別にこれはいつも通りで

松葉 楓

1年生 秋 第2話

昼休み。
私は食堂でご飯を買った。そして隣ではお弁当。
まあいつも通りだ。

「今日は、ハンバーグに鶏肉…なんか肉多い…?」

「はは、でも運動した後だしちょうど良かったかも」

と言い、満面の笑みでハンバーグをひと口食べ始めた。

「まあ、そうかもしれないね。
…そういえば、体育の時よく5階の教室から私のこと分かったね」

「ああ。いや、だって高い方が見やすいと思うけど」

「うーん、そうなのかな…まあ確かに…?」

「それに、どこの席か知ってるし」

「まあ、そうか」

「それに、なんか視線を感じた」

「…えっ!そっ、そう…?」

「ような気がしただけだけど…って、いやうそうそ、冗談」

「…まあ、走ってる時に真顔になってたのが面白くて、つい」

「えっ、面白い?…おい、真剣に走っていたと言うのになんて奴だ。あと真顔じゃない!」

顔をむすっとさせてから、それについってなんだとかなんとかぶつぶつ言っている。
やっぱり、こうして話してる時はいろいろ表情が変わる。まあ、それも面白いんだけどこればかりは絶対言わない。

「ふふっ」

「なんだよ、怖い。いきなり笑うなよ」

「別に、いきなりじゃないしー」

「はあ…もう。まったく仕方がないっ、なっ!」

「ああ!」

私のおかずを取られた…。油断した。
食べたかった、豚の角煮。
まあ、一切れは食べたけども。

「って言うか、それも肉じゃん!」

「いいの、いいの」

「良くないっ、しっ!」

「あっ、おい!」

よし、お弁当の鶏肉で取り返してやった。

「ふっふっふっ…」

今度は凄い悔しそうな顔になった。
…あ、これは。

「と、鶏肉!美味しいね!」

「もちろん、うまいに決まってるでしょ」

これは豚の角煮より美味しいかもしれない。
いや、それは無いな。

「っていうか豚の角煮もうまかった」

「もちろん、人気ですし」

「まっ、鶏肉の方がうまいけどね」

確かに美味しかった…けど、認めたくない。

「この鶏肉って誰が作ったの?」

「えっ。あー、うーんと…まあ自分で作ったよ」

「へえ」

「へえ、ってなんだ」

「へえはへえだよ」

「なんだそりゃ」

そういえば、料理得意だった気がする。
確か中学の時、調理実習で活躍してたな。

「良かったら、今度料理教えて」

「えっ」

「えっ?あっ…良かったらで良いからね」

「…まあ、気が向いたら。そのうち。」

「じゃあ、メニューはポークソテーで」

「……ポークソテー?」

「うん」

「あー、ポークソテー……まあ、考えとく」

「これは腕がなるね」

「それ、お前が言ってどうする」

「あ、確かに。まあ、いいじゃない」

「…はあ」



私はじゃあ、次体育だからそろそろ戻るねと言い食器を片付けて教室へと戻った。
ポークソテーでって言ったら、最初は口をぽかんと開けてまさにえって顔をしていたけど、最後に見た顔は少し微笑んでいた。
…ような気がした。

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