異世界転生してハーレムルートなのにヤンデレしか選択肢がないんだが?

守村 肇

77 そして世界は平和になりましたとさ



「あ、ラッキー7ですね!77ですね!」


「よく前話の引きからそんな発言できるなお前・・・」


「とか言って、ティタニア様もちょっと気になってたんじゃないですか?」


「ロスくん頼むからマジで黙ってくれない?」




シリアスムードは嫌いだけどしょっぱなこれはあまりに格好つかなさすぎてなんかいろいろ通り越した気持ちになる。やめてよやめてよ。
アリアドネちゃんはわなわなと震えて、でもアルバートくんの手を放しはしていない。ほとんど放心したアルバートくんをかばう様に前に出てきて叫んだ。




「ふ、っざけんな!そんなルートに俺のアルが影響されるって!?アルはっ、アルは俺のことだけ想ってくれてたんだ。ポッと出のお前のわけのわかんないルートなんかでアルをとられてたまるかよ!」


「あらぁ、それが素なのね」


「エレーナもちょっと黙ろうね」


「アリア・・・ぼくは、ぼくはもう」


「アル、アルは俺が好きなんだよね?ねえ?俺もアルしかいらないよ、いつも言ってるじゃん魔王なんてなりたくなかったって。俺は、俺にはアルがいればいいんだよ」




思ってたより背景にある問題はごっちゃなようだ。俺たちが首突っ込んでいいことじゃなさそう。
でも待てよ?アルバートちゃんがアリアドネくんを好きっていう前提があるんだったら、俺にことは殺せないかもしれないけれど俺にヤンデレる理由がないからそうなるんじゃないの?だって、ティタニアさんも姫様もクレアとクレオも「好きな人」なんていうのがそもそもいないんじゃない?




「あー、もめてるとこ悪ぃんだけど」


「なんだよ!お前っ、アルに近づくなよ!」


「いや、さっきも言ったじゃん。ヤンデレは自分のためにしか好きなやつ殺せないって。俺のこと好きじゃないから殺せないんだよ、それって二人が両想いだからなんじゃないの?」


「え?」




もちろん固定役職の影響力とかもろもろあるかもしれないけれど、ルートががちがちに強制できるのはルート保持してる本人だけだろう。エレーナみたいな後発的なのはちょっと特別かもしれないけど、王様だて「そうなるように決まってる」しロッタさんだって「やることやり切って開放された」っていうのが正しいんだから。




「アリア、ぼく、アリアのそばにいたいだけなんだ、だから」


「ご、ごめんねアルバート、泣かないで、そんなつもりじゃないし私だってずっと一緒にいたいって思ってるよ、わがままばっかり言ってごめんね、ねえ」




慌てたのか落ち着いたのか、口調が「アリアドネちゃん」になっている。部下がいるようなところで生活してたんだからそういう振る舞いするのが染みついてしまっているのかもしれない。




「・・・で、どうするんすか、ウタキさん」


「っていうかなにをもって魔王を倒したになるわけ?」


「ゲーム戦のときは負けましたって証明書でとかなんとか言ってた気がするっすけど」


「ふーん、まあ殺したりなんだりしなくていいなら証明方法なんてなんでもいいのかもな」




二人に歩み寄ると警戒したような目で見られる。しゃがみこんで右手を差し出すとふたりともきょとんとして警戒を解いた。




「史上初の無血開城といこうぜ。こういうときは握手でもするもんだろ」


「・・・あんた、本当に勇者サマ?」


「んー、どうなんだろうな、どう思うエレーナ?」




名目は、一応勇者。だけど、俺自身は勇者なんて望んだわけじゃない。




「ちがうわね」


「仲間がこう言ってんだから違うんじゃね?」


「じゃあなんなの?」




クスクスとエレーナが笑った。




「いつも言ってるじゃない。ウタキはね、平凡むしろマイナスな大学生、ってやつなのよ」

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