異世界転生してハーレムルートなのにヤンデレしか選択肢がないんだが?

守村 肇

19 花言葉は健康と贅沢





あとで聞いた話だが、マロニエは木の種類だった。和名はなんていうかわかんないが、さすが女子というかエレーナが花言葉的のものを教えてくれた。健康、贅沢。この二つだそうだ。今考えたらなんかいろいろ納得してしまう。




「マロニエさぁん、こんにちはー」
「あーら、かわいい声。エレーナじゃないのン」
「二週間ぶりですね」
「その後、相棒の調子はどうかしらン?もしかして調子悪くてメンテナンスに来たのン?」
「ううん、今日お願いしたいのは私じゃないの」




健康。
健康っていうのは、血色がいいことであり、平熱であり、元気があり、まあ要は元気そうっていうのが健康ってもんだと思う。
店は壁中に銃や剣がぶらさがり、あちこちに部品や鉄塊が積み上げてある。打ちっぱなしの床や壁はどことなく傷が多く無機質だ。そんな店の真ん中に頑丈そうな丸椅子と作業台があって、そこに店主は座っていた。


艶のある赤い長髪を綺麗に結い上げて、惜しげもなく褐色の肌を見せつける露出の多い恰好。仕事柄なのか引き締まった体をしており、ボリュームのある胸ときっちりくびれた腰のラインのバランスが完璧だった。
見るからに健康そうな店主は俺を見てニッコリと愛想のいい笑顔を向けて




「初めて見る顔ねン!アタシはマロニエ、仲良くしましょうねン」




かなり「いい声」でそう言った。




「んんーおんなじ男とは思えないくらい貧弱ねン、だめよぉやっぱアシュタルさんみたいにならないと、貧相な男はモテないわン」




話しかけられてるだけなのにすごい勢いでエネルギーを吸い取られてるような感じがする。圧がすごい。胸筋と上腕筋のボリュームがえぐい。ボディビルダーかってくらい光ってる褐色が目に優しくない。年齢不詳なのも相まって余計につらい。パッと見は30代くらいなのに物腰や落ち着きはらった様子は老紳士の
それだ。




「そういえばあんたの名前を聞いてないわねン、なんていうのン?」
「あ、お、ウタキっていいます」
「ウタキ!ん~いい名前だわン!ご両親に感謝しなさいねン!」
「うす」




だめだ、口開いたら死ぬ。




「今日はあんたの武器を見繕いに来たってとこねン?そんな貧相じゃ剣はおすすめしないわン」
「ウタキでも使えそうなのってなにかしら?」
「そうねぇ、テンプレ通りなら銃にするけどエレーナがパーティにいるんじゃ必要ないわねン…」




なんでエレーナ平気なんだろうって心底不思議だ。エナジードレインされてます!ってこんなに感じることもあまりないだろう。




「弓はセンスが必要だし、アックスも厳しそうねン。あんたよくその貧弱さで武器屋来たわねン…」
「返す言葉もございません…」
「ど素人に剣はあぶないからとりあえずストリングショットとメイスを試して見ましょうかン」




はい、と二種類の武器を手渡される。
さて、俺は店を出るまで生きていられるんだろうか。



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