異世界転生してハーレムルートなのにヤンデレしか選択肢がないんだが?

守村 肇

18 中性、高貴、神聖または欲求不満かナルシスト





「まずマロニエさんのところがいいわね、鍛冶屋なんだけど金属系の武器ならなんでも作れるのよ」
「この世界での武器の主流ってなんなんだ?」
「多くは剣か銃だけど、弓や斧もあるし暗器に秀でてる人もいるわ」




某一狩りを想像したら大体その通りなんだろうな。
周りを見渡してみても、見えるようなところに武器をぶら下げてるやつはいない。エレーナもふともものホルスターに銃仕込んでたし見えないようにするもんなのかもしれない。
あるいは町の中だから、ってのもあるか。まああの女騎士さんの持ってた身の丈ほどのでかい剣は別だけど。




「あー、とこれはかなり珍しいけど」
「ん?」
「素手で切ったり貫いたりって武術もあるし、異能力者もいることはいるわ」
「チェンジで」
「ないわよそんな制度」




そんな話聞いてない。クリスタルをめぐるあの世界みたいなステージがあるの?俺はピエロが神になるって展開で大分トラウマもらった覚えがある。
あるいは文字通り鍵をめぐるあれか?心を失くすとかいうアレか?ちなみに俺が一番嫌いなのは歩くたびにいろいろ忘れてくあの気味の悪い城。




「エイベル公国には死者を再生する力もあるって聞くわ」
「夢みてぇなチカラだな 悲劇しか生まなそうだけど」
「天使の卵、ってものがあるらしいの。詳しくは知らないけど」
「おいそれ好きな女がバケモノになって甦るタイプじゃねえのか」




メタとパロディとネタバレをつめこんだみたいなネーミングだ。どんだけセンスねえんだ。わかる人には即効わかるやつだしこんなクソみたいなメタでいいと思ってんのか思ってんだろうな!
天使なんてほど綺麗じゃない。羽の生えた女が赤い空を埋め尽くすのはなかなか狂気じみてるし、俺はあのゲームはできれば人にはおすすめしない。いや面白いけど万人受けはしないから。


大通りに出ると途端に人の数が増える。忘れてたけどここは王都だ、人が多いのは当然だよな。
食べ物屋の立ち並ぶエリアなのか、懐かしいような不思議なような、腹のへるにおいがする。なんの肉かは相変わらずわかんねえけど、店先でじゅわっと油が跳ねる音が食欲をそそるのはどの世界でも同じらしい。




「買い物終わったら飯だな」
「そうね、いいにおい。私もおなかすいちゃったわ」




活気のある道を進んでいくと、台所用品や服、薬なんかを扱う店が増えてきた。




「あ、あそこよ、あの紫の看板」




エレーナが指さした先には確かに紫の看板があった。どうやらあれが「マロニエさん」の店らしい。
看板にはイタリックに近いフォントで「愛を込めた攻撃力 マロニエの店」と書かれていた。毒々しい紫に。でかいハートマークと一緒に。ショッキングピンクのイタリック体が。




「チェンジで」
「気持ちはわかるけど諦めてちょうだい」

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