異世界転生してハーレムルートなのにヤンデレしか選択肢がないんだが?

守村 肇

01 勇者じゃない世界の話





「よーしよしよし、よくやったぞウタキ!エレーナとティタニアとロスもおかえり!」


「は、陛下。長らく城を離れていたことを心からお詫び申し上げます」


「城の安寧より国のことだ、よく働いてくれたな、褒美はなにがいい?」


「では軟弱の命を」


「なんで?」




アリアドネちゃんとアルバートくんと一応書面で「今回の陣取り終わりね」って取り決めて、ロッタさんに手紙を出してから王都に戻ってきた。後日、凱旋パレードをしようかって打診をされたけど勘弁してくれって低調に断った。まあ、祭りのネタとしては最上級だから号外だけ周知して住民はみんなバカ騒ぎすればいいんじゃないかと思う。




「陣取りが終わったんだから勇者の固定ルートも外れたろ?」


「ヤンデレは相変わらずみたいなんですがそれは・・・」


「うふふふふ、ウタキ様お帰りなさいませっ。私、朝な夕な毎日毎日毎日毎日毎日毎日ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとあなた様のことだけを考えてお慕いしておりました」


「ありがとう姫様、ちょっと離れてくんない?」




勇者、っていう役職がはがれたのはなんとなくわかる。なんでって言われても難しいけど、髪をバッサリ切ったときの違和感みたいなものに近い。なんかすーすーするなーとか頭軽くなったなーとか自分の目で直接見てるわけじゃないのに感覚的にそう思うやつ。卒業式の翌日の朝寝坊とかね。「あー終わっちゃったな―」みたいなやつね。よくわかんないけどさ。




「まあ、勇者じゃなくなったってしばらくはここにいるんだろうしな。いつだって勇者ってそんなもんだ」




たしかに、ロッタさんも先代勇者のカズキさんのことを「いつの間にかいなくなってた」ってふうに言っていた。もしかしたら何かのはずみで自分の世界に帰ったりするのかもしれないなと思う。勇者になるためだけにこの世界に来たんだな・・・みたいなオチもあるかもしれないし。


アリアドネちゃんとアルバートくんは、自分たちらしい格好っていうので、自分たちらしい振る舞いをして生きていくんだそうだ。東の端にあるハーパフォートという町へ行くらしい。ロッタさんは自分の娘が実は息子で、自分の甥っ子(?)がじつは姪っ子だったことにひどく驚いていたけれど「おすすめする服が逆になるだけね」と笑っていた。二人は泣いてた気がするけど、もう終わったし好き勝手気ままに生きてほしいと思う。なんせ魔族は寿命が長いから。


リトは本来の仕事に戻るっす!と言って転生対応事務局に戻っていった。もう命かけたくないんで!とかなりいい笑顔で。もしなんかイレギュラー起きたら真っ先に巻き込んでやろうと決めた。


ティタニアさんはまた騎士団に復帰。もともと借りていただけだからそれはわかり切っていた。ロスくんは今回の功績もあって、王国軍作戦司令部っていう国の頭脳の中枢みたいなところに栄転になったそうだ。頭いいもんね。まあ王様が「現場にいなきゃどうとでもなる」って言ってたからもう実戦部隊には回らないだろう。危なっかしいもん。


フィーアは、散り散りになった魔族を手助けするのにあっちこっち行ってみるとだけ言っていた。「勇者サマ・・・じゃないのかあもう。ウタキ様を食べれないのは残念だけどぉ、同胞もかわいそーだし、アタシ諦めないからねえ!食べるの!」と言って魔王城を出てすぐ分かれた。ぜひ諦めてほしい。




で、肝心のエレーナの話をしようと思う。

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