こじらせ女の恋愛記録

ひよこまめ。

別れの時


4月。


私も彼も無事に大学へと進学し
新たな環境での生活がスタートした。


私と同じ大学に進学した同級生はいなかったので
何もかもがゼロからのスタートだった。


中高6年間ずっと
同じ環境で同じ仲間としかいなかったので
もはや友達の作り方すらもわからなくなっていたし


新しい環境に慣れるまでのしばらくの間は
高校生に戻りたいとずっと思っていた。


大学生になってから
私は人生初めてのアルバイトをすることにした。


店舗は違ったけど
彼と同じカフェでアルバイトを始めた。


一通りの仕事が出来るようになるまで不安すぎて
私は出勤の日がくるたびに
「失敗して怒られたらどうしよう、、」
と彼に弱音を吐いていた。


そんな私に、彼はいつも
「みおかなら大丈夫だよ!応援してるから今日も頑張ってね!」
と言ってくれた。


高校を卒業してからも
私は彼に頼りっぱなしの毎日だった。


でもそれは
私がただ、彼の優しさに甘えていただけの話にすぎなかった。


彼のことが大好きで仕方なかった頃の私にはもう戻れないと感じていたし
もはや一緒にいる意味があるのかさえわからなくなっていたけど


よりを戻した手前
再び別れを切り出す勇気もなく
現状維持のままの状態が続いていた。




そんな毎日に変化が訪れたのは
私がサークルに入ってからのことだった。


友達に誘われて
5月の半ばにとあるサークルの新歓合宿に参加した。


そのサークルは
当時4年生だった先輩たちが1年生の時に作ったオールラウンドサークルだった。


〝オーラン=チャラい”というイメージがあったのだけど
結成されてからそれほどまだ年数が経っていなかったためか
とてもアットホームなサークルだった。


大学に入ったら何かしらのサークルに入りたい!
とは思っていたものの
何個も何個も見学に行くのはめんどくさかったし
参加した新歓合宿が普通に楽しかったので


そのままのノリと勢いで
私はそのサークルに入ることに決めた。


サークルの先輩たちや同期とはすぐに仲良くなった。


活動にも積極的に参加するようになって
大学生活を楽しむ余裕も出てくるようになった。


そんな私とは対照的に
彼はつまらなそうな毎日を過ごしていた。


大学生活を楽しんでいる私を見るたびに
「みおかは楽しそうでいいね」
と呟いていた。


「じゃあ〇〇(彼の名前)もサークルとか入ったらいいじゃん!」
と言うと


彼は決まって
「俺はみおかとの将来のためにお金を貯めたいから、バイトに時間を費やしたい」
と言った。




正直なところ
好きという気持ちがなくなっていた私には
彼が私との将来を真剣に考えてくれていることに対しての嬉しさはなかった。


それ以前に
彼が自分で勝手に決めたことなのに
会うたびにつまらなそうな顔をされることに苛立ちを覚えていた。


わざわざSNS上にも
私に対してかな?と思うようなネガティブな内容の書き込みをしていたのも嫌だったし


〝俺はお前との将来のためにサークルも入らずバイトを頑張ってるのに、、”
と言われているような気がして
それが恩着せがましくも思えてとても嫌だった。


私は、お互いがもっと自由に過ごせたらいいのになと思っていた。


今しかできないことをもっと色々やって欲しいと思っていたし
私といない時間くらいは
自分の好きなことや興味があることに時間を費やして欲しかった。


彼が、私といない時間まで私のための時間として過ごすことは
なんだか彼から自由を奪っている気がしたし
このまま一緒に居続けることは
彼の為にも良くないのではないかとも考えていた。


気持ちがすれ違うなか
付き合って1年5ヶ月の日を迎えた。


彼はサプライズで私の大学まで来てくれて
手紙とプレゼントを渡してくれた。


わざわざ会いに来てくれたことは素直に嬉しかったけど
彼が来るまで、私はその日が記念日であることをすっかり忘れていた。


これ以上、彼の気持ちも時間も無駄にはしたくない。


私はその時
彼と別れる決心を固めた。




とはいえ
どう伝えていいのかわからなかった。


身勝手な考えではあるけど
私はなるべく彼を傷つけたくはなかった。


だけど
常に100%以上の気持ちで
私に全力の愛を注いでいてくれた彼を傷つけない方法なんてどこにもなかった。


そんな迷いを抱いていた私の様子を察したのか
ある時、彼から突然
「別れたいんだろ?」
というメッセージが届いた。


私は正直に
「友達に戻りたい」
とだけ言った。


すると彼は
意外にもすんなりとその言葉を受け入れてくれ
「みおかがそうしたいなら友達に戻ろう」
と言ってくれた。




別れられた、、、、?!




私しか見えていない彼が
あっさり別れを受け入れたことには
少し疑問を感じていたけど


受け入れてくれたことに感謝をして
私は前に進むことにした。




ちょうどその頃
私にはサークルの1個上の先輩で気になる人が出来ていた。


その先輩とは新歓合宿を通して仲良くなり
毎日LINEのやりとりをしたり
授業の空きコマに一緒にご飯を食べに行ったりしていた。


後日
私はその先輩から告白をされた。


別れてまもなかったので
すぐに別の人と付き合うことには抵抗があったけど


私は早く元彼のことを忘れたいという気持ちがあったので
そのまま付き合うことに決めた。




彼に別れを告げた日から1週間くらい経った頃だろうか。


彼から
「30日空いてる?」
という連絡がきた。


30日は、彼と私が付き合って1年半記念日になるはずだった日。


ん、、、???


今更なんだろうと思ったし
私はきっぱり別れたつもりでいたので
その日はすでに別の友達と会う予定を入れていた。


予定があることを伝えると
彼は、「渡したいものがあるからどうしても会いたい」と言ってきた。


私は、彼との間で何か認識のズレが生じていることを感じた。


「もうよりを戻す気はないから、会えないよ?」
と私が伝えると
彼の態度が急に一変して
「話が違う!」と怒りだした。


3月に一度別れを切り出し時
8日間でよりを戻してしまったこともあってか
どうやら彼は
今回もまた同じような感じだと思っていたみたいだった。


でも私は
今回ばかりは本気の別れだった。


2度と振り返ることのない別れの選択。


強い決心だった。


だから
話が違うと言われても
私にはもう、どうすることもできなかった。


〝ごめん”という言葉以外見つからなかった。


彼は、私が戻ってくるのを何年でも待つと言ってくれたけど
私はもうすでに先輩と付き合っていたし
待たれていても困る。


迷った挙句
私は、サークルの先輩から告白を受けたことを正直に話した。


さすがに
すでに付き合ったという事実を知らせるのは酷だと思ったので
〝付き合おうと思っている”
と、少しだけ嘘をついて話した。


それを聞いた彼は
私に裏切られたと思い込み
ショックで落ち込んでいたけど
別れることをなんとか了承してくれた。


その夜、彼からまた連絡が来ていた。


「最後にどうしても渡したいものがあるから家まで行っていいかな?」


深夜に送られたものだったので
朝起きてその連絡を見た私は
拒否する暇もないままに
彼は私の家の前まで来ていた。


彼は両手に
2人のアルバムや一緒に買ったお揃いのものなど
私との思い出の品をいっぱいに詰め込んだ紙袋を持っていた。


彼はそれを私に差し出し
「自分では捨てられないから、代わりに捨ててほしい」
と泣きながら言ってきた。


そんな彼に対し
「私の家にもそういうの沢山あるから、それは自分でなんとかしてほしい」
と冷たく言い放った。


彼は「わかった」と言って
最後にこれだけ受け取ってほしいと手紙をくれた。


その瞬間
罪悪感と切なさと苦しさと
いろんな感情が一気に込み上げてきて
私は涙が止まらなくなった。


「なんでお前が泣くんだよ!」
と言いながら、彼は少し笑っていた。


そんな私を、彼は優しく抱きしめてくれた。


「幸せにならなかったら怒るぞ」と言って。


お互いに号泣しながら強く抱きしめあった。


「ありがとう。ごめんね。」
と、最後に伝えて
そのままさよならをした。




彼が帰ってからも
私はずっと涙が止まらなくて
彼から貰った手紙も泣きながら読んだ。


手紙には、私への感謝の言葉と激励の言葉が書いてあって
不平不満は一つも書いてなかった。


彼は本当に
最後の最後まで私を愛してくれていた。


あんなに大好きだったのに。
あんなにそばにいてくれたのに。
あんなに優しくしてくれたのに。


一瞬、彼と別れたことを後悔しかけたけど
自分で沢山考えて悩んだ上で決めたこと。


彼のためにも、私はちゃんと幸せにならなきゃいけない。


私は強くそう思った。

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