聖剣に選ばれたスライムは、魔物なので勇者失格です!?

アイララ

その攻撃は届きません!?

『ゼルドラント親衛隊、雷の小弓使い・ルゼンタ。いざ参る!』

彼女はそう言いながら剣を、、、ではなく弓を構えた。

「えっとね、お互い模造のロングソード使ってきたよね。なんで貴女だけ弓なのよ。」

『大丈夫、この魔法の弓矢に矢尻無し。貴様に刺さっても死にはせぬ。一応、ゼルドラントをたぶらかした報いを受けてもらう為、かなりの痛みはあるがな。』

なるほど、あまり納得は出来ないけどここは我慢しよう。これから異世界での初冒険という大事な用があるし、こんな事早く終わらせないとね。

とはいえ、ロングソード対弓かぁ。この距離なら突っ込んで斬り付けるだけだし、そう難しい戦闘ではないな。

でも、さっきの相手は中々嫌らしい攻撃をしていたよね。きっと一筋縄ではいかない筈。さて、どう来るかな。

『風よ舞え、私の身体を浮かせたまえ!ふはは、どうだ!これなら貴様の攻撃も通るまい!』

なるほど。接近戦ならすぐに攻撃を喰らうから、風魔法で屋根に退避する作戦ね。、、、馬鹿野郎!卑怯にも程があるだろ!

『喰らえ喰らえ、ゼルドラント様を誑かした罰だ!これに懲りたら二度とゼルドラント様に近付くでないぞ!』

そう調子に乗りながら、私に強烈な一撃を喰らわせようとする。弓での攻撃を躱し突撃すれば、反対側の屋根に避難し再度攻撃。

苛つく事この上ないが、確かに有効な戦術だ。仕方ない、ここは一旦調子に乗らせておくか。

〜〜〜〜〜

三度の戦いの中で一番長引き、もう五分ぐらいは経っている。傍目から見れば、攻撃できてない私の方が不利に見えるだろう。

だが彼女は気づいてない、自らが弱点を晒してきた事に。

『ふはは、降伏なら受け付けてるぞ!ゼルドラント様に近付かない、という条件付きでな!』

その弱点とは調子に乗って、動きが単調になった事だ。屋根の上を行ったり来たり、同じ場所を飛び回るだけ。その動きを読みさえすれば、後は彼女をはたき落とすだけ。

「(右、左、右、左。タイミングはバッチリね。)今だ!」

私は手に持ったロングソードを振りかぶり、投げた。円弧を描きながら真上に飛び、彼女の真下に潜り込む。

『グボォ!!!』という悲鳴を出しながら、彼女は地面に落ちていき、、、ゼルドラントが受け止めた。

「勝負ありね。よかったじゃない、憧れの人に抱っこしてもらえて。」

こうして、異世界で初となる真剣勝負は私の勝利となった。

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