チビで鈍足。高校サッカーへの挑戦

ノベルバユーザー425222

丸山蹴斗2

 蹴斗は中学に上がる時、小学校で同じチームだった幼なじみの佐藤将さとうしょうと共にセレクションを勝ち抜き地元から少し離れた場所で活動する県内屈指の強豪チームに入った。
 そこには当然レベルの高い選手が集まっていた。小学校で敵なしだった蹴斗は初めての挫折を味わった。
 チームには30強の選手がいてABCの3チームに分けられていた。蹴斗のそこでの最初の立ち位置は、試合に最初から出ることのできるスタメンはおろか、AチームにもBチームにも入ることが出来ず、Cチームのその中でも下の方であった。
 当然ショックは大きかった。なんでも人よりできて当たり前だった彼がそこで初めて自分は凡人なんだと気づいた。スタメンで出ているメンバーのプレーをみて自分にそんな事はできないと思った。初めての感覚だった。彼は体が小さい事そしてキックが飛ばないことが弱点であった武器であったはずのスピードも、強豪ひしめく県トップクラスの選手たちの中では鈍足扱いで逆に弱点になってしまった。
 しかし蹴斗は根っからのチャレンジャー気質だった。そして自己分析できる頭脳も兼ね備えていた。自分の生き残る道を見極め貪欲に結果だけを追い求めた。自分からみたら完璧すぎるほどのプレーをするAチームのメンバーたち。その中で唯一左サイドバックに自分が生きる道を見出した。
 蹴斗のチームはいわゆるパスサッカーを目標としていて、キーパーから繋ぐスタイルであった。そのため中盤や前線の選手はもちろん守備陣にもゲームメイクの才能が問われた。とりわけサイドバックはそこから展開が始まるといっても過言ではなく守備と攻撃両方の才能が求められた。また、この時スタメンの左サイドバックは右利きであり自陣サイドでボールをつなぐポゼッションをする際には不利であった。
 蹴斗は自分が左利きであること。そして小学校の頃は前線をやっておりゲームメイクまたドリブルもできることを武器として左サイドバックの座を奪い取ることを決意した。とはいっても課題は多く、守備は専門外であったしヘディングは小ささのハンデからほとんど勝つ事は出来なかった。
 それでもスタメンで活躍することだけを目指してくる日もくる日も守備を磨き続け、3年の頃にはついにスタメンを勝ち取った。
 しかしメンバーの中で力が劣っていることは明らかだった。身長が圧倒的に劣っている事もあり相手チームには蹴斗の場所を狙われまくった。
完全に満足できる中学サッカーではなかったが十分に大逆転といえる成果を残した。




自分よりも高いレベルのチームに所属することで成長する喜びを知った蹴斗は、唯一声を掛けてもらったS高校に進学することを決めた。S高校は県内だが遠い場所に位置し寮生活をしなければならなかった。

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