異世界転生してハーレムルートなのにヤンデレしか選択肢がないんだが?

守村 肇

22 夜の主旋律





「ウタキ、お前のことはパキラから聞いとるけ。勇者適正があるのけ?」
「…………」
「な、なんかあるのけ、じろじろ見おって」
「鳥?」




そう、鳥だ。
鳥とはいっても、リアル鳥というよりはやっぱりどこか人外です感が強い。異形頭がかっこよく見えるとかあるけどあんな感じか。
カワセミとかクジャクみたいな青い羽根と白い足。この場合足っていうのは鳥類の足な。
羽根とは別に腕もあるけどこっちも綺麗な青だ、ちなみに白いロングドレスを着てるので着ぐるみっぽいと言われればそれもある。




「いや、あの、人じゃないけど二足歩行で人語話せる種族って初めてで」
「人語は複雑怪奇だけ、使うのは難しいものよけ」




キョッキョッキョとアリアさんは笑う。ワライカワセミってこんな声してなかったか。




「わらわは大分類は鳥でも種族名となるとローレライになるけ」
「ローレライ…?」
「船乗りがその歌声に魅了されて船が難破する、って話。ウタキの世界にはない?」
「ある」




有名コーヒーチェーンのマークもそれじゃなかったか。ローレライじゃないけど、あれだ、セイレーン。たしかにセイレーンって半鳥人とか人魚とかそんなんだった気がする。
というとアリアさんはガチの怪異に相当するわけか。




「パキラも話せるけ、あいつらの種族も賢いから話が尽きないけ で?ウタキ、お前勇者ってことはそのためにエレーナにつれてこられたんだけ?」
「いや俺はなにも知らないんですけど」
「あのね、勇者として戦うならアリアさんの加護と祈りがいるわ。装備も大切だけど、こういう魔法的なことは魔導士より魔術と共生してる非人間族のほうが秀でてるの」
「まあ占い師くらいだとおもってくれれば相違ないけ、難しく考えんことだけ」




キョッキョッキョ、とアリアさんは笑った。よく笑う人、いや鳥?だ。




「まあ、加護の前に雑談でもしようけ。エレーナの手土産も気になるけ」
「ああ、そう、これマロニエさんから」
「男にしとくのが惜しいくらい気が利くやつだけ」




エレーナがビンを渡す。ちゃぷん、と中の液体が揺れた。




「これは水晶水といって、天然の、かつ魔力を持たない水晶を液体にしたものけ。これがあると面白いことができるけ、二人に見せてやるけ」




まあすぐ帰るのもつまらないから茶でも淹れるけ、とアリアさんはニッコリ笑った。
ローレライ、鳥、たしかに声っぽくない音を発するわけだ。だってこのひ…ローレライは本気を出せば人間を簡単に遭難させる力があるわけで。つまりは俺たちと話すのにわざわざ「魅了しないように」気を使ってくれているわけだ。


こんな、こんなどうしようもねえ種族の壁超えないと魔王ってのは倒せないのかよ?




「キョキョ、眉間にしわがよってるけ、ブッサイクな面しよって」




相手に敵意はないのに、この余裕そうな表情が物語っている。
彼らにとって、人間族は本来脅威にすらなりえないって。

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