転生しているヒマはねぇ!
43話 デート?
「ダイチ、無事? 仕事中に倒れたと聞いた」
仕事が終わり、居住界の繁華街入り口前で待っていてくれたラヴァーさんが、相変わらず抑揚の少ない話し方で、心配してくれる。
この人の場合、言葉は額面通りに受け取って問題ない。
「ええ。こうやって、ラヴァーさんが声をかけてくれるだけで、魂魄が少しずつ回復していくのを感じます。
生前、人との交流を避け、一人で生きているつもりでした。
……甘かった! 私は自分でわかっていないだけで、多くの人に存在を支えられていたのです!」
毎朝、挨拶をしてくれた暇そうなおじいちゃん、ありがとう!
こっちが、急いでいる時でも、世間話をしようしたおばちゃん、ありがとう!
こっちを見もしないで、無言でレジ打ちしてくれたおにいちゃん、ありがとう!
死んでから、オレの心の声を聞いてくれてる人達、本当にありがとう!
完全無視じゃなくてよかった!
……本当によかっ……た!
「……泣くな、ダイチ。
よくわからないが、ダイチは今日良い経験を積むことができたのだろう。
冥界ではとても貴重。経験を積めても、そのことに気づけない魂も非常に多い。
経験できて、それに気づくことができて、本当に良かった。
……祝福」
ラブァーさんは、オレの頭を抱き寄せ、背中の白い翼を広げ、涙を流すオレを周囲から覆い隠してくれた。
しばらくして、オレの涙が止まると、オレを離してスタスタと歩き出す。
「そろそろ時間。
個室を予約してある」
切り替えハヤッ!
置いていかれても困るので、オレは慌ててついていく。
ラヴァーさんに連れていかれたのは、繁華街の外れの地上3階建て雑居ビルの地下だった。
店の名は『カヴェル』
マタイラ現界の共有語では『旅』を意味していたはず。
店の中は、とても穏やかな雰囲気だった。
派手なライティングはなく、BGMとして小川の流れる音が採用されている。
置かれている椅子やテーブル等の備品、カウンターの作りまで、派手さではなく落ち着きをイメージさせるシックなモノだった。
タキシードを着た三本角老紳士の店員さんが、ラヴァーに慇懃な態度で話しかけてくる。
「お待ちしておりました、オーナー。
いつものお部屋をご用意させて頂いております」
「了解」
ラヴァーさんは短く答えると、店の一番奥の部屋へとオレを案内する。
部屋はとてもシンプルだった。
丸テーブルと4脚の椅子。壁には服をかけるハンガーのみ。
オレとラヴァーさんは向かい合って席につく。
「ここに招待したのは、ダイチが初めて。
マーシャ様や秘書課のメンバーは、皆でワイワイする方が好き。
でも、天国界、地獄界、裁断界の要職につく魂が、よく利用する高級店。
転生界だと、運営省の副大臣が常連」
なるほど、明らかに静かな雰囲気を楽しめる大人向けの店って感じだもんな。
マーシャなんかは雰囲気ぶち壊しだろうな。
「料理はコースを選択済。
マタイラと界交のある57世界の料理が数品ずつ、少量出てくる。
ただし、食材はマタイラのモノ。味等に多少の違いあり。
でも、味は保証。シェフは全員、マーシャ料理学校主席卒業者」
……マーシャ料理学校だと⁉
アイツ、本当に食に対してはやたら熱心だな。
「普段、チキュウの料理はフランス、イタリアが基本。
今日はダイチのことを説明。
主任シェフが、ニホンのモノを用意すると張り切っていた。
……楽しみ」
「へぇー。それは嬉しいですね。「い〜と魔鬼魔鬼」とかで、酒のつまみなんかは、故郷に近いもの出てきますけど、それ以外はないですからね」
「酒も57世界分出てくる」
それは楽しみだな。
しかし、すごく気になるのは……お値段です。
情けないが、基本的には小心者なので、気になって仕方ない。
原稿料もあるから、それなりの収入は入り始めたが……。
本日は互いの不安解消の為の会合なので、不安を魂魄の中にしまわずに直接聞いてみることにした。
「……でも、お高いんでしょ」
ラヴァーさんがはっきりと頷く。
そこは、本日は特別価格とか言って欲しかった!
「ダイチの今の収入で、個人的に来るのは止めた方が良い。
今日は、私がダイチとここで食事をしたかった。
だから、私がご馳走する。
私とダイチの月の収入は2桁は違う。
気にする必要は一切ない。
それでも、気になるなら、以前も頼んだ新事業への協力を再度要請。
具体的な協力内容を、今度資料にまとめて渡す。真剣に検討を希望」
「りょ、了解」
「感謝」
ラヴァーさんが、柔らかい笑みを見せる。
これまで、表情を変えるところをほとんど見たことがなかったから、とても可愛らしく見えた。
仕事が終わり、居住界の繁華街入り口前で待っていてくれたラヴァーさんが、相変わらず抑揚の少ない話し方で、心配してくれる。
この人の場合、言葉は額面通りに受け取って問題ない。
「ええ。こうやって、ラヴァーさんが声をかけてくれるだけで、魂魄が少しずつ回復していくのを感じます。
生前、人との交流を避け、一人で生きているつもりでした。
……甘かった! 私は自分でわかっていないだけで、多くの人に存在を支えられていたのです!」
毎朝、挨拶をしてくれた暇そうなおじいちゃん、ありがとう!
こっちが、急いでいる時でも、世間話をしようしたおばちゃん、ありがとう!
こっちを見もしないで、無言でレジ打ちしてくれたおにいちゃん、ありがとう!
死んでから、オレの心の声を聞いてくれてる人達、本当にありがとう!
完全無視じゃなくてよかった!
……本当によかっ……た!
「……泣くな、ダイチ。
よくわからないが、ダイチは今日良い経験を積むことができたのだろう。
冥界ではとても貴重。経験を積めても、そのことに気づけない魂も非常に多い。
経験できて、それに気づくことができて、本当に良かった。
……祝福」
ラブァーさんは、オレの頭を抱き寄せ、背中の白い翼を広げ、涙を流すオレを周囲から覆い隠してくれた。
しばらくして、オレの涙が止まると、オレを離してスタスタと歩き出す。
「そろそろ時間。
個室を予約してある」
切り替えハヤッ!
置いていかれても困るので、オレは慌ててついていく。
ラヴァーさんに連れていかれたのは、繁華街の外れの地上3階建て雑居ビルの地下だった。
店の名は『カヴェル』
マタイラ現界の共有語では『旅』を意味していたはず。
店の中は、とても穏やかな雰囲気だった。
派手なライティングはなく、BGMとして小川の流れる音が採用されている。
置かれている椅子やテーブル等の備品、カウンターの作りまで、派手さではなく落ち着きをイメージさせるシックなモノだった。
タキシードを着た三本角老紳士の店員さんが、ラヴァーに慇懃な態度で話しかけてくる。
「お待ちしておりました、オーナー。
いつものお部屋をご用意させて頂いております」
「了解」
ラヴァーさんは短く答えると、店の一番奥の部屋へとオレを案内する。
部屋はとてもシンプルだった。
丸テーブルと4脚の椅子。壁には服をかけるハンガーのみ。
オレとラヴァーさんは向かい合って席につく。
「ここに招待したのは、ダイチが初めて。
マーシャ様や秘書課のメンバーは、皆でワイワイする方が好き。
でも、天国界、地獄界、裁断界の要職につく魂が、よく利用する高級店。
転生界だと、運営省の副大臣が常連」
なるほど、明らかに静かな雰囲気を楽しめる大人向けの店って感じだもんな。
マーシャなんかは雰囲気ぶち壊しだろうな。
「料理はコースを選択済。
マタイラと界交のある57世界の料理が数品ずつ、少量出てくる。
ただし、食材はマタイラのモノ。味等に多少の違いあり。
でも、味は保証。シェフは全員、マーシャ料理学校主席卒業者」
……マーシャ料理学校だと⁉
アイツ、本当に食に対してはやたら熱心だな。
「普段、チキュウの料理はフランス、イタリアが基本。
今日はダイチのことを説明。
主任シェフが、ニホンのモノを用意すると張り切っていた。
……楽しみ」
「へぇー。それは嬉しいですね。「い〜と魔鬼魔鬼」とかで、酒のつまみなんかは、故郷に近いもの出てきますけど、それ以外はないですからね」
「酒も57世界分出てくる」
それは楽しみだな。
しかし、すごく気になるのは……お値段です。
情けないが、基本的には小心者なので、気になって仕方ない。
原稿料もあるから、それなりの収入は入り始めたが……。
本日は互いの不安解消の為の会合なので、不安を魂魄の中にしまわずに直接聞いてみることにした。
「……でも、お高いんでしょ」
ラヴァーさんがはっきりと頷く。
そこは、本日は特別価格とか言って欲しかった!
「ダイチの今の収入で、個人的に来るのは止めた方が良い。
今日は、私がダイチとここで食事をしたかった。
だから、私がご馳走する。
私とダイチの月の収入は2桁は違う。
気にする必要は一切ない。
それでも、気になるなら、以前も頼んだ新事業への協力を再度要請。
具体的な協力内容を、今度資料にまとめて渡す。真剣に検討を希望」
「りょ、了解」
「感謝」
ラヴァーさんが、柔らかい笑みを見せる。
これまで、表情を変えるところをほとんど見たことがなかったから、とても可愛らしく見えた。
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