カタミミのタビビト

ヤソウ

カタミチキップ

ノクロが森を歩いているとキップ売りの少女が現れた。
「迷いの森の~迷わないキップは要らんかね~?」
と言いつつ藪から突然現れた。


「迷わないキップ?」
ノクロがそう言うと、少女はニヤリと笑って答えた

「ええ、このキップを持っていると迷わず出口へ出ます。」

そこでノクロは当然の疑問を投げかける
「出口ってどっちの出口だい?北?南?
因みに僕は西から入ってきたよ。」

するとキップ売りの少女は大げさな身振りで森の奥を指さし言った
「出口は出口です。貴方が目指す出口以外の他はありません。」

ノクロは悩んだ、紙切れ1つで迷わず出口へ出られるなんて胡散臭い話だと。
しかし、かれこれ3日は森を彷徨っていたノクロは一刻も早く出口へ出たかった。

「よし、買おう」
ノクロは買う事を決意した。
するとキップ売りの少女が1枚のキップを手渡して言った

「貴方の旅の行き先は?」

「今はこの森の北東にある街かな...」

「では」
キップ売りの少女がそう言うと、キップが輝きはじめて一瞬光が視界を白く覆った。

一瞬の光から視界が戻った時には森ではなく拓けた草原になっていた。
後ろを振り返ると森が見える、そして隣にはキップ売りの少女が立っていた。

「ここは?」

「森の北東付近ですよ。
そのまま道を進んでいけば街に着く筈です。」

キップ売りの少女が指さした方角には
ずっと道が続いて、その先に小さく街が見えた。

「今のは魔法?」

「はい、正確には魔術符ですが
実は私は魔法使いでして。」

「そうなんだ、あ、お代渡さなきゃだね」

「お代はけっこうですよ。」

「え?」

「その代わり、私も耳を探す旅に同行しても良いですか?」

「どうしてそれを...?」

少女が髪をかき上げると、彼女もまた、片耳が無かった。

「私はフラール、私も片耳です。」












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