異世界転生してハーレムルートなのにヤンデレしか選択肢がないんだが?

守村 肇

21 エレーナは無意識にウタキのHPを削るようです





「ま、困ったらいくらでもチカラになるわン!負けんじゃないわよン、ウタキ!」
「あ、ありがとうマロニエさん」




終始良い人には違いないんだけど、濃い。慣れない。存在感のある下腿三頭筋と腹筋の黒光りが目に優しくない。
ちなみにマロニエさんの口調こそ女性的なそれだけど、本人は自分を筋骨隆々な男性だと思ってるし恋愛対象も女性だけなんだそうだ。
動きも大股だったりと男性的だけど、作業は繊細だししゃべり方は女性っぽいので多分脳がズレに追いつかなくてエナジードレインされてる気になるんだと思う。まあ見た目と自認と表現なんて様々あるもんな。差別だな。よくねーな俺の考え方。




「それはそうとこれからアリアに会いにいくのよねン?」
「ええ、だって冒険するならアリアさんには会っておかないとまずいもの」
「それはまあそうねェ。ついでにコレ渡してくれないかしらン」
「まかせて。これなあに?」
「アリアに渡したらわかるわン。説明はアリアから聞いたほうがいいわよン」




マロニエさんがエレーナに渡したのはシャンプーボトルくらいのサイズの青いビンだった。









「それで、アリアさんってのはどんな人なんだ?」
「人じゃないわよ」
「え?」
「人じゃないわよ?アリアさん」




確かに人間じゃない生き物もいるとは言ってたけど、人外ファーストコンタクトならもう少し早めに言ってほしかった。ただでさえマロニエさんにエナドレされてるのにこれからまた人外と邂逅するの?俺のなけなしのヒットポイントをとことん削りたいらしいな?




「人はアリアさんを夜の主旋律、なんて呼ぶわね」
「夜の?なんで夜なんだよ?」
「アリアさんの役が夜だからよ」
「待ってたまにそうやって俺の知らない設定ぶちこんでこないでくれる?」




役ってなんだ。




「役持ちとか役付きなんていうわ。職業とは別で自然現象とかを司る係ってものがあるのよ」
「アリアさんは夜を司るってわけか」
「そゆこと」




言ってること半分もわかんねえんだけど。夜を司るってどゆこと神様じゃあるまいし。




「あそこよ、アリアさんのいるの」




路地の隙間に濃紺のテントが張られている。モノポールテント、サーカスのテントっていえば伝わるか。あんな形だ。サイズは、俺より低い。縦横幅は50センチくらい。小さすぎて逆に驚く。




「子供用みたいなサイズだな」
「まあ入ればそうも言ってられないわ、アリアさーん、いるー?」
「エレーナ?どうぞ入って」
「よかった、いるみたい。さ、行くわよ」


そういうとエレーナはカーテンの隙間に器用に入っていく。え?待てよ。テントの高さはエレーナより低かったのになんでこのテント微動だにしないんだ。それにさっき聞こえてきた声、男でも女でもなかった。いや、人外とは言われたけど、それにしたって高くも低くもない、籠っても透き通ってもない音がはたして声と呼べるのか?




「ウタキ、はやく」
「あ、ああ」




気味悪さを抱えたまま俺もテントの垂れ幕をめくった。

「異世界転生してハーレムルートなのにヤンデレしか選択肢がないんだが?」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く