偶像は神に祈る夢をみる
めでたしめでたし 4
僕がシンヤにしてあげられること、それはなんだろう。
考えてみればみるほど僕はシンヤについて何も知らない事に気づく。
出会ったからまだ三か月と少し、無理もないのかもしれない。
でも今僕は強く、彼のことを知りたいと思った。
「おはよう」
教会の扉をくぐると、神父様がいつものように元気よく迎えてくれた。
言葉とは裏腹に体格のいいその体が少し萎んで見える。
シンヤの目覚めを誰より喜んでいたのは神父様だ。
心中を察するには余りある。快活な物言いも空元気にしか見えなかった。
「おはようごさいます。リサさんはもうきてますか?」
せめて精いっぱいの笑顔で挨拶してから尋ねた。
「彼女なら地下の部屋にいるよ」
その言葉を聞いて僕は階段を下る。
地下一階、奥の部屋。本来なら夢見を夢に送り込むための部屋で、
彼女は静かに本を読んでいた。
「おはようございます。リサさん」
「おはよ」
僕のほうにちらりと目を向けて短く返事をした後、視線はすぐに紙面に戻る。
「あの、話があるんですけど」
遠慮がちに尋ねた。
「あとじゃダメなの?」
めんどくさそうな声が返ってくる。
「はい」
はっきり答えると、諦めて本を閉じた。
椅子をくるりと回転させて向き直る。
「で、なに?」
「シンヤの…、聖ミカガミ様の情報はほとんど公開されてるって言ってましたよね?」
「いったけど、彼多分嫌がるわよ」
言わんとしてることを察してかそう忠告してきた。
「友達でしょ?プライベートを覗き見るのはいかがなものかしら」
「友達だから、知りたいんです。シンヤのこと、このまま事と成り行きを見守るだけなんてできません」
強い言葉に、彼女はため息で答えた。
それからちらりと時計を見る。
「直接潜るでしょ。三十分待って、公開情報を見るだけならそのぐらいで準備ができるから」
そうして彼女は普段は重いその腰を上げた。
***
ユウキに頼まれて準備をする傍ら、私は考える。
結局こういうものを運命と呼ぶのかもしれないと。
ハルミエミに頼まれた約束。果たすつもりなどなかった。
私は彼女のことが嫌いだったし、何より私の生きているうちに、
そんなに都合良くことが起こるなんて思わなかった。
彼が目覚めたとき真っ先に思ったことは、
運命は彼らに優しいらしいということだ。
やはり彼らは私たちと違って特別なのかもしれない。
それは彼らには仮初ではない本物の心があるからだ、
などとは思いたくはなかった。
私にだって感情はある。
その大半が《《彼女》》からの演算で導かれているとしても
私たちにも感情はある。自分はそう信じている。
作業は順調に終わった。
もともと私が彼に関する情報を集めていたからということもある。
ユウキもここまで首をつっこむなら、
もう私の頼みを断ることはないだろう。
むしろ進んで協力してくれるかもしれない。
彼が目覚めた瞬間から今まで
正直、悩んでいた。約束を果たすものかどうか。
でも、運命は勝手にそちらに向かていく。
「そんなのずるいじゃない」
思わずつぶやいた言葉は、嘘偽りのない私の本音だった。
考えてみればみるほど僕はシンヤについて何も知らない事に気づく。
出会ったからまだ三か月と少し、無理もないのかもしれない。
でも今僕は強く、彼のことを知りたいと思った。
「おはよう」
教会の扉をくぐると、神父様がいつものように元気よく迎えてくれた。
言葉とは裏腹に体格のいいその体が少し萎んで見える。
シンヤの目覚めを誰より喜んでいたのは神父様だ。
心中を察するには余りある。快活な物言いも空元気にしか見えなかった。
「おはようごさいます。リサさんはもうきてますか?」
せめて精いっぱいの笑顔で挨拶してから尋ねた。
「彼女なら地下の部屋にいるよ」
その言葉を聞いて僕は階段を下る。
地下一階、奥の部屋。本来なら夢見を夢に送り込むための部屋で、
彼女は静かに本を読んでいた。
「おはようございます。リサさん」
「おはよ」
僕のほうにちらりと目を向けて短く返事をした後、視線はすぐに紙面に戻る。
「あの、話があるんですけど」
遠慮がちに尋ねた。
「あとじゃダメなの?」
めんどくさそうな声が返ってくる。
「はい」
はっきり答えると、諦めて本を閉じた。
椅子をくるりと回転させて向き直る。
「で、なに?」
「シンヤの…、聖ミカガミ様の情報はほとんど公開されてるって言ってましたよね?」
「いったけど、彼多分嫌がるわよ」
言わんとしてることを察してかそう忠告してきた。
「友達でしょ?プライベートを覗き見るのはいかがなものかしら」
「友達だから、知りたいんです。シンヤのこと、このまま事と成り行きを見守るだけなんてできません」
強い言葉に、彼女はため息で答えた。
それからちらりと時計を見る。
「直接潜るでしょ。三十分待って、公開情報を見るだけならそのぐらいで準備ができるから」
そうして彼女は普段は重いその腰を上げた。
***
ユウキに頼まれて準備をする傍ら、私は考える。
結局こういうものを運命と呼ぶのかもしれないと。
ハルミエミに頼まれた約束。果たすつもりなどなかった。
私は彼女のことが嫌いだったし、何より私の生きているうちに、
そんなに都合良くことが起こるなんて思わなかった。
彼が目覚めたとき真っ先に思ったことは、
運命は彼らに優しいらしいということだ。
やはり彼らは私たちと違って特別なのかもしれない。
それは彼らには仮初ではない本物の心があるからだ、
などとは思いたくはなかった。
私にだって感情はある。
その大半が《《彼女》》からの演算で導かれているとしても
私たちにも感情はある。自分はそう信じている。
作業は順調に終わった。
もともと私が彼に関する情報を集めていたからということもある。
ユウキもここまで首をつっこむなら、
もう私の頼みを断ることはないだろう。
むしろ進んで協力してくれるかもしれない。
彼が目覚めた瞬間から今まで
正直、悩んでいた。約束を果たすものかどうか。
でも、運命は勝手にそちらに向かていく。
「そんなのずるいじゃない」
思わずつぶやいた言葉は、嘘偽りのない私の本音だった。
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