偶像は神に祈る夢をみる
神様の目覚め 2
教会に入る前から、異常事態だということがわかった。
いつも僕がつく頃には開けられている扉も窓もすべてがぴっちりと閉じられている。
極めつけに入り口にはいつもは居ないガードマンが立っていて、
彼に睨まれて僕はIDを見せる羽目になった。
中は中で異様だった。いつもは誰もいないはずの教会の中を、
数人の聖職者と思われる人間が行き来している。
その中のひとりが僕を見つけると地下へと誘導した。
地下にも4、5人の人影が見える。
「ユウキ、おそい!」
「ユウキ君よく来た」
見知った顔に声をかけられて少し安堵して息を吐く。
「なにがあったんですか?」
二人に尋ねる。
「見ればわかるさ!」
ふくよかな神父様が、いつになく浮かれた表情で奥の方を指し示す。
彼の示した方に視線を向けた。そこにはいつも見ていた142番が眠る結晶体があるはずだ。
「…そんな⁉」
割れていた、毎日見てきたあの水晶体が。
「142番は?」
あの中で眠っていた少年はどうなったのだろう。
「まだ、眠っておられる。奥の部屋でな。お目覚めになられたばかりだ無理もない」
想定外の方向から声が帰ってくる。声の主は、いかにもくらいの高そうな法衣をまとった男で、神父様の態度からも教会の中でかなりの地位にある人間のようだった。
「こちらは、教会の枢機卿の一人であらせられる。アマクサ様だ」
神父様は端正な顔立ちのその男をそう紹介した。
「アマクサだ。よろしく、ユウキ君」
差し出された手を握り返す。
「はじめまして、ユウキ・G4-d013です」
アマクサ卿は微笑んでから、手を下げると神父とリサさんを含めたこの教会に勤める三人に向き直る。
「此度の目覚めは実に104年前の聖ハルミエミ様以来のことである。実にめでたい」
「はい、直接神にお使えできる日が来るなど、身に余る光栄!」
神父様はハキハキと言った。
「素晴らしい。目覚めた神様にお使えするのは、その神様を祀っていた教会の人間、つまり君たち三人だ。しっかり、頼むぞ」
「は、はい」
アマクサ卿を前に、何事にも動じないと思っていたリサさんまでタジタジだ。
「おっと、迎えが来たようだ」
にわかに騒がしくなった上階の音を聞いて枢機卿は視線を上げた。
「第142番様の身柄はいったん、こちらで預かるよ。第0番宮殿で《《彼女》》に面会してもらう。君たちも立ち会うことになるかもしれないから心しておくように」
卿はそう言い残すと、到着した部隊にテキパキと指示をとばすと眠り続ける142番様を連れて教会を後にした。
***
「大変なことになりましたね」
「面倒なことになったねえ」
いつもの密度に戻った教会で、僕とリサさんの声がかぶった。
「なんて不謹慎なことを言うんだ。これほど名誉なことはない!まさか直接、この身を神に捧げることができる日が来るとは!」
神父様はかなり興奮気味だ。
「104年ぶりだって言ってましたね」
「言ってたねえ。104年前はどんな感じだったんだろ?」
リサさんが何なく口にする。
「はっ、そうだ。きちんと調べて置かなければ、142番様がお戻り鳴るまでに完璧に準備を整えないと」
神父様はそう言うと横に大きい体を揺らしてキビキビと執務室へ向かう。
「私もちょっと調べたいことあるから」
リサもそういって背を向ける。
「ちょっと待ってください、リサさんいなかったら今日どうするんですか?」
あわてて呼び止める。
「どうするもなにも、潜るべき御神体がないんだからどうしょうもないでしょ」
「あっ」
間抜けな声が出た。
「あんたは、神父様でも手伝ってあげな」
彼女はくすくす笑って、ゆうゆうとどこかに出かけていってしまった。
一応まだ勤務中だという言葉は投げかける暇もなかった。
いつも僕がつく頃には開けられている扉も窓もすべてがぴっちりと閉じられている。
極めつけに入り口にはいつもは居ないガードマンが立っていて、
彼に睨まれて僕はIDを見せる羽目になった。
中は中で異様だった。いつもは誰もいないはずの教会の中を、
数人の聖職者と思われる人間が行き来している。
その中のひとりが僕を見つけると地下へと誘導した。
地下にも4、5人の人影が見える。
「ユウキ、おそい!」
「ユウキ君よく来た」
見知った顔に声をかけられて少し安堵して息を吐く。
「なにがあったんですか?」
二人に尋ねる。
「見ればわかるさ!」
ふくよかな神父様が、いつになく浮かれた表情で奥の方を指し示す。
彼の示した方に視線を向けた。そこにはいつも見ていた142番が眠る結晶体があるはずだ。
「…そんな⁉」
割れていた、毎日見てきたあの水晶体が。
「142番は?」
あの中で眠っていた少年はどうなったのだろう。
「まだ、眠っておられる。奥の部屋でな。お目覚めになられたばかりだ無理もない」
想定外の方向から声が帰ってくる。声の主は、いかにもくらいの高そうな法衣をまとった男で、神父様の態度からも教会の中でかなりの地位にある人間のようだった。
「こちらは、教会の枢機卿の一人であらせられる。アマクサ様だ」
神父様は端正な顔立ちのその男をそう紹介した。
「アマクサだ。よろしく、ユウキ君」
差し出された手を握り返す。
「はじめまして、ユウキ・G4-d013です」
アマクサ卿は微笑んでから、手を下げると神父とリサさんを含めたこの教会に勤める三人に向き直る。
「此度の目覚めは実に104年前の聖ハルミエミ様以来のことである。実にめでたい」
「はい、直接神にお使えできる日が来るなど、身に余る光栄!」
神父様はハキハキと言った。
「素晴らしい。目覚めた神様にお使えするのは、その神様を祀っていた教会の人間、つまり君たち三人だ。しっかり、頼むぞ」
「は、はい」
アマクサ卿を前に、何事にも動じないと思っていたリサさんまでタジタジだ。
「おっと、迎えが来たようだ」
にわかに騒がしくなった上階の音を聞いて枢機卿は視線を上げた。
「第142番様の身柄はいったん、こちらで預かるよ。第0番宮殿で《《彼女》》に面会してもらう。君たちも立ち会うことになるかもしれないから心しておくように」
卿はそう言い残すと、到着した部隊にテキパキと指示をとばすと眠り続ける142番様を連れて教会を後にした。
***
「大変なことになりましたね」
「面倒なことになったねえ」
いつもの密度に戻った教会で、僕とリサさんの声がかぶった。
「なんて不謹慎なことを言うんだ。これほど名誉なことはない!まさか直接、この身を神に捧げることができる日が来るとは!」
神父様はかなり興奮気味だ。
「104年ぶりだって言ってましたね」
「言ってたねえ。104年前はどんな感じだったんだろ?」
リサさんが何なく口にする。
「はっ、そうだ。きちんと調べて置かなければ、142番様がお戻り鳴るまでに完璧に準備を整えないと」
神父様はそう言うと横に大きい体を揺らしてキビキビと執務室へ向かう。
「私もちょっと調べたいことあるから」
リサもそういって背を向ける。
「ちょっと待ってください、リサさんいなかったら今日どうするんですか?」
あわてて呼び止める。
「どうするもなにも、潜るべき御神体がないんだからどうしょうもないでしょ」
「あっ」
間抜けな声が出た。
「あんたは、神父様でも手伝ってあげな」
彼女はくすくす笑って、ゆうゆうとどこかに出かけていってしまった。
一応まだ勤務中だという言葉は投げかける暇もなかった。
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