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開拓惑星の孤独

舞夢宜人

第34話 開拓惑星のラジオと水上飛行機

 私は、40代半ばになり、駿河市の市長に選出された。それとともに、大和列島と名付けられたこの弧状列島にある街の連合である大和連合の議長にも就任した。これまでの功績が評価されたというよりも、あれこれ手を出しすぎて、祀り上げられて責任を押し付けられたという面が大きい。実際、部下に仕事を取られて副市長時代より直接担当する仕事が減った一方で、責任だけは重くなっている。もっとも、私たち夫婦は、街が豊かになることを夢見て、やりたいことを賛同してくれる仲間とやってきただけだ。


 駿河市の人口は、30万人を超えた。焼津や小田原のような小規模な開拓地は、他の街の協力もあって、他に10ヶ所が開発が開始され、さらに10ヶ所が計画されている。開発が開始された開拓地には、かつて開拓地No.49-89-0001と言われていた名古屋の再開発が含まれている。大和連合全体で70万人ほどの人口になる。これまで開拓地がなかった弧状列島の内側……大陸側の海岸にも希少金属の鉱床の発見に伴って佐渡など3ヶ所開拓地が開発された。現在では、熱水鉱床が隆起した地層が大和列島の各地に豊富にあることが判明してきている。適切に開発すればしばらく鉱物資源に困ることはなさそうだ。


 大和連合の設立には、こういった開発の進展が大きくかかわっている。戸田丸級貨物船は既に40隻を超えた。さらなる大型の貨物船の建造も検討されるようになってきている。貨物船が、弧状列島の周辺を忙しく運行されるようになってきた。生活は豊かになり、新しい開拓地で才能を開花させる者も多くなった。少なくとも、大和連合はうまくいっている。


 最近の話題は、一つはラジオ放送の開始である。マイクロ波中継などを利用した大和連合全域をカバーするFM放送によるラジオ放送が始まった。現在、函館市、伊達市、駿河市、博多市、琉球市をそれぞれキー局にして5チャンネルの放送が行われている。駿河市で電子部品の製造に成功したことから、ラジオを輸出する目的で、放送ネットワークを構築した結果である。開始当初は、駿河市のみがキー局になっていたが、大和連合で問題視され、中心となっている街がそれぞれキー局になったのである。もっとも、資源と生産能力の問題で、テレビやIT機器が復活するのは、だいぶ先のことになりそうだ。
 ラジオ放送が始まると、ラジオドラマの影響で書籍の販売が増えたり、音楽番組の影響でレコードの販売が増えたりした。レコードの販売が増えると、各街を訪問して、集会場でコンサートを行うバンドや楽団も現れた。同じ集会場で、母星から持ってきたコンテンツや、新たに作られた実写映画や、アニメーションが上映されるようにもなってきている。


 もう一つは、水上飛行機による空路の開通である。軽金属が手に入りにくいので、木と炭素繊維による定員20名以下の小型機であるが、水上飛行機が開発され、各街を空路で結んだ。いずれは、空港が整備されることになるだろうが、運用されている機体数が少ないこともあって、水上飛行機となっている。コストがかかっても船よりも短時間で人の移動ができるようになったことも、大和連合ができた原動力の一つである。


 私は、執務室で、各地の開発や、社会保障の改善を求める陳情書の山を見ながら、六花に話しかけた。
「私達がやってきたことは正しかったのだろか?」
「どうしたの? あなたは立派に仕事をしてきたじゃない。」
「人が増え、街は大きくなり、社会は豊かになった。でも、経済環境は変わり、こうして陳情書の山に埋もれている。あんなに世界中を駆け巡って商売をしたいと夢見ていたのに、頭と胃を痛めてデスクワークの毎日、どこで間違ったのかねえ。」
「大和連合の主要都市には全部行ったし、大きな商談もまとめてきたじゃない。何が不足なの。私達は、デスクワークの毎日だけど、子供たちは大和連合の各地を商売で駆け巡っているじゃない。孫たちは、私たちの頃には、記録と物語の中にしかなかった職業に就くことも可能なぐらい豊かになった。睦月のところの一花は、ラジオのアナウンサーになりたいそうよ。そんな豊かさを維持して発展させていくのが、私たち世代の仕事よ。」
「……そうは言ってもね……」
「……一郎、あなた疲れているのね。次の休みに温泉にでも行きましょう。あなたがやってきたことが正しかったことは私が保証してあげる。満開の桜の木の下で、私と約束したことは覚えているでしょう。あなたは一番大事な約束を守った。これからも守ってくれる。私は幸せ。それでいいでしょう?」


 気合を入れろとばかりに、六花が私の背中をドンと力強く叩く。
 私が逃げ出さないように、捕獲して馬乗りになったうえで、親などから聞きかじった夢を自慢げに語る六花に、「六花に何ができるかわからないけれど、私と同じ夢を見て、ずっと一緒にいて。」と何度かお願いされて約束させられたことを思い出す。六花にとっては、保育所卒業時に桜の木の下でした約束が一番大事な約束だったようだ。親などから聞きかじった夢から、自分がやりたい夢を語るようになり、いつしか実際に世の中を動かして夢を実現するようになった。六花と過ごしてきた月日は、もう40年以上になる。六花にだけは頭が上がらない。六花が幸せなら苦労しがいがあると、窓の外に舞う桜の花びらを見て、仕事に戻った。





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