転生しているヒマはねぇ!
22話 噂話
「さて、次は人事も含めて今後のことじゃな。人事や総務も関わってくるか。……よし、臨時会議じゃ。レイラ、手配を頼む。
ダイチ、お前はもうよいぞ。定時で帰るとよい。ご苦労だった」
「ああ、そうか。いても仕方ないもんな。それじゃあ、モニター室に戻るわ」
「ああ、ダイちゃん。モニター室に行く前に、監視課の課長に声をかけといてね。戻りましたって」
「了解」
4人に見送られ、オレは執務室を後にし、転移魔法陣を利用して植物部監視課に戻った。これまで不機嫌そうな顔しか見たことのなかった監視課の課長は、今日はとても機嫌が良かった。肌にも張りがあり、10歳は若返ったように見える。
「やあ、ダイチ君。お帰り。今日はなにかとたいへんだったみたいだね。モニターに関しては、私がバッチリ見ていたから心配しなくて良い……と言っていたとチェリー様に是非伝えておいてくれたまえ」
「は、はあ」
課長が自身の腕時計をちらりと見る。
「もう30分もないな。ダイチ君、今日は疲れただろうから、もうあがってもかまわないよ。
……その代わりと言う訳ではないんだが……、チェリー様に、また是非、罵・・・叱咤激励をしに来てくれるように頼んではもらえないだろうか?」
上目遣いで、オレをチラチラと見てくる。少しキモい。
「えーと、チェリー……さんは、今日だけの補佐官代理で……」
瞬間、課長の顔が、雷の直撃を受けたかのように激変した。
「いえ! 連絡はつくと思うので、頻繁には無理でしょうけど、たまにでも課長を罵倒するように伝えておきます!」
課長が、ガシッとオレの手を握って来る。
……チェリーさん、貴女この方にいったい何を?
オレは課長の手をなんとか振り払い、植物部監視課から離れた。
なんとも言えない気分になったが、上司からの許可ももらったので、今日はさっさと帰ってしまおうと決め、役所を出ると、ンボさんから魂魄通話が入った。
(お疲れ、ンボさん)
(ダイちゃん、お疲れ〜。なんかダイちゃんの件で、人類部がゴタゴタがしたって聞いたけど、ダイちゃん、大丈夫? 巻き込まれてないかい?)
ンボさんは噂を聞きつけるのが早いな。
(ああ、少し関わったけど、ほとんど外側にいたから、平気、平気)
(そっか~。なら良かった。もし巻き込まれてたら、おいら心配するだけで、なにもしてあげられないからさ)
うん。ンボさんは相変わらずでホッとする。
(ところでダイちゃん、仕事もう終わりそう?
おいら、あと片付け終われば帰れそうだから、良かったら魔鬼魔鬼で一杯どう? 気になる噂も聞いちゃったし)
ふむ。このまま帰るのもなんだし、『い~と魔鬼魔鬼』は、無くなる可能性があるからな。今のうちにもう一回行っておくか。
(オッケー。オレ、実はもう帰るところでさ。ンボさんも、もうすぐ帰れるなら、オレ先に行って席とっとくよ)
(ホント?  助かる〜。あと注文も適当にお願ーい)
(りょうか〜い)
いいな。この緩い感覚。
オレは通話を終えると、すぐに居住界への転移魔法陣に飛び乗る。
まだ、暗くなっていないにも関わらず、活気のある通りを抜け、『い~と魔鬼魔鬼』の暖簾をくぐる。
前に来た時と同じ、ガラが悪くならない程度に賑やかな店内。
できればこの雰囲気を、今後も味わえる事を祈らずにはいられない。
オレが注文を終え、店員がまずシュポカを二人分運んでくると、タイミング良くンボさんが到着した。
とりあえず乾杯して一息つく。
「いやー、誘おうかどうか迷ったんだよね。ダイちゃん、たいへんそうだって話聞いてたし。でも、おいら心配になっちゃって。変な噂たってたから」
「そう言えば、魂魄通話でも言ってたね。どんな噂?」
シュポカを喉の奥で味わいながら、ンボさんが話すのを待つ。
「うん。えーとね、ダイちゃんがね、セクハラ、パワハラ、モラハラのオンパレードで、わずか2週間で、もう補佐官が4人も変わってるって。1人は魂魄へのダメージが酷すぎて、出勤すら出来なくなったって」
「ぶっ‼」
「ちょっ!  ダイちゃーん!」
オレが吹き出したシュポカを浴びて、ンボさんが非難の声をあげる。
「だって! ンボさんが変なこと言うから!」
「おいらが言ってるんじゃないよ!  おいらはさ、こうしてダイちゃんの人となりを知る機会を持ててるからね。そんな魂じゃないことくらい知ってるよ。
でもダイちゃん、おいらとおんなじでさ、あまり自分からはコミュニケーションとりにいかないでしょ? 
だから、みんな適当に見たいところだけを見て、好きなように想像して噂をたてるのよ。
ほら、自分に関係ない人の噂をするだけなら、自分に跳ね返ってこないって考える奴、やっぱ多いのよ。自分に変化が来るのは怖い。でも、刺激は欲しい。冥界で長いこと生活している魂は、そんなのばっかよ。おいらも昔、嫌な思いしたもん」
ンボさんが遠い目をしている。
しかし、無責任な噂が流れているもんだ。オレ自身は別に平気だが、これからの仕事の足枷になったりしたら嫌だな。
「なんとかできないかな」
つい出てしまった呟きに答えたのは、ンボさんじゃなかった。
「魂の噂も四十九日」
オレとンボさんは、同時に声のした方を見た。
「ほっときなさい。人の噂よりも長生きしやしない。くくっ♪」
俺たちの隣の席で、1人シュポカを飲んでいた狐顔の男が、ニヤリと笑った。
ダイチ、お前はもうよいぞ。定時で帰るとよい。ご苦労だった」
「ああ、そうか。いても仕方ないもんな。それじゃあ、モニター室に戻るわ」
「ああ、ダイちゃん。モニター室に行く前に、監視課の課長に声をかけといてね。戻りましたって」
「了解」
4人に見送られ、オレは執務室を後にし、転移魔法陣を利用して植物部監視課に戻った。これまで不機嫌そうな顔しか見たことのなかった監視課の課長は、今日はとても機嫌が良かった。肌にも張りがあり、10歳は若返ったように見える。
「やあ、ダイチ君。お帰り。今日はなにかとたいへんだったみたいだね。モニターに関しては、私がバッチリ見ていたから心配しなくて良い……と言っていたとチェリー様に是非伝えておいてくれたまえ」
「は、はあ」
課長が自身の腕時計をちらりと見る。
「もう30分もないな。ダイチ君、今日は疲れただろうから、もうあがってもかまわないよ。
……その代わりと言う訳ではないんだが……、チェリー様に、また是非、罵・・・叱咤激励をしに来てくれるように頼んではもらえないだろうか?」
上目遣いで、オレをチラチラと見てくる。少しキモい。
「えーと、チェリー……さんは、今日だけの補佐官代理で……」
瞬間、課長の顔が、雷の直撃を受けたかのように激変した。
「いえ! 連絡はつくと思うので、頻繁には無理でしょうけど、たまにでも課長を罵倒するように伝えておきます!」
課長が、ガシッとオレの手を握って来る。
……チェリーさん、貴女この方にいったい何を?
オレは課長の手をなんとか振り払い、植物部監視課から離れた。
なんとも言えない気分になったが、上司からの許可ももらったので、今日はさっさと帰ってしまおうと決め、役所を出ると、ンボさんから魂魄通話が入った。
(お疲れ、ンボさん)
(ダイちゃん、お疲れ〜。なんかダイちゃんの件で、人類部がゴタゴタがしたって聞いたけど、ダイちゃん、大丈夫? 巻き込まれてないかい?)
ンボさんは噂を聞きつけるのが早いな。
(ああ、少し関わったけど、ほとんど外側にいたから、平気、平気)
(そっか~。なら良かった。もし巻き込まれてたら、おいら心配するだけで、なにもしてあげられないからさ)
うん。ンボさんは相変わらずでホッとする。
(ところでダイちゃん、仕事もう終わりそう?
おいら、あと片付け終われば帰れそうだから、良かったら魔鬼魔鬼で一杯どう? 気になる噂も聞いちゃったし)
ふむ。このまま帰るのもなんだし、『い~と魔鬼魔鬼』は、無くなる可能性があるからな。今のうちにもう一回行っておくか。
(オッケー。オレ、実はもう帰るところでさ。ンボさんも、もうすぐ帰れるなら、オレ先に行って席とっとくよ)
(ホント?  助かる〜。あと注文も適当にお願ーい)
(りょうか〜い)
いいな。この緩い感覚。
オレは通話を終えると、すぐに居住界への転移魔法陣に飛び乗る。
まだ、暗くなっていないにも関わらず、活気のある通りを抜け、『い~と魔鬼魔鬼』の暖簾をくぐる。
前に来た時と同じ、ガラが悪くならない程度に賑やかな店内。
できればこの雰囲気を、今後も味わえる事を祈らずにはいられない。
オレが注文を終え、店員がまずシュポカを二人分運んでくると、タイミング良くンボさんが到着した。
とりあえず乾杯して一息つく。
「いやー、誘おうかどうか迷ったんだよね。ダイちゃん、たいへんそうだって話聞いてたし。でも、おいら心配になっちゃって。変な噂たってたから」
「そう言えば、魂魄通話でも言ってたね。どんな噂?」
シュポカを喉の奥で味わいながら、ンボさんが話すのを待つ。
「うん。えーとね、ダイちゃんがね、セクハラ、パワハラ、モラハラのオンパレードで、わずか2週間で、もう補佐官が4人も変わってるって。1人は魂魄へのダメージが酷すぎて、出勤すら出来なくなったって」
「ぶっ‼」
「ちょっ!  ダイちゃーん!」
オレが吹き出したシュポカを浴びて、ンボさんが非難の声をあげる。
「だって! ンボさんが変なこと言うから!」
「おいらが言ってるんじゃないよ!  おいらはさ、こうしてダイちゃんの人となりを知る機会を持ててるからね。そんな魂じゃないことくらい知ってるよ。
でもダイちゃん、おいらとおんなじでさ、あまり自分からはコミュニケーションとりにいかないでしょ? 
だから、みんな適当に見たいところだけを見て、好きなように想像して噂をたてるのよ。
ほら、自分に関係ない人の噂をするだけなら、自分に跳ね返ってこないって考える奴、やっぱ多いのよ。自分に変化が来るのは怖い。でも、刺激は欲しい。冥界で長いこと生活している魂は、そんなのばっかよ。おいらも昔、嫌な思いしたもん」
ンボさんが遠い目をしている。
しかし、無責任な噂が流れているもんだ。オレ自身は別に平気だが、これからの仕事の足枷になったりしたら嫌だな。
「なんとかできないかな」
つい出てしまった呟きに答えたのは、ンボさんじゃなかった。
「魂の噂も四十九日」
オレとンボさんは、同時に声のした方を見た。
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