転生しているヒマはねぇ!
73話 第1回冥界説明会
第一回冥界説明会は、大成功と言って良い。
マーシャの酢豆の巻物の効果が大きい。料理が絡むと、アイツは良い仕事をしてくれる。
特に冥界に不満を持つ12神、なかでも北神、南神が態度を軟化させてくれたのが良かった。
この2神は、神の中でも抜きん出て魂が強い。だから、他の神々よりも、巻物から溢れでた魔力の向こう側にいるマーシャの魂の強さを、魔力に込められた想いを、肌で感じ取ったのだろう。
極端な話、現界の神々が冥界のことなど知らなくとも世界は回る。
ただ、交流会が組まれている神族、上位悪魔族、知恵ある竜族に関しては、個体差はあるが、その多くが、時に魂の循環のバランスを大きく崩す程の破壊を現界にもたらす力を秘めているんだよ。
そういった力持つ現界の魂を暴走をさせないように、時には本人に説明を、時には力が拮抗する同種族、異種族の者達に働きかけ、現界の均衡を保つというのが、現界の魂との交流を持つ本来の理由だった。
それがいつの間にやら、冥界の力を誇示するような会合になり、時を経て冥界の魂をやり込める場へと変わってしまったのは、ひとえに管理職についた魂の驕りに他ならない。
マーシャは、自分の現界を軽んじる気持ちが部下にも伝わったからと、珍しく殊勝なことを言っていたが、オレはそうは思わない。
アイツは確かに冥界の魂を重視しているきらいがあるけれど、弱い立場の相手を一方的に嬲るようなことはしない。
話は冥界説明会に戻るが、説明会は、受付時に渡した資料を軸に予定通り行われ、合間合間に質問を受け付けるなどして、順調に進行できた。
残念ながら、最初の受付時に訪れなかった神々が遅れて参加するということはなかったが、同時に説明会を妨害するために武力行使等を仕掛けてくる神がでてくることもなかったのは幸いである。
現界の誕生も含めた、マタイラ世界の創世記に始まり、冥界・現界間での魂の循環システム。
現在の冥界の環境や問題点など、多岐に亘っており、かなりの時間を費やす。
にも関わらず、神々は熱心に耳を傾けてくれ、質問も積極的に行ってくれた。
終盤は進行をシャンセ係長にバトンタッチし、今後冥界側としては、神族とどう関わっていきたいかという意思表明。月1度の交流会の名称を意見交換会に変更し、参加する代表12神は、神々の投票で決めてもらうといった新提案。そして、参加を希望する神々と、転生界の希望者の親睦を図る親睦会を年1回行う企画の発表等々、冥界側の歩み寄る姿勢をアピールし、最後にこちらで用意したアンケート用紙を記入してもらい、第1回と銘打った冥界説明会は終了した。
神々が席を立ち始める中、俺はなんとか風神ウェントスと接触を試みようと思ったが、いかんせんウェントスが座っていたのは傍聴席の最上段。彼はすぐに大評議場を出てしまう。
更には、この間の交流会に参加した12神や過去に交流会に参加したことのある強き神々が、次々に労いの言葉をオレにかけてくる。
立場上彼らを無視してウェントスを追いかけるわけにはいかない。
「どうしたの、浮かない顔して?
ボクが見た限り、交流会以上に交流できたと思うけど」
神々の最後に声をかけてきたのは旅女神レンダだった。プルルさんと同じブロンドショート。癒されるー♪
「ああ、ちょっとな。
話してみたい神がいたんだけど、今は縁がなかったみたいだ」
「ふーん。ちなみに誰?」
「ああ、風神ウェントスっていう地方神なんだけど」
「ウェントス? 紹介しようか?」
「へ? 知ってるのか?」
「ウェントスはシーユーク大陸内陸部のダリーナ峡谷一帯で信仰されてる守護神なんだよ。
それでダイチ、ボクは何の女神?」
「旅の女神。
……そっか、土着の守護神なんかとは接点多そうだな」
「うん。そもそも、彼を説明会に誘ったのボクだしね。
彼はね。信仰する人々だけでなく、自身の力の及ぶ範囲に入った旅人にも加護を与えてくれる。
特にボクと仲の悪い嵐神ザウバーの力も、ダリーナにはほとんど届かない。
ウェントスが風の壁で跳ね返すからさ。
強くて優しいボクの友達だよ」
まるで自分のことのように自慢したレンダは、ちょっと待っててとウエストポーチから1枚の羽根を取り出し、魔力を込める。輝きだした羽に向かって、彼女は語りかける。
「ウェントス。ウェントス!
聞こえる? ボクだよ、レンダだよ」
「……ああ。聞こえるよレンダ殿。挨拶もせずに申し訳ないが、あまりダリーナを留守にしておく訳にもいかないのでな。すぐに、飛び立つつもりだ」
「待って! 冥界の、説明会の司会やってたダイチが君と話がしたいって!」
「ほお、あの御仁がか。
しかし、今も言った通り、出来る限り早くダリーナに帰りたい。
その御仁がダリーナに付いて来てくれると言うなら、話には応じるが」
レンダがオレを見る。
「って、言ってるけど?」
あー、神様もやっぱり忙しいんだな。。
俺がどうしようかと迷っていると、後ろから声がかかった。
「どうぞ。こっちは私が片づけておきますよ」とシャンセ係長。
「許可。残った神々への挨拶は最高責任者の私の役目」とラヴァー。
「でも、出来るだけ早めに冥界に帰って来てくださいね。あの子たちが寂しがりますから」とソレイユ。
なんてできた同僚、上司、部下なんだろうか!
「話はまとまったみたいだね。ついて来て、ダイチ。案内する!」
レンダが入口へと続く中央階段を、他の神々を巧みに避けながら駆け上って行く。
オレも続いて駆け上って行く!
ぶつかるのと謝るのとを繰り返しながら。
マーシャの酢豆の巻物の効果が大きい。料理が絡むと、アイツは良い仕事をしてくれる。
特に冥界に不満を持つ12神、なかでも北神、南神が態度を軟化させてくれたのが良かった。
この2神は、神の中でも抜きん出て魂が強い。だから、他の神々よりも、巻物から溢れでた魔力の向こう側にいるマーシャの魂の強さを、魔力に込められた想いを、肌で感じ取ったのだろう。
極端な話、現界の神々が冥界のことなど知らなくとも世界は回る。
ただ、交流会が組まれている神族、上位悪魔族、知恵ある竜族に関しては、個体差はあるが、その多くが、時に魂の循環のバランスを大きく崩す程の破壊を現界にもたらす力を秘めているんだよ。
そういった力持つ現界の魂を暴走をさせないように、時には本人に説明を、時には力が拮抗する同種族、異種族の者達に働きかけ、現界の均衡を保つというのが、現界の魂との交流を持つ本来の理由だった。
それがいつの間にやら、冥界の力を誇示するような会合になり、時を経て冥界の魂をやり込める場へと変わってしまったのは、ひとえに管理職についた魂の驕りに他ならない。
マーシャは、自分の現界を軽んじる気持ちが部下にも伝わったからと、珍しく殊勝なことを言っていたが、オレはそうは思わない。
アイツは確かに冥界の魂を重視しているきらいがあるけれど、弱い立場の相手を一方的に嬲るようなことはしない。
話は冥界説明会に戻るが、説明会は、受付時に渡した資料を軸に予定通り行われ、合間合間に質問を受け付けるなどして、順調に進行できた。
残念ながら、最初の受付時に訪れなかった神々が遅れて参加するということはなかったが、同時に説明会を妨害するために武力行使等を仕掛けてくる神がでてくることもなかったのは幸いである。
現界の誕生も含めた、マタイラ世界の創世記に始まり、冥界・現界間での魂の循環システム。
現在の冥界の環境や問題点など、多岐に亘っており、かなりの時間を費やす。
にも関わらず、神々は熱心に耳を傾けてくれ、質問も積極的に行ってくれた。
終盤は進行をシャンセ係長にバトンタッチし、今後冥界側としては、神族とどう関わっていきたいかという意思表明。月1度の交流会の名称を意見交換会に変更し、参加する代表12神は、神々の投票で決めてもらうといった新提案。そして、参加を希望する神々と、転生界の希望者の親睦を図る親睦会を年1回行う企画の発表等々、冥界側の歩み寄る姿勢をアピールし、最後にこちらで用意したアンケート用紙を記入してもらい、第1回と銘打った冥界説明会は終了した。
神々が席を立ち始める中、俺はなんとか風神ウェントスと接触を試みようと思ったが、いかんせんウェントスが座っていたのは傍聴席の最上段。彼はすぐに大評議場を出てしまう。
更には、この間の交流会に参加した12神や過去に交流会に参加したことのある強き神々が、次々に労いの言葉をオレにかけてくる。
立場上彼らを無視してウェントスを追いかけるわけにはいかない。
「どうしたの、浮かない顔して?
ボクが見た限り、交流会以上に交流できたと思うけど」
神々の最後に声をかけてきたのは旅女神レンダだった。プルルさんと同じブロンドショート。癒されるー♪
「ああ、ちょっとな。
話してみたい神がいたんだけど、今は縁がなかったみたいだ」
「ふーん。ちなみに誰?」
「ああ、風神ウェントスっていう地方神なんだけど」
「ウェントス? 紹介しようか?」
「へ? 知ってるのか?」
「ウェントスはシーユーク大陸内陸部のダリーナ峡谷一帯で信仰されてる守護神なんだよ。
それでダイチ、ボクは何の女神?」
「旅の女神。
……そっか、土着の守護神なんかとは接点多そうだな」
「うん。そもそも、彼を説明会に誘ったのボクだしね。
彼はね。信仰する人々だけでなく、自身の力の及ぶ範囲に入った旅人にも加護を与えてくれる。
特にボクと仲の悪い嵐神ザウバーの力も、ダリーナにはほとんど届かない。
ウェントスが風の壁で跳ね返すからさ。
強くて優しいボクの友達だよ」
まるで自分のことのように自慢したレンダは、ちょっと待っててとウエストポーチから1枚の羽根を取り出し、魔力を込める。輝きだした羽に向かって、彼女は語りかける。
「ウェントス。ウェントス!
聞こえる? ボクだよ、レンダだよ」
「……ああ。聞こえるよレンダ殿。挨拶もせずに申し訳ないが、あまりダリーナを留守にしておく訳にもいかないのでな。すぐに、飛び立つつもりだ」
「待って! 冥界の、説明会の司会やってたダイチが君と話がしたいって!」
「ほお、あの御仁がか。
しかし、今も言った通り、出来る限り早くダリーナに帰りたい。
その御仁がダリーナに付いて来てくれると言うなら、話には応じるが」
レンダがオレを見る。
「って、言ってるけど?」
あー、神様もやっぱり忙しいんだな。。
俺がどうしようかと迷っていると、後ろから声がかかった。
「どうぞ。こっちは私が片づけておきますよ」とシャンセ係長。
「許可。残った神々への挨拶は最高責任者の私の役目」とラヴァー。
「でも、出来るだけ早めに冥界に帰って来てくださいね。あの子たちが寂しがりますから」とソレイユ。
なんてできた同僚、上司、部下なんだろうか!
「話はまとまったみたいだね。ついて来て、ダイチ。案内する!」
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