異世界転生してハーレムルートなのにヤンデレしか選択肢がないんだが?

守村 肇

08 実は視力は両目とも2.0



 赤である。
 何度見ようがどれだけ見ようが横目だろうがじっくり見ようが二度見しようが赤である。
 なにがってもちろんエレーナが言う「あそこに座ってる人」の髪の色の話なんだけど。




「いや、いやいやいや、エレーナさん、赤。あれは赤」


「ないないないない、黒よ、あれはウタキと同じ色よ」


「うせやん」




 色の認識が違うってことはない。それはもう今日までのあれこれでわかりきっている。
 だから理由は一つしかない。俺とエレーナに見えている色がそれぞれ違うということだ。そんなことあんの?




「オッケー、話しかけてみれば解決するわ」


「俺エレーナのそういう行動力あるとこ好きだけど嫌いだわ」




 コミュ障男子大学生になんて酷なことさせやがる、とは思う。
 いやまあ仕方ないけどね、本人に聞いた方が手っ取り早いのはわかるけどね。




「あの」


「はい?」


「あなたって、もしかして転移者か転生者なのかしら?」


「ええ、そうですよ、っていうかこの髪色だと大体そうじゃないですか?」




 いやだから赤じゃん。マロニエさんの負けず劣らずの赤じゃん。
 話を聞いてみるとこのお兄さんはタケルさんというらしい。歳は25、こっちに来たのは先週のことだという。先週? そういや俺がここにきたのいつだっけ。ここでは時間の流れが24時間365日じゃないから地球式計測だと思ってるよりもこの世界にいるのかもしれない。




「俺は普段はこの町でガリオン商会の手伝いをしてるんです。でも聞いてた割に転移者っていないんですね」


「……ちなみに、彼も転移者よ?」


「ええっ、そんな綺麗な緑髪なのに!?」




 驚いてそういうタケルさんの言葉に俺とエレーナは顔を見合わせた。
 やっぱりそうなんだ、どうしてかはわからないけど「転移者・転生者同士」では相手が黒髪に見えないらしい。だから俺にはタケルさんは赤髪に見えるし、タケルさんから俺は緑髪に見えるってことになる。




「うそ、全然知らなかった、だって、だってみんなにそう見えてるって」


「まあ。視界は共有できないから仕方ないよな。あ、ウタキです。大学2年です」


「大学生なんて久々に聞いたなあ、よろしく」




 これから仕事だからもし入用なら商会に来てくれれば、というとタケルさんは店を出て行った。
 さて、俺達も用事ができたぞ。エレーナは相変わらずぽかんとしていたが、転移者の話をするならまず専門家に聞きにいかねえとな。





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