーちゃんは!?」
「……日頃から食べたかったんですね。いいでしょう、私のでよければもっと食べてください」
うんざりとした目でこっくりさんを見る花子さんとは違い、口裂け女は自分のお皿にあった魚の刺身や料理を分け与える。
「い、いいんですぅか!?」
「……えぇ、たくさん食べてねこーちゃん」
「さっちゃん……さっちゃんは女神さまですぅ。それでは、この気持ちはいただきますぅ!」
感謝の言葉を述べてこっくりさんは料理にフォークを刺してあんぐりと口を開けていただいていく。
その様を口裂け女はにっこりと微笑みながら眺め、反対に花子さんはむくれた顔で口裂け女を見ていた。
「……さっちゃんはこーちゃんに甘々だよ」
「……可愛いは正義ですよ」
「おーおー、昔自然に界外しては子供を追い回していたヒトがよく言いますよー」
「……子供は可愛い。追いかけてたけどノータッチだった」
「あんたは近年のロリコンか!!!」
ワイワイとまるで修学旅行のテンションでおしゃべりを続ける3人。
でもーーー。
「……さっちゃん」
「…………」
「ふぇ どおしたんですぅかあ?」
いきなり神妙な顔つきになる口裂け女と花子さん。
それに疑問符を浮かべながら料理を頬張るこっくりさん。
「……こーちゃん、あんたって今力使ってないんだよね?」
「そーでふが? 」
「なら、使ってみるといいわ」
「?」
花子さんが青白い顔で言うのを不思議に思いながらも、セーブしていたこっくりさんの「知る」能力を発動してみる。
今のこっくりさんは出力70%なので、半径10キロ圏内までなら全ての事象を知ることができる。
そして、ケモミミ少女は見た。
怒りながら自分を見ている自分のご主人様の少女に。
『こっくり、あんたこっち見ているわよね?』
そしてばれた。
恐ろしくも息を呑むこっくりさんは、急いで能力を解いて自分たちの主人の元に戻らなければと焦ったが。
『……まぁいいわ。そのままで聞きなさいよ』
そう言われてこっくりさんはキョトンと動きを止めて他の二人にも静止を促した。
『いま護衛対象の少女と政治家と逸れていて場所が分からないの。だからこっくり、あんたの力でなんとか探しといて保護してくれないかしら』
それはアリアのお願いだった。
界外術師が神にお願いする。至って正常の行いだったのだが……。
「うっわ、なんかアリアさんが私たちに護衛のお願いを依頼していますぅ……」
「何それ若干ホラーじゃね?」
「…………いつもは馬車馬のように扱うのに」
「だよねー! あの鬼みたいな悪魔みたいな怖い人が珍しいね」
とまぁ、日頃からあまり良いように扱われていなかった神様3人はお互いに顔を合わしてひどいことを言っているのだが。
なぜかこちらの会話が聞こえていないはずのアリアが語気を強める。
『悪口言ってないでさっさとやれよ』
地獄に響くようなその一言を告げ、ブツリッとこっくりさんの力を一方的に切断させた。
聞いていたこっくりさんとしてはゾッとするほどのホラーだった。
「…………は、はやくぅ探しに行って保護しましょう!! じゃなければ私たちの命が危ない!」
こっくりさんの鬼気迫るその物言いに、他の二人もご主人様が最後に言った内容が把握できた。
そっから先は急ピッチで事が進んだ。
こっくりさんの能力で大鷲と東條の2人の居場所を探し出すと、3人は二手に分かれて行動を開始した。
花子さんとこっくりさんは東條絵里のいる2階に。
口裂け女は大鷲氏がいる6階に向かう。
分かれる途中、こっくりさんと花子さんがいる階下には直に下田アリアがいる事に状況をみて察した口裂け女は、下に降りる2人にこっそりと幸運を祈るように親指を立てた。
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