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開拓惑星の孤独

舞夢宜人

第39話 開拓惑星の維新

 開拓地No.48-88-0001は、熊本一郎の入植から始まった開拓地である。南側に流れる河は400km以上上流まで川幅が10km以上ある大河で、いまだに水源地が確認されていない。この河の河原で砂鉄などの形で鉱物資源が採掘できたため、初期の開発では有望視された開発地の一つである。
 ただ不幸だったのは、入植歴10年以降たびたび台風などによる水害に襲われて、入植歴20年までには太陽炉とアルコール醸造プラントが失われたことである。エネルギー難と食糧難の中、街の代表が暴徒に襲われ、残っていた施設も略奪で破壊された。近代的な工業プラントが使えなくなり、行政も破綻した状態で、産業革命以前の人力と家畜利用での食糧生産を余儀なくされたのである。食糧難と行政の混乱を嫌がって難民化した人が小型船で近隣の開拓地に移動した。移動した先で元からいた住民とトラブルを起こして暴徒化して施設を破壊した。難民によるトラブルは、伝染病のように飛び火して、近隣の開拓地でも似たようなことが繰り返されていったようである。大和連合に飛び火しなかったのは、距離が離れすぎていて簡易な小型船を利用する難民では、ほとんどたどり着けなかったというだけである。大量の難民ほど既存の社会を破壊するものはない。産業革命以前の状態で安定するのに数十年がかかったのである。
 入植歴100年頃から機関付きの小型船で遠洋漁業を始めた博多市や琉球市からの遭難者が流れ着くことが多くなったようである。その中の何人かが、大陸東岸の街に漁獲した魚を売るなどして補給を受け自力で帰港して町に報告した情報が、博多市と琉球市に派遣した沼津長太郎が報告した内容だったようである。砂鉄などが簡単に得られるという点に注目したのが博多豊太朗たちで、駿河市から戸田丸級貨物船が提供されるようになると、大陸東岸の街と交易するようになった。砂鉄や鉄鉱石、その他鉱石と引き換えで食料品や雑貨などを提供した。交易の基盤整備として港の整備などをしているうちに、交易者達は街の有力者と結びついた。大和連合ができた時に、利益確保のために博多豊太朗が発起人になって大東亜連合を設立した。開拓地No.48-88-0001だった街は、この時に上海市に名称を変更した。結果として、港湾施設と燃料補給施設については大和連合の小規模港並みの設備になっているが、街自体は、農業は人力と家畜利用で、工業は家内制手工業~工場制手工業が分野によって混在するような状態になっている。例えると、母星における明治維新の頃の日本のような状態といえば近いだろう。
 大和連合と大東亜連合との交易が本格化してからは、急速に経済が発展してきている。この発展は、工場による画一の大量生産品が多かった大和連合に素朴な手工業による雑貨が好評だったのと、鉱物資源の輸出で、足りなかった食料品などの物資が十分に得られるようになったことが大きい。大東亜連合は、行政機構を改革し、学校教育を整備し、近代化への道を歩んでいる。最近は、既存の小型船でも十分使えるということで河川を水路として、川沿いに内陸に向かって開拓の手を進めているようである。


 上海市に到着した私達は、博多豊太朗夫妻と面会した。
「ようこそ。上海市の活気はご覧になりましたか?」
「人口増加が鈍化してきた駿河市とは違った活気がありますね。」
「こちらは土地だけは十分ありますし、大和連合という努力目標もある。これからが高度成長の黄金時代でしょう。」
「景気がいい話ですな。うまくいっている時こそ気を付けるべきでしょう。さらなる発展のためにやった改革が世間に受け入れられなかった時の反動は大きい。私たち夫婦の場合、おかげで長年の夢を実現できましたがね。」
「政治の世界は奥が深いですからな。でも、その実現した夢が新たな未来を拓くのです。黄金時代なんてものはいつまでも続くものではないですから、次の一手を用意しておく必要がある。」
「発展を継続するための可能性を広げるには、新たな市場が必要。」
「だからこそのマゼラン計画ですよ。」


 博多豊太朗は、初めて会談した時と同じ熱意を維持しているようだった。大東亜連合の発展が順調である証拠だろう。


「これだけ発展していると、新しい流行も起きているのではないですか?」
「今は失われた文化の復活などと言って、母星のクラシック文化が注目されているようです。」
 六花が世間話から交易交渉を持ち掛ける。
「そうなると、そろそろ放送を導入したほうがいいでしょう。放送設備一式を支援する代わりに家電の市場を開放していただけませんか?」
「大東亜連合として通信設備を購入して、連合が主導する形で、放送を導入したい。」
「ええ、もちろん何を放送するかまでは干渉しません。連合としての統治の効率を上げるためにも情報の伝達は大切です。間接的に商業が活性化できればいいんです。」


 大和連合の政府から依頼された交渉を順次こなしていく。政府間の支援や、関税や輸出入制限の交渉というのは、いつの時代も変わらないものである。後日、今回の提案内容に対する回答を持って、大東亜連合の交渉団が大和連合に赴くことになるだろう。


 西部船団は、大東亜連合との交渉の結果、南第一大陸を1周した後、上海市で補給を受けられることになった。これで物資にだいぶ余裕ができる。その見返りに長崎夫妻が大東亜連合側のオブザーバーとして船団に参加することとなった。





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